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zoom RSS 『倒立する塔の殺人』/皆川博子 ○

<<   作成日時 : 2009/01/09 22:49   >>

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前から、気になってたんですよね〜、この『倒立する塔の殺人』。戦時中のミッションスクールで回し書きされ始めた「小説」。チャペルで死亡した女生徒。物語と現実は絡み合ってゆく・・・・そんな前評判をどこかで聞いていたので。
戦時中及び直後の閉塞感や、女学校という特異な空間の人間関係など、妙におどろおどろしいというか、鬼気迫るものがありました。
著者皆川博子さんですが、1930年生まれとのこと。つまり、この小説の時代をリアルタイムで生きた、ということですね。

頻繁に空襲されるようになった、東京。学徒勤労動員で、工場へ通う都立女子と私立のミッションスクールの女学生たち。
空襲で、家族を失った都立女子の生徒・阿部欣子。彼女に一緒に住んで欲しいと申し出る級友・三輪小枝。小枝はある日、とあるノートを差し出す。表紙に「倒立する塔の殺人」と書かれ、数人が書き継いできた物語のノート。
最初に書いたのは、ミッションスクールの設楽久仁子。彼女は自分がこの物語を書くに至った経緯を手記してから、小説の導入部を書き、ノートを憧れの上級生・上月葎子の寮の机に忍ばせる。
上月葎子は設楽久仁子を忌み嫌い、続きを書くこともなく放っておいたのだが、ある日同室の七尾杏子が不審な消息の絶ち方をしたため、それを怪しみ関連があるのではと経緯を手記し、小説の続きを書き、三輪小枝へ渡す。
その後、上月葎子は空襲にあったチャペルで焼死。三輪小枝は、それを怪しみ経緯を手記し、阿部欣子に「倒立する塔の殺人」を読んで欲しいと頼む。

う・・・。あらすじ書けない・・・。上に書いたあらすじ(前半部分のみ)ですら、実際とは順番が違う。しかもそこがトリックだったりするのだ。
書き手が違う。小説と手記がある。小説の中に実はヒントがある。書き手は実は思い描いていた者とは違う。出てくる人間の立場が実は違う・・・。と、あちこちに散りばめられたトリックに引っかかって、思いっきり、騙されました。
まあ、謎解きがこの物語の主眼ではないと思うので、それでいいのですが。

手記の部分を読むと、あの時代の女学生は「同性に憧れる」気持ちがとても強いのだなぁ・・・と感じましたね。美しい思いである部分もあるのですが、逆に嫉妬にまみれて醜くかったり、慕ってくる相手を見下して無下に扱ったりして女同士だからこそ怖ろしい部分も多いなぁと、ちょっと怖かったです。

小説部分は、「倒立する鏡」のある部屋に閉じ込められ、発狂するかどうかがちょっと・・・分からなかったですね。たぶん私だったら、「なんじゃこりゃ?」とまじまじと観察、理屈は分からなくても「そういうものかな〜何ぞトリックがあるんだろう」で終わり、発狂はしないと思うんですよね。・・・神経太すぎるんですかね(笑)。あの時代の女学生は、繊細だったということでしょうか。

次第に、手記の部分は小説の内容に言及してゆく。そして、小枝にノートを渡された設楽久仁子は、自分の考える真実を記す。
設楽久仁子がした謎解きは、正しかったのか。「将来小説家になりたい」と言っていた、設楽久仁子。だが、前言を翻して「小説家になるのはやめた」と告げてきた。謎解きが正しかった結果、とある人間を死に追い込んだ、ということなのか。

多くの事実確認がないまま、物語は終わりを迎える。実際に設楽久仁子が書いたのは、どこまでなのか。図書室の司書の独白部分は、司書自身が書いたものなのか?司書は、特別な茉莉花茶を飲んだのか。司書は、一連の事件とどれだけの係わりがあったのか。
全ては闇の中である。

あ〜、なんか、感想が散漫。言葉で表すのが難しいんですよね〜。水無月・Rには無理・・・ですな(笑)。
隠微な人間関係や、小説内の背徳的な関係、そして後に告白される過去の事件など、複雑に絡み合って物語を構成してて。
好きな人はハマりそうですが、何か私の好みと1本ズレてました。そのズレを指摘できないのが、歯がゆいなぁ。

(2009.01.08 読了)

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コメント(2件)

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おお!私も読みたい〜と思って読めずにいた作品なので、水無月Rさんの書評が嬉しいです。(いつも頼りにしています♪) でも苦戦しているみたいですね、私なんぞが読んだら余計に書評なんてかけないかも・・・と思いつつ、図書館に予約入れてきます=3(笑)
空蝉
2009/01/14 12:23
空蝉さん、ありがとうございます。
ハイ〜、苦戦しました〜
でも、物語の雰囲気は良かったですよ(^^)。
いえいえ、もうコチラこそ空蝉さんの記事には、いつも教養を与えて頂いてます♪

bk1のおススメ書評選出、おめでとうございます!
水無月・R
2009/01/14 22:13

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