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zoom RSS 『儚い羊たちの祝宴』/米澤穂信  ◎

<<   作成日時 : 2009/03/24 22:17   >>

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ほほう・・。ラストで覆される、ってのは前評判で聞いていたのですが、なるほどですね。
読書会「バベルの会」に所属する娘たちの周辺で起きる、不吉な事件の数々。
以前読んだ『story Seller』に収録されていた「玉野五十鈴の誉れ」も、4編目に入っています。

米澤穂信さん、人気高いですよね〜。デビューは2001年ですが、発表されてる作品の数は、かなり多いです。
『儚い羊たちの祝宴』は、最後の1行ですべてがひっくり返る驚異のミステリー、と前評判が高かったので、「どこまで予測を超えるラストになるのか?」という期待と疑いを持って、読みました。

全てがすべて、ラストの1行まで分からない、という訳じゃなかったです。ですが、やっぱり最後の最後に愕然とする章もあり、そう来たか!うむ!という、すっきり納得しました。辻褄合わせ一切なし。確かに、どちらかというと陰惨なラストなんですけどね、どの章も。

「身内に不幸がありまして」
旧家の娘とその側仕えの女中の遭遇する、1年ごとの殺人。真犯人は。
「北の館の罪人」
別館に幽閉されている嫡男、その世話をする側腹の娘。跡継ぎ争いは、密かに激化していた。
「山荘秘聞」
山荘の管理を任された、プロフェッショナルな使用人の狂気。
「玉野五十鈴の誉れ」
やや斜陽な旧家の令嬢に仕えた娘。彼女の誇りとは・・・。
「儚い羊たちの晩餐」
成り上がりの家に「厨娘(ちゅうじょう)」が雇われて。「バベルの会」を除名された娘の復讐。儚い羊の行く末は・・・。

「お父様・お母様」が当たり前で、子供たち一人一人に側仕えの使用人がついちゃうような、とんでもない富裕層。旧家でお嬢様で影のある側仕え、とくれば大きなお屋敷で因縁渦巻く殺人事件!な〜んて、すっごく型に嵌まった思い込みを持っちゃった水無月・Rですが、その思い込みにきっちりブラックなお返しをしていただきました(^_^;)。意外性満載です。
黒い・・・表紙のごとく、黒〜いです、物語が。

悪意があるならいいのですが、悪意ではなく狂った自己顕示欲や自己愛が、事件を起こしていて。人の心の裏側には、これだけ黒いものが潜んでるんだなぁ・・・怖いよ〜怖いよ〜。

「玉野五十鈴の誉れ」以外は、陰惨な結末を見るのですが(「玉野〜」も途中経過は悲惨)、どの物語も今まで物語などで読んだことのあるような状況でありながら、斬新な展開を見せます。
「身内に不幸がありまして」なんて、タイトルからよく考えればわかるのに、あのオチには度肝を抜かれました。ナニィ?!そうきたかっ!みたいな。どうも古来お嬢様というものは、明るく淡い砂糖菓子のように見えて、何か翳りを背負っているようでございますな。ミステリ仕立てとなると、特に。

「儚い羊たちの晩餐」は、途中で羊とは何かが分かってしまうんですが、物語のキモはそこじゃないんです、多分。「バベルの会」を復活させたのは、「厨娘」に狩られなかった羊・・・ではないかと。だとするとそれは・・・第一章の、あの・・・?
またそれとは別に気になったのは、「厨娘」という職。最高の料理にするために、最良の部分だけを選りすぐり、惜しげもなく捨て去られる食材。調理の腕も知識も最高、自尊心も高く、宴の料理を作るためだけに存在する、因果な存在。うわぁ・・・「厨娘」の物語、読みたいです。非情な料理人の作り出す、至高の料理と恐るべきその力が呼び寄せる、ミステリ。

「山荘秘聞」も、使用人として最高の手腕をもつ人間の、自己顕示欲という歪みがぞわぞわとくるラストでしたねぇ。しかも・・・理解出来なくもない自分に気付き、ぞっとしました。いや、やらないけどね、あんなことは。なんだろう・・・普通の日常に潜む人間の欲望が、最大限に発露した、というその狂気がとてつもなく怖ろしかったです。

(2009.03.23 読了)

儚い羊たちの祝宴
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著者:米澤穂信出版社:新潮社サイズ:単行本ページ数:253p発行年月:2008年11月この著者の新着


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タイトル (本文) ブログ名/日時
儚い羊たちの祝宴(米澤穂信)
5編の短編集。 ...続きを見る
Bookworm
2009/03/25 05:28
「儚い羊たちの祝宴」 米澤穂信
儚い羊たちの祝宴米澤 穂信新潮社 2008-11売り上げランキング : 635Amazonで詳しく見る by G-Tools 内容(「BOOK」データベースより) ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であり至芸でもある。本書は、更にその上をいく、「ラスト一行の衝撃」に徹底的にこだわった連作集。古今東西、短編集は数あれど、収録作すべてがラスト一行で落ちるミステリは本書だけ。 ...続きを見る
今日何読んだ?どうだった??
2009/03/25 20:48
儚い羊たちの祝宴 米澤穂信 新潮社
久しぶりに読んだなあ、米澤さんを。 ブラック&クラシックな味わいのミステリー連作。 「お嬢様」とか、「旧家」とか、「座敷牢」とか、 いやー、懐かしくて嬉しい(笑) 大体、ミステリー上においては「旧家」という場所では 殺人事件が起こる、と相場が決まっていますから(笑) 横溝正史、エドガー・アラン・ポー。ディクスン・カー。 江戸川乱歩。いいですねえ、花粉にまみれた脳が くらっとする(笑)そんな古くて暗いミステリのかほりが 漂いまくりの5篇です。 ...続きを見る
おいしい本箱Diary
2009/03/25 21:01
「儚い羊たちの祝宴」米澤穂信
儚い羊たちの祝宴クチコミを見る ...続きを見る
本のある生活
2009/06/10 21:53
儚い羊たちの祝宴 〔米澤 穂信〕
儚い羊たちの祝宴米澤 穂信新潮社 2008-11売り上げランキング : 67617おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。 中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮やかに真相を引っ繰り返す技は、短編の華であ... ...続きを見る
まったり読書日記
2009/06/25 21:55
「儚い羊たちの祝宴」 米澤穂信
舌を刺激する鋭い苦味の効いた黒い話たち。《古典部シリーズ》、《小市民シリーズ》といった日常にある謎を解くのとはまったく趣向が異なるこのブラックな風味、嫌いじゃない。いつもは始めになんとはなしにパラ見するのだけど(内容を読むのではなく項を埋める文章の視覚的感覚を確認するために)、帯にある「ラスト一行の衝撃」が万が一にも損なわれるのを惜しんで、真面目に一頁の一行目から順を追って読んだ。 &amp;nbsp;ミステリの醍醐味と言えば、終盤のどんでん返し。中でも、「最後の一撃」と呼ばれる、ラストで鮮や... ...続きを見る
コンパス・ローズ  compass ro...
2009/07/01 19:35
儚い羊たちの祝宴 米澤穂信
儚い羊たちの祝宴 「身内に不幸がありまして」 村里夕日は孤児院で育ち、5歳の時に丹山家に引き取られる。丹山因陽の娘、吹子に仕える事になった。夕日は吹子に命ぜられ、秘密の本棚を作る。その棚に納められている本を借り、夕日は本の虜になる。丹山家には長男がいた。.... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2010/01/03 00:07
最後の数ページで
小説「儚い羊たちの祝宴」を読みました。 ...続きを見る
笑う学生の生活
2010/07/13 22:41
儚い羊たちの祝宴  米澤 穂信
「身内に不幸がありまして」 「北の館の罪人」 「山荘秘聞」 「玉野五十鈴の誉れ」 「儚い羊たちの晩餐」 これら5編の連作短編集。 ...続きを見る
花ごよみ
2012/02/08 20:27
いつかの時代の物語達
今回手にしたのは米澤穂信さんの作品、 彼の作品は今作で三冊目となる。 僕の中での米澤さんは一勝一敗 笑 三冊目の「儚い羊たちの祝宴」は果たして・・・? ...続きを見る
活字の砂漠で溺れたい
2016/07/18 10:04

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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
黒かったですねぇ〜;;;黒かったけど読むのを止められず、最後まで夢中で読んでしまいました。なんだか、この黒さは癖になりそうです^^;
個人的には「北の館の罪人」が一番好きでした。最後に絵の意味に気付いたとこなんて、ぞぉぉとしました。
すずな
2009/03/25 05:32
ほんと、黒かったですねぇ。前からお嬢様好きなんじゃないかといぶかっていましたが、その愛情もねじれてそうで怖いな、米澤さん(笑)。
わたしもすずなさんと同じく、「北の館の〜」が一番好きでした^^最後のオチ読んだ時の衝撃といったら!!ぶるぶる。
麻巳美
2009/03/25 20:49
>すずなさん。
「北の館の殺人」は、絵を貰った時には気づかなかったことに、はたと気づいた瞬間のあまりの動揺はいかに!ですよね。非常にサスペンスですよ!うわ〜うわ〜と唸ってしまいました。

>麻巳美さん。
ホント、ブラックでしたわ〜。
米澤さんて、お嬢様好きなんですか?そ・・・それは要チェックかも。うう・・・またリストが(笑)。お嬢様でブラックな物語・・・結構好みのタイプですよ私。
私は「身内に不幸がありまして」の最後のどんでん返しがすごくインパクトありました。「北の館〜」も怖かったですけどね・・・。
水無月・R
2009/03/25 21:05
こんばんは♪
お金持ち・旧家・お嬢様とくれば、殺人事件ですよね(違うか・・)私も「厨娘」という存在には興味があります。少し古い本ですが、開高健の「最後の晩餐」という本、面白いですよ。これでもか、と食通や、食にまつわる文学作品がでてきて、今でも時々読みふけってしまいます。図書館などで、良かったら探して読んでみたくださいね♪
ERI
2009/03/25 21:11
ERIさん、ありがとうございます(^^)。
違いませんよ(笑)!
「厨娘」は、なかなかに因果な存在で、物語的にもとても興味があります。
是非、開高さんの「最後の晩餐」探してみますね♪
水無月・R
2009/03/25 21:17
そうだったんだ!悪意がないから怖いんだ!というの、水無月・Rさんの記事を読んで気づきました。「玉野五十鈴の誉れ」は、楽しかった頃の思い出がラストのオチにそのままうまくはまってるし、「身内に不幸がありまして」なんてそのままなのに、全然気づかなかったし、どれもラストで「うわー!」って驚いてしまいました。
june
2009/06/10 21:48
juneさん、ありがとうございます(^^)。
水無月・R自身が、割と自己顕示欲(すごく人間の器小さいくせに)というか、認められたい欲のある人間なので、すごく身につまされてしまったのですよね〜(笑)。
自己顕示欲は悪意ではない、と思いたいです(^_^;)。ただその表現次第では、これだけスゴイことになっちゃう、というのが、物語の妙ですね。
水無月・R
2009/06/10 22:04
「バベルの会」を引き継いだのは…。予想することさえしてなかったので、水無月・Rさんの予想になるほど!となってしまいました。
短篇一つだけでもぞっとなるのに、全篇通すとさらに黒い余韻が一層深まる感じがしました。
エビノート
2009/06/25 22:07
エビノートさん、ありがとうございます(^^)。
「バベルの会」そのものは描かれてはないのに、全編を通して物語に暗〜い影を落とすという、何だか二段仕込みな構成が、怖ろしかったですね〜。
個人的に「旧家の影あるお嬢様=因縁渦巻く殺人事件」という短絡思考を持ってたので、えぇぇ?!と驚かされたり、納得させられたり。
とても満足した作品でした♪
水無月・R
2009/06/25 22:19
水無月・Rさん、こんばんは〜
表紙の黒さはだけじゃない。誰の心にもこんな黒い残念さが潜むのかと思うと怖いです。
「バベルの会」を復活させるのは、そうかそうかもと頷きました!ありえる。そこまで考えませんでしたよ。
とても黒い物語は満足のゆく一冊でした。
雪芽
2009/07/01 19:45
雪芽さん、ありがとうございます(^^)。
復活した「バベルの会」はどうなっちゃうんでしょうねぇ・・・怖ろしや。
何とも陰惨で、黒い黒い、お嬢様たちの物語でしたね〜。
水無月・R
2009/07/01 21:51
こんばんわ^^
怖かったですねぇ。
背筋がぞぞっとしました。
本当に米澤さんはミステリを読み込まれているんだなぁと思わせる作品でした。
どれもどんでん返しで、予想を裏切られましたし。
「玉野五十鈴の誉れ」が1番すきです。あの事故は、五十鈴がやった事なのだと私は勝手に思ってます。
苗坊
2010/01/03 00:08
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
「玉野五十鈴の誉れ」、私もそうだと思います。
そうしてでも、五十鈴は純香を守り助けたかったのだと、五十鈴と純香の間にある強い絆が、すばらしいと思いました。五十鈴のやったことは・・・とても頷けませんが。

どれも怖くて、ぞわわ〜っとする、印象的な物語でしたね。
水無月・R
2010/01/03 22:26
ご無沙汰しております。今更ながらに読みました 笑 ミステリ−としてよりもどちらかというと、その世界感に惑わされました!!!
yori
2016/07/18 10:08
yoriさん、ありがとうございます(^^)。
ミステリーとかどんでん返しとか、もちろんそれもすごかったですけど、「めくるめく黒いお嬢様ワールド」的な世界観が、すごかったですよね♪
お嬢様、怖い…(笑)。
水無月・R
2016/07/18 19:29

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