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全編にわたる、緊張感。絡み合うレース展開を駆け抜ける、自転車。 ロードレース・チームの中における、「エース」と「アシスト」の複雑な関係。 過去のレース中の事故の、辛辣な真相とは。そして再び起こった、死亡事故。 〜〜「勝利は、ひとりだけのものじゃないんだ」 〜〜 ぼくの勝利は、ぼくだけのものではない。〜〜 (本文より引用) アンソロジー『Story Seller』に入ってる「プロトンの中の孤独」 を読んだ時に、絶対読みたい!と思っていた、近藤史恵さんの『サクリファイス』です。 レースの駆け引き、チーム内の思惑、各人の持つ感情や状況や過去。・・・ロードレースなんて言うとスポ根モノを想像するけど、全くそんなことなく。 どちらかと言うと、サスペンスおよびミステリーな展開で、ぐいぐいと引き込まれました。 「プロトンの中の孤独」でチーム・オッジのエースへの階段をのぼりはじめていた石尾が、今作では不動のエースとなり、チームに君臨している。主人公だった赤城も、石尾の最も信頼するアシストになっている。 今作の主人公・白石誓(チカ)は、オッジの2年目選手。オリンピックも狙えると言われた陸上選手だったが、トップを取るということに違和感を感じており、ある時TVで見た自転車ロードレースで「エース」「アシスト」の存在を知り、転向する。 チカと同期の伊庭は、かなりの実力の持ち主で、プライドも高いし計算高い。 所属した「チーム・オッジ」のエース・石尾には「エースを狙う後続を潰している」という噂が。それをチカに告げてくる男もチームメイトであり、チーム内には複雑な感情が渦巻いている。 エースを勝利させるために、レースの集団(プロトン)を引っ張り、かき乱し、そして最後に道を譲り渡す、アシスト。チカは、自分の本分はそこにある、一番しっくりする位置だという。 3年前に石尾と事故を起こした選手は下半身不随になり、ウィルチェア(車椅子)ラグビーの選手となっていた。彼はチカの元彼女、香乃を通じて、チカに警告してくる。 そのレースで、石尾は事故死する。 そして、赤城に聞かされたの事故の真実、エースの矜持と重圧、責任、・・・全ての真相。 嫉妬、羨望、陰謀と策略、廻らされる因縁と感情の糸。否応なしに巻き込まれるチカ。エースの座を守る、誇り高い石尾。アシストの献身も犠牲も乗り越えて、ロードレースという競技の中に厳然と存在する神聖な何かを守るために戦う、エース。 ツール・ド・フランスぐらいは知ってても、ほとんど知識がない、自転車ロードレースの世界。エースの勝利に尽くすアシストの心理など、理解できない。同じ競技に出て頂点を目指さないなんて、チームメイトとはいえ、他人に勝ちを譲るなんて、どうしてなのだ。実は、この物語を読了した今でも、そう思わなくもないのだ。 でも逆に、赤城やチカの「一番にゴールするより、自分より高いレベルにあるものがゴールに飛び込んでゆくのを、支え見送る喜び」「そのことに自由を感じる気持ち」も分かるような気がする。 そして「スピードの風を感じながら走ることの美しさや力強さ」と「ひとの醜い気持ちが引き起こした見るに堪えない事件の結末」の対比は、現実感があり怖ろしかった。 石尾の死の真相。石尾のエースとしてのプライドや覚悟、そして後続への真摯な強い思い。それを支えた赤城の引退。 全てを知った後も、海外へ移籍してアシストの役を全うするチカ。伊庭はオッズの新エースとなり。彼らが背負うものは、チームエースの勝利だけではない。今までも、これからも、自転車ロードレースに力を尽くすものとして。 サクリファイス(=犠牲)の上に成り立つ、走ることへの真摯な思い。 なんだか感想が難しいです。 石尾が起こした3年前の事故は、やりすぎな気がする。 そして今回の事件だって。他に方法はなかったのか。苦い思いでいっぱいになりながら、読み終えた。 もちろん、チカや伊庭が活躍する未来が描かれたことは、救いでしたが。 ただ、一つ言えるのは、素晴らしい物語であった、ということです。 2重3重に仕組まれる感情対立や、ロードレースの特異点である「エース」と「アシスト」の関係の複雑さ。技術と心理を駆使するレース展開。 全てを踏み越えて頂点に立つ者の、高潔な覚悟。 全編にわたる緊張感が、とても心地よかった。 (2008.09.04 読了) |
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| タイトル (本文) | ブログ名/日時 |
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サクリファイス 近藤史恵
カバー写真はPanoramic Images。装幀は新潮社装幀室。書き下ろし。 語り手の白石誓(チカ)は、陸上の中距離走から自転車ロードレースに転向。 &... ...続きを見る |
粋な提案 2008/09/06 03:45 |
サクリファイス(近藤史恵)
面白かった! さすがに「ツール・ド・フランス」って名前くらいは知ってるけど、「自転車ロードレースって競輪とは違うんだねぇ・・・。」というド素人の私。そんな私でも、競技内容がよく分かるように描いてあったし、レースの模様や様々な思惑が絡んだ選手達が織り成す人間模様に、ドキドキハラハラしながら読みました。 ...続きを見る |
Bookworm 2008/09/06 16:21 |
サクリファイス 近藤史恵 新潮社
非常によく練りこまれた、緊迫感に満ちた物語でした。 「サクリファイス」とは「犠牲」ということ。自転車競技では エースを勝たせるために、チーム全体でそれをサポートする。 つまり、一つの勝利のためには、常に捨て駒が存在するということ。 もちろん、スポーツであり、勝負の世界である限り、そこには 人の感情が渦を巻く。この物語は、そんな自転車の世界に生きていく 人間の心の中を緻密に追いかけてあります。 自転車という競技の駆け引きと、そんな人間のドラマが見事に絡み合う。 いや〜・・自転... ...続きを見る |
おいしい本箱Diary 2008/09/06 20:39 |
「サクリファイス」 近藤 史恵
サクリファイス 近藤 史恵 新潮社 (2007/08) 単行本: 245ページ ...続きを見る |
コンパス・ローズ compass ro... 2008/09/07 19:24 |
サクリファイス 〔近藤 史恵〕
サクリファイス近藤 史恵新潮社 2007-08売り上げランキング : 1480おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ ただ、あの人を勝たせるために走る。それが、僕のすべてだ。 ...続きを見る |
まったり読書日記 2008/09/08 21:17 |
「サクリファイス」 近藤史恵
サクリファイス近藤 史恵 新潮社 2007-08売り上げランキング : 383Amazonで詳しく見る by G-Tools 内容説明 競技中に起きた悲劇は、単なる事故のはずだった……。二転三転する「真相」と共に駆け抜ける物語の結末とは。自転車ロードレースの世界を舞台に描く、青春ミステリの逸品。 ...続きを見る |
今日何読んだ?どうだった?? 2008/09/26 16:39 |
| 内 容 | ニックネーム/日時 |
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アシストに対するエースの気持ち、エースをめぐるチーム内の葛藤が良く描かれていましたね。 |
藍色 2008/09/06 03:45 |
こんにちは。 |
すずな 2008/09/06 16:24 |
こんばんは♪ |
ERI 2008/09/06 20:50 |
こんばんは〜、水無月・Rさん。 |
雪芽 2008/09/07 19:32 |
>藍色さん。 |
水無月・R 2008/09/07 22:09 |
>ERIさん。 |
水無月・R 2008/09/07 22:13 |
自分の勝ちに執着しない勝負の世界があること、この作品で初めて知りました。奥深い世界ですよね。できれば実際にレースの様子を見て見たいんですけど、いまだ実現せずです。 |
エビノート 2008/09/08 21:27 |
エビノートさん、こんばんは(^^)。 |
水無月・R 2008/09/08 22:35 |
こんにちは^^ |
麻巳美(まみみ) 2008/09/26 16:41 |
麻巳美さん、こんばんは(^^)。 |
水無月・R 2008/09/26 22:35 |
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