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zoom RSS 『厭な小説』/京極夏彦 ◎

<<   作成日時 : 2009/07/09 21:42   >>

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いやぁ・・・(笑)。色々、言うべきことはあると思うんですが、なんと言うか、この作品は、真面目に受け取ってはいけないような気がする。あえてここは、明るく軽〜く受け流すのがよろしいかと。
・・・なんて言うか非常に挑戦的な作品でございましたよ京極夏彦さん。
なんせタイトルが『厭な小説』で、タイトルだけじゃなく、内容も、構成も、装丁から何から(虫が挟まっているような印刷には度肝を抜かれた)、すんごく厭なんである。
でもその厭さ加減を(笑)で片づけて自分から切り離そうとしてる自分が、一番「厭」かも・・・。

表題を含む、7編の短編のすべての冒頭が
〜〜厭だ。〜〜 (本文より引用)
で始まる。
何が厭かって、それぞれに粘着質に生理的に厭なのである。
家に帰ると世にも不気味な子供がいる、「厭な子供」
自分の前でだけ奇行を繰り返す親族の老人とその顛末、「厭な老人」
ホームレスだった男が毎年訪れるホテルの「厭な扉」
預からされた仏壇には先祖が入ってて、自分の先祖も?「厭な先祖」
厭だということを延々繰り返す、「厭な彼女」
厭な記憶だけが繰り返される、「厭な家」
前の6編全てに関わる「深谷」が、「厭な小説」と巡りあう。

どれも妙にリアルで、現代の病巣を抉って取りだし、ちょっとフィクションくっつけて加工してみました、という感じなのである。
ここまで厭な小説を書ける京極さんの筆力及び発想の凄さにに脱帽、である。
「厭だ」と感じる状況・展開・クライマックス・更にもっと厭になってくるオチのバリエーション、もう〜勘弁してくれと言いたくなる。自分の身にもこんなことが起こるんじゃないか、いやそこまでは、と思いつつ、ひたすら「なんて厭な小説なんだろう」と厭〜な気分になってくる。
が・・・途中でやめることが出来ない。
それは多分、野次馬根性である。

そんな自分が嫌になってくるな(←あえて厭と書かず嫌と書いてみる(笑))。

ただ、厭と言ってもグロくない(水無月・Rは、グロいとグロテスクをニュアンスで使い分けてます)。グロテスクではあるが、エグ味はない。執拗なまでに厭〜な描写が続くんだけど、それが妙に透明度が高いというか。ううむ〜、読んでて不安感は煽られるんだけど、リアリティもあるんだけど、さすがに自分はここまで狂ってないから大丈夫という感じ・・・でしょうか。
いや・・・でも、ホントに大丈夫、か?という気もしてきたな・・・うっわ〜、後から来るんかい。

どの物語も、厭でしたわ〜。
厭な子供には出会いたくないし、厭な老人の世話&同居はしたくないし、厭な扉を開けに行きたくないし、厭な先祖はいらんし、厭な彼女は怖いだろう。もちろん厭な家で厭な体験を繰り返したくないし、もっと言えば厭な小説を読みながら自分の身の回りの厭な出来事の真実も知りたくないよな。

「厭な老人」と「厭な彼女」は・・・、特に厭だなぁ。どの「厭な〜」もエンドレスループに近いものがあるが、この2つがエンドレスループになったら、発狂するしかないのに、発狂すら許されないというのが、・・・厭だ!

しかし最終章「厭な小説」の話の持って行き方が、厭らしくて仕方ない。
最近自分の身の回りで「厭な出来事」が多い、と思ってる深谷が、厭な上司と出張に行く新幹線の中読むのが『厭な小説』。あたかも自分をストーキングして書いたのではという内容、いやしかし自分でも見ていない部分が如実に描かれている、あの人たちはこんな状況にあって、ああなってしまったのか・・・?いや、これは所詮「作りごと」のはずだ、しかしあまりにも手が込んでいる・・・何故だ。
そして厭な上司とのやりとりから、自分が厭なエンドレスループにはまり込んでいることを知る、深谷。
何度も繰り返す、厭なやりとりの末、上司を乱暴に怒鳴りつけて、そして、読み始めた、その先には。
〜〜何よりも厭なことが、この先お前に起きる。〜〜 (本文より引用)
――― と、あった。
突然に、エンドレスループが切れ、深谷は ――― 。
〜〜厭だ。〜〜 (本文より引用)
と、唐突に終わる物語、うわぁ、これはアレですね、呪いの小説だ(笑)。
読んだら厭なことのエンドレスループなうえ、一番厭なところで、更に最も厭なことが起こるという・・・。
でもなんだかソコまで行っちゃうと、自分が呪われそうな気がしない。・・・のは、まだまだ甘いのかしらん。
あはは・・・と虚ろに笑いながら、胡麻化そうとしてる自分が、いやそこへセルフツッコミを入れてる自分が一番、厭だ(笑)。・・・毒されている。

(2009.07.08 読了)

厭な小説
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著者:京極夏彦出版社:祥伝社サイズ:単行本ページ数:458p発行年月:2009年05月この著者の新着


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厭な小説 〔京極 夏彦〕
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まったり読書日記
2009/08/21 20:38
『厭な小説』 by 京極夏彦
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■空蝉草紙■
2009/10/19 11:01

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
虫まで印刷されてるとは!ってビックリしちゃいましたね〜。図書館で借りたので、前の人が挟んじゃったのねとうっかり勘違いしてました(^_^;)
この本に描かれる様々な厭な状態を読んでいると、私がイヤだイヤだと思ってることって、それほどたいしたじゃないかも…と思えてきちゃいました。これは京極マジック?笑
エビノート
2009/08/21 20:56
エビノートさん、ありがとうございます(^^)。
ホント、「厭」な小説でしたよね(笑)。
京極さん、凄すぎですわ〜(^_^;)。
とりあえず、どのシチュエーションもゴメンですねぇ〜、あはは。
水無月・R
2009/08/21 22:21
こんにちは、トラバお返ししますね♪
厭〜な話ばっかりの面白い小説でしたけど、私にとってはひとつ自慢が!bk1の今週の書評getです!でもよりによってこういう本でか・・・い、厭だなぁ・・・
空蝉
2009/10/19 11:04
空蝉さん、ありがとうございます(^^)。
bk1今週の書評get、おめでとうございます〜!
いやいや、こういう作品だからこそ『紹介文』というのは必要ですし、読んでみたいな!という気になるレビューをきちんと書けるということですよ。スバラシイです〜。
水無月・R
2009/10/19 22:31

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