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zoom RSS 『四とそれ以上の国』/いしいしんじ ○

<<   作成日時 : 2009/03/17 22:25   >>

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う〜わ〜、難しかったぁ・・・。
着地点の見えない展開、そしてオチのない終わり。迂遠で、曖昧で、象徴的な、何か。こう・・・背中がぞわぞわとするような、何かが蠢いているような、落ち着かない気配。たった一文字の章題も、なんとも不安感をそそる。
いしいしんじさんは、結構当たり外れが(水無月・Rとしては)あります。ハマった時はとんでもなく心奪われてしまうのですが、今回は・・・何とも評しがたいですな〜。

『四とそれ以上の国』は四国の物語、とくれば、少女時代の3年半だけしか住んでいなかったのに、水無月・Rに多大な影響を与えた、あの土地の物語。外せないではあ〜りませんか〜!ってなわけで、リスト入りさせたんですが、まぁ〜ホントに読むのに時間がかかった・・・!!一つの文章が長くて、句点も少ないし、改行も少なくて、どこで息継ぎをしていいのやら、読んでて苦しかったです(^_^;)。
・・・そして、あらすじを書くのはもちろん、感想を書くのも難しい・・・。

何と言うのかなぁ・・・。すっごく評価が割れそうな作品ですね。不条理なストーリー、ズレている現実感、かといって幻想的というよりは猥雑な感じ。一生懸命読みとろうとすると、どんどん足元をひっくり返され、世界観も価値観も根こそぎ持っていかれてしまうような、心もとない感じ。

あ〜、なんかもう、上手く表現できないので、率直に書いてしまおうと思います。
高知に3年半住んでいた、そんな身贔屓だけで。現実と微妙に入れ替わってしまう彼岸の世界が好きだという、そんな自分の好みだけで。
多分、この作品は「四国」という土地に思い入れがないと、読むのがキツイんじゃないかな〜と思います。

私の勝手な思いなんですが、四国という土地は、かつての「流刑の地」であり「平家落人の隠れ住む地」であり「八十八ヶ所巡り」のある霊場、四方を海に囲まれ4つの国がそれぞれ独立しながらもお互いを四国山脈を背中に支え合ってる、一つの生命体のように感じられるのです。
その生命体のエッセンスを抽出して、いしいさん流に文章化したのかな〜と。
難しかったけど、実は、こういうの嫌いではないです。 

各章の印象を一言ずつ。
「塩」
それぞれどこかが壊れた兄弟姉妹たちの、塩祭。
「峠」
病院で病の峠を越した祖母と、汽車で四国の峠を越した孫の英語教師。
「道」
お遍路の道は、各々のために展開してゆく。
「渦」
鳴門の大渦を好む男。
「藍」
ある日起き上がった藍、その藍を追いかける藍職人の旅路。

「道」は、全然分からなかったです。ひたすら文字を追いつづけ、読み終わったときはホッとしてしまいました・・・(-_-;)。

「藍」の、ラストシーンが綺麗でしたねぇ。発酵させている寝床から、染料の素であるはずの「藍」が意識を持って起き上がり、世の中へさ迷い出てゆく。それを追いかける、職人の五郎。五郎は頭(かしら)に染料としてちょうど良くなる数日内に、藍をとらえるように言われている。
「藍」にかかわる時間や人や土地を、自由に旅する藍。藍玉の指し示す方向を、遍路の道をたどって追いかける五郎。彼は身の内に「小四国」を見出す。その小四国に異変をかぎつけ、やっと追い付いた藍を手入れして染料の素となる「蒅(すくも)」に仕上げる。が、風を受けたかのように手のひらから舞い上がった蒅は、宇和島の海に散り、四国全体の輪郭を藍に光らせ、人のなかの小四国をも光らせ、そして静まって行った。
多分、このラストを読んだ瞬間、私の中の「小四国」も藍色に輝いたのだと思います。

どの物語も、状況説明がほとんどない。「渦」の弟は何の被害者なのか分からないし、「塩」の兄弟たちの父親の正体も分からない。「道」の遍路に至っては、四国八十八ヶ所巡りとは全く違う遍路の旅路であるし、「峠」の英語教師が記者の中で出会う現象はナンセンスすぎる。
それでも、何故か強い引力を持って、ぐいぐいと引き摺りまわされる。難しいから休み休みなのだけど、読むのを止めようという気にはならなかった。
言葉足らずな物語なのに、強くイメージを喚起する。その混沌そのものが、物語の生命力を感じさせる。

ココにある「四国」は現実の四国ではない。かと言って全く違う世界でもなく、どこかがズレていて、そのズレがアメーバのように伸び縮みしながら成長し、いつの間にか全部を飲み込んでしまってる・・・そんな感じでしたね。
難しかったけど、私の中の「小四国」に響きました!
ただ、物語的にはイマイチ・・・だったので、評価は○です(笑)。

(2009.03.17 読了)

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著者:いしいしんじ出版社:文藝春秋サイズ:単行本ページ数:220p発行年月:2008年11月この著者


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タイトル (本文) ブログ名/日時
四とそれ以上の国 いしいしんじ 文藝春秋
このタイトルを見た時、「四」が何なのか わからなかったんですが、「四国」なんですね。 「塩」「峠」「道」「渦」「藍」の五つの短編で構成されているのですが 印象としては、この短編すべてが響きあって一つのいしいさんだけの 「四国」を作っているらしいということ。 これは、「感じる」文学。これは何?とか、どうなってるの?とか 考えるのではなく、この次から次へと繰り出される言葉の海に溺れ、 奔流のように立ち上がるイメージに身を任せ、どこまでも流されて みるのが正解かと。 ...続きを見る
おいしい本箱Diary
2009/03/20 02:05

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは♪この小説、感想を書くのが難しかったですよね〜。私も、右往左往しながら書きました。いしいさんの独特な味は、言葉にするのが大変です。私も、この「四国」のイメージに振り回されましたが、それがけっこう快感でした(笑)ただ、この本のあちこちに出てくる「浄瑠璃」というのが、もう、これまた理不尽な世界なんですよ。私はそれに慣れているので、このいしいさんの混沌にも、割りと入っていきやすかったかもしれません。時間ができたら、ゆっくり読み返したい一冊です。
ERI
2009/03/20 02:11
ERIさん、ありがとうございます(^^)。
「浄瑠璃」は・・・何度かは見たことがあるんですが、お約束が分かってない人間には、人形を支える3人(しかも一人は黒子でなく顔が見えている)、大夫の語り謡う声の異様さ、三味線などの激しさは、かなりインパクトあったという記憶があります。それを見てますます狂ってゆく六女の惨たらしさが、読んでて非常に伝わってきましたね。
それを眺めながら手を打たない(打ちようもない)「俺」も、ある意味「浄瑠璃」の被害者であり「虜」なのかも知れないですね。
水無月・R
2009/03/20 22:39

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