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これはいい作品だ〜。なんだろう、こう、ひたひたと忍び寄ってくる、そこはかとない、怖さ。すぐ後ろに、闇がわだかまっている。今にも、「ひと」を呑み込もうと。いや、飲み込まれるのは人なのか。世界はすでに、呑み込まれているのではないか。彼岸と此岸の境は、曖昧だが、明らかにある。恒川光太郎さんは、常人には見えぬその境目が、見えているのではないか。 恒川さんの描く「異界」は、はっきりとした姿を持ち、明らかに私たちの暮らす現実世界とは違うのに、紙一重の場所で存在を密やかに主張する。 いざ、真のホラーの世界へ・・・。 『雷の季節の終わりに』、大変素晴らしい作品でした!何と言っても、世界観がいい。ファンタジーとしても、非常にしっかりした世界が展開され、その上で、忍び寄る恐怖というホラー。確かに日本のどこかと(あるいはどこにでも)繋がっていそうな、「穏」という土地。冬と春の間にある「雷季」とそれに関する不思議な風習。文章の間から立ち上る、美しい光景。人に憑く「風わいわい」、闇番、鬼衆、呪い師、そして少年と少女の成長。 あ〜〜、どれをとっても、水無月・Rの心を掴んで離さないんですよ。まず「異界」(西洋風のファンタジーワールドではなく)でしょ、その異界が現実世界とつながっていること、逆方向で彼岸と繋がっていること(そのことはちっとも怖くない)、憑きものがいて、数年を経た大掛かりな復讐劇、そして、主人公の孤独。文章から浮かび上がってくる、美しくも恐ろしい光景と、雰囲気。たまりませんね〜、こういうのは。 『夜市』の時も、『秋の牢獄』の時も、この「侘び・寂び」のある、和製ホラーの世界を堪能しましたが、今回も非常に満足です。 現実世界と切り離され、平穏な日々の続く不思議な町、「穏」。そこに暮らす賢也は、数年前の「雷季」に姉を失った。その日以来、自分には「風わいわい」が憑いていることに気付いているが、周りにはそれを隠している。過去の記憶の曖昧な賢也は、実は下界から来た子供であった。眠れぬ夜、町のはずれにある墓町へ行き、闇番の大渡と知りあう。何度か大渡を訪ねるうちに、友達・穂高の兄・ナギヒサが、その友人・ヒナを殺したことを知る。その証拠を隠滅しようと墓町へ入った時、ナギヒサに襲われ、「風わいわい」の力を借りて撃退するが、穏から逃げ出さなくてはいけなくなる。追ってきた穂高と共に現実世界へ入り、そこで「風わいわい」の宿敵である元鬼衆・トバムネキと対決する。 サイドストーリーとして、トバムネキに誘拐され、いったんトバを殺し(トバは再生する)、穏に入って来る少女・茜の物語が挿入される。最初、その茜とその物語がどういう位置にいるのかがわからなくて、「???」だったのだけれど、物語が進むにつれ、茜が誰で、賢也との関係も分って来、そして道を外れた元鬼衆のトバとの戦いの後、本流と速やかに合流するその構成の上手さに息をのんだ。 少年、賢也と「風わいわい」の信頼関係も良い。トバは鎖で縛りつけなければならなかったけれど、賢也とは信頼関係で結びついていた。賢也の成長を見守る段階では全く姿を現さず、本当の危機にだけ現れ、導き、そして賢也の体を借りて、トバへの復讐を果たす。そして、賢也から離れ、遙か天空へと飛び去る。切れ味のいい物語として仕上がっていると思う。 最後に、賢也は「穏」と絶縁される。仕方なかったとはいえ、ナギヒサを殺した罪を見逃してもらうには、それしかないのか。それとも、「風わいわい」について知りすぎてしかったからか。狂った鬼衆・トバを永遠の再生の苦しみに落としたことは、評価されるのだろうか。 もう、姉とも穂高とも会えない。穂高は下界にまた会いに来ると言っているけれど。 〜〜かつて私を巻き込んだ大きな波は、ついに私を岸辺に打ち上げ、私の少年時代を攫うと、果てしない大洋へと引いていった。 新しい世界の情報が、雪崩のように私の中に押し寄せ、否応なしに私をまた別の何者かへと変質させていく。 〜中略〜遠き日の姉の言葉の通りに、やがては新しい季節が訪れる。〜〜 (本文より引用) 少年は、成長し、孤独を知り、そして、変わっていく。幽かな寂しさを胸に抱きながら。それでも、季節はうつろう。時は過ぎ去ってゆく。雷の季節は、二度と来ないけれど。 あ〜、美しいなぁ。寂寞とした、美しさだ〜。感傷的になっちゃうよなぁ・・・。 ああ、いい物語の世界を彷徨った。そして、戻ってこれて良かった。物語は素晴らしいけれど、やはり現実世界がいい。 現実世界なら、いろんな物語の世界へ飛べるからね(^^)v。 (2008.02.21 読了) 雷の季節の終わりに
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
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雷の季節の終わりに 〔恒川光太郎〕
雷の季節の終わりに ...続きを見る |
まったり読書日記 2008/02/22 23:10 |
雷の季節の終わりに 恒川光太郎
装丁は片岡忠彦。書き下ろし。 異世界の町、穏に住む少年・賢也は姉の失踪後、物の怪「風わいわい」に取り憑かれます。ある秘密を知り町から逃れた先には…。 穏の慣習、雷季、風わいわい、墓町、闇番、鬼衆など魅力的な設定。穂高& ...続きを見る |
粋な提案 2008/02/23 03:49 |
「雷の季節の終わりに」 恒川光太郎
雷の季節の終わりにposted with 簡単リンクくん at 2007. 1.18恒川 光太郎著角川書店 (2006.10)通常24時間以内に発送します。オンライン書店ビーケーワンで詳細を見る ...続きを見る |
今日何読んだ?どうだった?? 2008/02/23 09:08 |
「雷の季節の終わりに」 恒川光太郎
雷の季節の終わりに 恒川 光太郎 角川書店 (2006/11) ...続きを見る |
コンパス・ローズ compass ro... 2008/02/24 17:28 |
雷の季節の終わりに⇔恒川光太郎
無常の季節 ...続きを見る |
らぶほん−本に埋もれて 2008/02/25 16:42 |
「雷の季節の終わりに」恒川光太郎
雷の季節の終わりに ...続きを見る |
本のある生活 2008/02/25 22:37 |
雷の季節の終わりに
これで現在出版されている恒川光太郎の本を全て読んでしまった。『秋の牢獄』、『夜市』、そして本書の順である。著者はデビューして間もないため、まだ三冊しか出版していないのだから仕方がない。 ただ長編は本作のみで、あとは中編集である。どちらかと言えば、著者は中 ...続きを見る |
ケントのたそがれ劇場 2008/05/17 14:12 |
雷の季節の終わりに 恒川光太郎
雷の季節の終わりに ■やぎっちょ読書感想文 ...続きを見る |
"やぎっちょ"のベストブックde幸せ読書... 2008/06/27 00:15 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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恒川さんにはきっと見えているんでしょうね。彼岸と此岸の境目が。本当にそう思えちゃいます。 |
エビノート 2008/02/22 23:07 |
侘び寂びのある異界と、ミステリータッチやいろいろな分野が混じり合っていて、魅力的でしたね。 |
藍色 2008/02/23 03:49 |
雰囲気のある作品を描かれますよね〜まだデビューして間もないとは思えないほどに。今後の活躍も期待できそうです!あとこの世界を映像にしたものも見てみたい気がしますが、変にうすっぺらくなるのもイヤだし…いろいろ葛藤します。 |
まみみ 2008/02/23 09:13 |
>エビノートさん、ありがとうございます。 |
水無月・R 2008/02/23 22:42 |
こんばんは、水無月・Rさん! |
雪芽 2008/02/24 17:35 |
雪芽さん、ありがとうございます。 |
水無月・R 2008/02/24 23:03 |
こんにちは。 |
らぶほん 2008/02/25 16:45 |
恒川さんの世界すごいですよね。知らないはずなのになぜか知っている・・そんな不思議に懐かしいというか、自分の中に生きている世界のようなきがしてしまいます。 |
june 2008/02/25 21:37 |
すみません!TBし直しましたので、間違えたのは消しちゃってください。お手数をおかけして、本当に申し訳ありませんでした<m(__)m> |
june 2008/02/25 22:38 |
>らぶほんさん、ありがとうございます。 |
水無月・R 2008/02/25 23:33 |
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