蒼のほとりで書に溺れ。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『女神記』/桐野夏生 △

<<   作成日時 : 2009/04/23 22:01   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 2

『グロテスク』で、人の心の闇にひそむ悪意と狂気を鮮やかに描きだした、桐野夏生さん。あの妄執はすごかったなぁ。
本作『女神記』(じょしんき)も、激しく猛り狂う怨みと怒りの描写が、とてつもない迫力でした。

ヤマトからはるか南にある、多島海の東端・つまり日が昇り神が降臨したという海蛇の島の娘・ナミマ。島の大巫女である祖母が死んだとき、自分は陽の巫女・姉のカミクゥに対する陰(闇)の巫女であることを知らされる。
しかしすでに子供を身籠っていたナミマは、夫・マヒトと共に島を逃げ出し、ヤマトへの海路半ばで、娘を出産する。ほどなくヤマトに着こうかという時、ナミマはマヒト人に殺され、黄泉の国に辿り着く。
黄泉の国は、ヤマトの女神・イザナミが支配する、死の国であった。イザナミは過去、夫・イザナキと対立し、日に千人の命を奪う誓いを立て、イザナキは日に千五百の産屋を立てると宣言。長く時を経ても尚、その争いは続いていた。
夫や娘に未練を覚え、蜂の姿を借りて海蛇の島を訪れたナミマは、夫の裏切りを知り、夫を刺し毒で死に至らしめる。
イザナキは神であることを脱ぎ捨て人となり、ナミマの娘・夜宵を娶り、イザナミに夜宵を殺さないでくれと頼みに黄泉の国を訪れる。その余りに勝手な言い分はイザナミの怒りに触れ、イザナキは黄泉の国で息絶える。
神の怨みと怒りは、いつまでも癒えることがない。

人の怒りや苦しみ、恨みの気持ですら、消えることは難しい。人はいつしか死んで、なくなってしまうものであるはずでも。
ましてや、「死」がない神の怒りたるや、憎悪増すことはあれども、薄れたり癒されたりすることはなく、永遠に続く。

日本神話(古事記)の神々を、猛々しく感情豊かに描き出しているのが、非常に強烈でした。
千年以上の時を経て尚、激しい怨みを抱いてそれに慣れることなく苦しみ続ける、イザナミの神であるが故の永続性。その、激しく熾烈なまでの強さ。
反対に、愛した妻の醜い姿から逃れ、千人殺されるなら千五百人産ませるとやり返し、あちこちで人間の女に子を産ませ続け、それでも生きることに倦み人になり替わり、妻の命ごいに過去の妻である女神を訪れる、イザナキの身勝手さ。

一方でナミマの物語も、苛酷であった。貧しい島での暮らし。陰陽二人の巫女の運命と、島のしきたり。しきたり故に殺され、利用されたナミマ。復讐を遂げるも、怨みは消えることなく残る。

だけど、ちょっと「人間の物語」のほうは、物足りない感じがしたんですよね〜、残念。
多分、イザナミの物語に比べると、少々迫力不足だったからだと思います。波乱万丈ではあったんだけど。
逆にイザナミの物語は、日本神話をベースにしてるので馴染み深い分、荒ぶる神であることがクローズアップされて、怒りや怨み、冷徹なまでの仕打ちなどの酷薄さが、読んでいてとても納得できました。
二つの物語のバランスが、個人的に合わなかったので、今回ちょっと辛め評価といたします。

(2009.04.22 読了)

女神記
楽天ブックス
新・世界の神話 著者:桐野夏生出版社:角川書店/角川グル-プパブリッサイズ:単行本ページ数:251p


楽天市場 by ウェブリブログ



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
女神記 〔桐野 夏生〕
女神記 (新・世界の神話)角川グループパブリッシング 2008-11-29売り上げランキング : 15728おすすめ平均 Amazonで詳しく見る by G-Tools ≪内容≫ 遥か南の海蛇の島、巫女の家に生まれた二人の姉妹。 姉は大巫女を継ぎ、島のために祈り続けた。 妹は与えられた運命に.... ...続きを見る
まったり読書日記
2009/10/05 21:16

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは!
TBのお返しが上手くいかないみたいなので、コメントのみで失礼します
女の情念を描かせるとピカイチの桐野さん。この作品も、恐ろしいと思いつつ引き込まれました。
特に女神・イザナミの怨みの強さはすさまじいものがありましたね〜。
できれば、これほどまでの怨みは抱きたくないものです(笑)
エビノート
2009/10/05 21:34
エビノートさん、ありがとうございます。
TB大丈夫です!
ご心配&お手数おかけしました。スミマセン。
死ぬ事のない(永遠に滅びることのない)女神の、凄まじいまでの怨みの心は、とても恐ろしかったですね。
・・・だけど、自分にもそんなものがある・・・ということに気づいちゃったのですよ。ここまでスケールは大きくないんですけどね。
ああ、女って怖ろしい(笑)。
水無月・R
2009/10/05 21:43

コメントする help

ニックネーム
本 文
『女神記』/桐野夏生 △ 蒼のほとりで書に溺れ。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる