蒼のほとりで書に溺れ。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『狐笛のかなた』/上橋菜穂子 ◎

<<   作成日時 : 2009/03/11 22:52   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 4

アニメにもなった「守り人シリーズ」で有名な、上橋菜穂子さん。
そのシリーズは結構大河ロマン化していて冊数が多いので、「読みたい本リスト」に入れるのをためらっている私なのですが、この『狐笛のかなた』は単独作品だから、気軽に手に取れました。
そして・・・とても美しい世界を堪能しました。予想以上です。日本古来の呪術を基盤に置いた世界観が、私の好みにぴったり。むさぼるように読みました。

〈聞き耳〉の能力のある少女・小夜。追われて怪我をしていた狐を助けたときに知り合った、屋敷に幽閉されている少年・小春丸。実はその狐・野火は、隣国の呪者の使い魔の〈霊狐〉であり、小夜自身も呪者の血を引く娘であった。
春名ノ国と湯来ノ国は隣国同士であり、統治者は血縁にあるというのに、長らく対立している。呪術による国の守護とその守護への攻撃を担う呪者は、カミガミの世界とこちらの世界の間にある「あわい」の生き物である〈霊狐〉を使役する。無理やりに従わせる〈霊狐〉の力は強大である半面、それを使役するために呪者は寿命を削っている。
かつて春名ノ国には、女性呪者がいたのだが殺され、渡来の呪者が渡来の技を使って国を守っている。その渡来の呪者・大朗とその妹・鈴が女性呪者の娘の小夜を見出す。一度は大朗達のもとを離れた小夜だったが、春名ノ国の継承者認定儀式での隣国・湯来ノ国の領主および呪者・久那の陰謀を阻止するため、久那の使い魔である野火(久那に反逆)と共に儀式の場へ赴く。
無事、後継ぎは承認される。儀式の場の混乱の責任を、春名ノ国領主は、ある方法でとると発言しようとする。
「あわい」で久那に斬り捨てられた野火を救うため、小夜は久那を倒し、狐笛を吹いて、野火を助けようとする・・・。

和の世界です。自然描写が、とても美しい。小夜の成長、小春丸の抑圧から脱出したいという想い、主人に命を握られる野火のそれでも逆らうほど一途な小夜への気持ち、春名・湯来の両国の対立の根深さとその根底にある人間の僻む気持ち・・・、それぞれに辛く重たいものがありながら、やや明るい未来が見えてくる終わり方が、良かったですね。

呪者の暗く醜い部分も描かれていて、そういったところには、とても嫌な気持ちをもっていたのですが、国に必要とされ、「呪者として生きる」ためには、我が身を削り、子孫を残すこともできず、滅びゆくしかないというのも、何だかしんみりしてしまいました。先祖より受け継がれる技、それを行使すれば行使した相手には憎まれ自分の命を削り、子を残すこともできぬまま、一族が滅びゆく。かといって、持てる力を使わずにいることも叶わない。冷酷な呪者・久那にもそういった苦悩があったのかも知れません。

最後の章で、小夜が「人」ではなく〈霊狐〉の側になってしまったことを、小春丸は「むごいことだ」と言いますが、私は逆に呪者である人ではなく、「あわい」に生きる霊狐として、野火と生きてゆける小夜に、安心しました。
白と赤茶の狐とその子狐が、心地よげに駆けて行く、その桜の園の美しさ。
その桜の園の水源の独占をやめ、春名・湯来に行きわたらせた「人」の許しと寛容の心の美しさ。
気持ちが洗われるような、美しい終わり方に、ほうっとため息をついてしまいました。

(2009.03.11 読了)

狐笛のかなた
楽天ブックス
著者:上橋菜穂子出版社:理論社サイズ:単行本ページ数:342p発行年月:2003年11月この著者の新


楽天市場 by ウェブリブログ



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
狐笛のかなた(上橋菜穂子)
最近、二人の姪を図書館に連れて行く役目を仰せつかってしまいました(笑) ・・・そんな訳で、子供向けの本棚周りをウロウロすることが増えて、ここのところ手を出してなかったファンタジー系のタイトルを見てはワクワク胸を躍らせていたりします。予約本があったりして、なかなか借りられないことも多いんだけど、前から気になっていたこの本を見た時には、思わず手が伸びてしまってました。 ...続きを見る
Bookworm
2013/05/11 06:17

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。お久しぶりです。
私も完読していない「守り人」シリーズですが、面白いですよ! 1冊ずつはすぐに読めると思いますが、どれも深い味わいがあります。
私も残り3冊を早く詠みあげたい……(T_T)
それが終わったら、『狐笛のかなた』に挑戦します☆
香桑
2009/03/13 22:07
香桑さん、ありがとうございます(^^)。
読みたい読みたいと思いつつ、リストは長くなるばかり〜♪(←歌ってごまかすな)
でも「守り人」シリーズ、やっぱり読見たくなってきました(^_^;)。
『狐笛のかなた』、良かったですよ〜ホントに。和の世界が、とっても美しかったです!
水無月・R
2009/03/13 23:18
自然描写が美しい物語でしたね。
小夜や野火そして小春丸の3人が運命に翻弄されながらも、なんとかそれに抗おうとする姿が健気でした。野火がどうなっちゃうんだろう・・・とドキドキしながら読んだんですが、最後はホッとするラストで良かったです。どうか、幸せに暮らして欲しいですね。
すずな
2013/05/11 06:29
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
少年少女(霊狐)がひたむきに自分の道を切り開いていく、とても美しい物語だったと思います。
人でなくなったとしても、幸せになっただろう、そう願いますね。
水無月・R
2013/05/11 22:38

コメントする help

ニックネーム
本 文
『狐笛のかなた』/上橋菜穂子 ◎ 蒼のほとりで書に溺れ。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる