蒼のほとりで書に溺れ。

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zoom RSS 『幽談』/京極夏彦 ○

<<   作成日時 : 2009/02/05 23:27   >>

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京極夏彦さんですよ。
実は、【蒼のほとりで書に溺れ。】の記念すべき第1番目の記事が、京極さんの『どすこい(仮)』だったのですが、その後も『巷説百物語』シリーズでなどで、魅了されましたねぇ・・・。
で、本作『幽談』は、如何に。
――― うわ、投げっぱなしだよ。
怖いとか怖ろしいとか、そんなことの前に。このオチの無さは、この居心地の悪さは、いったい・・・。

8篇の、ヘンな物語が、語られている。・・・あえて言おう、ヘンなのだ。
語られっぱなし。オチがない。読者ほっぽらかしで、唐突に物語は終わる。
怖い・・ような気もするし、全然怖いどころか、「いい加減にしろ!」と怒鳴りたくなるほど読み手無視の事の流れだけを追った作文調な気もするし・・・。
捉え処がない。その危うさが、奇妙な魅力になって、ついつい読みふけってしまった。

「手首を拾う」
7年前、とある旅館の庭で見つけたもの。神経症の妻と離別し、再びそこを訪れ、手首を、拾う。
「ともだち」
30年前に住んでいた街を訪れる。死んだはずの同級生が佇む。自分は、生きているのだろうか。
「下の人」
ベッドの下にいる、異様に顔の大きい人。泣くのだ、その「人」が。
「成人」
怪談話。共通するキィワード。人に成らなかったものは・・・。
「逃げよう」
小学校の時、下校時についてきた「厭なもの」。ブレた記憶。あれは、誰?・・・がむがむがむ・・・。
「十万年」
他人が見ているもの。自分が視えているもの。
「知らないこと」
隣の奇人を観察する兄。自分を真っ当だと思っていた自分は・・・?ラストですべてがひっくり返る。
「こわいもの」
「本当に怖いもの」を求める人物が、手に入れたものは?

とりあえず、どの物語もホントに、投げっぱなしなのである。いきなり終わってしまい、度肝を抜かれる。
けれど、下手にオチをつけるより、変な理屈をつけるより、よっぽど物語として、正しく成立してるように感じる。
「世の中、斯様に割り切れず、居心地の悪い事態は、いくらでも存在する」、という意味でも。

一応いくつかツッコミ処があるので、突っ込ませて頂こう。
「下の人」は、とりあえず何とかしようよ・・・と。その柔らかく潰れる大きな顔の持ち主が、ベッドの下で泣くって・・・・、イヤだろ、普通。幻影と思って無視する(存在そのものをね)とかさ、じゃなきゃ引っ張りだしちゃうとか。便利屋呼んだ時に、ひっぺがしちゃえばよかったんだよ。・・・て言うか、どうして平気なの。だって、夜中に泣くんだよ、ぐんにゃりと歪んで潰れた顔の人が、ベッドの下で、しくしくと。冷静に考えておかしいし、多少冷静さを失ってたとしても、対処すべきだろう。ほっとくのは・・・、相当マズイ気がするんですが。
「手首を拾う」は、・・・そ、その手首、どうする気ですか!と言いたいね。拾って、持って帰るわけ?微妙に生きているような、手首を?怖いというより、シュール過ぎる・・・。
「こわいもの」って、結局何だったんでしょうねぇ・・・。ふたを開けた、その中にあったものは。妄想が走っちゃうじゃないですか。
1.なにも入ってなかった。
2.とてつもなく怖い物が入っていた。
3.想像を絶する、しょ〜もない物が入っていた。
4.箱に自分が吸い取られてしまった。
5.エンドレスで続く、箱があった。
何があったかを寸止めで書かないのが、この短編集のやり方なのだろう。

読者のそこはかとない、不安感を煽るような。
自分は夢を見ているのか、他者との関係は正常に成立しているのか、何より、生きているのかどうか…。
この8篇の中で、生死の観念は全くもって曖昧である。自分が「生」として存在しているのか、「すでに死んでいる」のか。
何が正しくて、何が間違っているのか。何が自分の存在を証し立てしてくれるのか。
物語が途中でブチ切れているからこそ、終わった後で広がってゆく想像力の世界が、作者の目論見どおりなのでは。
薄暗がりに、何かが蠢いている。
怖くはない。だが、自分の存在感を危ぶむ。何かに獲り憑かれたような、読後感でした。

(2009.02.05 読了)
幽談
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幽books 著者:京極夏彦/ダ・ヴィンチ編集部出版社:メディアファクトリーサイズ:単行本ページ数:


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『幽談』 by 京極夏彦
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コメント(2件)

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トラバ、ありがとうございました(*^_^*)
そうですね、怖いもの・・・私は蓋をあけるまでがコワイモノである、時限爆弾みたいなものだと思います。きっと人って得体の知れないもの、理解の範疇を超えたものに対して恐怖を覚えるのでしょうね。
空蝉
2009/02/06 09:13
空蝉さん、ありがとうございます(^^)。
「何だか分からない・理解出来ない」だから・・・怖いんですねぇ、きっと・・・。
その中途半端感が、どうにも気になって気になって、取り憑かれるように勢いづいて読んでしまいました。
水無月・R
2009/02/06 23:15

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