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zoom RSS 『まほろ駅前多田便利軒』/三浦しをん ◎

<<   作成日時 : 2009/09/22 22:15   >>

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先月末、中国地方のM市を転出して、近畿地方・N市に引っ越してきました。超突貫工事な引っ越しスケジュール、車も通れない路地がたくさんあるカオスな町並み、片付かない荷物・・・と、なんともあわただしい日々を過ごしております。
そして・・・引っ越して10日ほどたったころ、N市の中央図書館へ行ってみました。そして、借りてきたのが、三浦しをんさんの『まほろ駅前多田便利軒』なのでありました。

折しも、インフルエンザ大流行中、子供のクラスも学級閉鎖になるという大混乱+シルバーウィークに突入。
・・・全然、本が読めません・・・。落ち着いて本が読みたいけど…いまだ引っ越し後の処理が終わっておらず…ううう。
でも、何とか合間を縫って読んだ本書、すっっごく、おもしろかったです。
私、しをんさん、大好きだなぁ〜。なんだろう、この全編にわたって漂う、哀愁を含んだトホホ感・・・。
あちこちで、ニヤニヤ、うぷぷ、ぎゃひひ!・・・と、怪しい人全開で読んでおりました。
そしてところどころで明かされていく真実には、ほろりとしたりもして。

今回は、この間の『月魚』のような「ただならなさ」度は薄いのですが、主人公である多田便利軒経営者(と言えば聞こえはいいけど(笑))の多田と高校時代のクラスメート・行天の、噛み合ってるのかいないのかよく判らないやりとりが、非常に痛快。
多田の便利屋稼業に、ホントにくっついてくるだけの行天。時々突拍子もないことをして、事態をひっかきまわしたり、進展させたり、ときには力技で解決させたりするんだけど、基本的に行天は何を考えてるかわからない奇人。トランプのジョーカーを連想させる。

かろうじて東京に引っ掛かっている、ほぼ神奈川県扱いのまほろ市。その駅前で多田便利軒を営んでいる多田は、正月早々預かったチワワと共に、路線バスの間引き運行疑惑の調査に行く。その帰り、真冬に素足で健康サンダルをはいている、元同級生の行天と再会してしまう。行くところがないという行天を、一度は断ったものの泊めてやる多田。
そこから、多田と行天とチワワの、奇妙な共同生活が始まる。・・・といっても色っぽい話もなく、動物がらみの泣かせる話もなく、チワワの飼い主探し(新旧)や、塾へのお迎え業務や、蔵の整理作業や、何故かまた路線バスの間引き運行調査や、・・・そんなさまざまな依頼の合間に、多田が中学生を使った麻薬販売路をぶち切ったり、行天の娘と元妻が現れたり、行天が腹を刺されたり、いつの間にか多田が警察にクリーンならざる市民としてマークされたり、行天が失踪したりする。

多田としては、「依頼人の老若男女を問わず、依頼されたことには誠実に対処する、但し法律の範囲内で。」という方針で立派な小市民として便利屋を営んでいたはずだった。行天のトラブル体質なのか、多田の心境の変化なのか、舞い込む依頼は、密やかに家族や血の繋がりに関わるものになっていくかのようである。

高校時代、行天が小指を切断したあの時の、本当のいきさつ。行天の過去。そして、多田の結婚と、その後、そして離婚。家族とは何か。失ってしまったあの関係と、
誰もが、取り返せない過去を背負って苦しんでいる。
だけど、結びのこの文に、すべてが凝縮されている。
〜〜失ったものが完全に戻ってくることはなく、得たと思った瞬間には記憶になってしまうのだとしても。〜(中略)〜幸福は再生する、と。形を変え、さまざまな姿で、それを求めるひとたちのところへ何度でも、そっと訪れてくるのだ。〜〜 (本文より引用)
今までがあってこそ、今の自分たちがあり、めぐり逢って、共に過ごしてゆくことができる。
それを否定しない、希望のあるラストが良かった。心温まる感じがして。

(2009.09.16 読了)

まほろ駅前多田便利軒
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著者:三浦しをん出版社:文藝春秋サイズ:単行本ページ数:334p発行年月:2006年03月この著者の


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まほろ駅前多田便利軒 三浦しをん
まほろ駅前多田便利軒 オススメ! 多田啓介は、東京のはずれのまほろ市で、便利屋を営んでいる。 チワワを預かることになったのだが、その犬を見失い、探していたところ、駅で犬を抱えている男を見つける。 その男は、多田の高校時代に変人といわれていた行天春彦だった.... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2009/10/02 00:18
『まほろ駅前多田便利軒』 by 三浦しをん
こんな面白いものを書く人の作品を今まで読んだことが無かったことを本気で悔いた。 キャラ・設定・事件・長さ・構成・・・どれをとっても○。まあ、芥川賞系のモノから見れば軽いノリだし、一話完結の漫画のような雰囲気だし、胡散臭いし(笑)、ご都合主義ではある。 至極真面目な方にはくだらん、と捨てられてしまうかもしれない・・・が、それでも涙したくなるほど良いストーリーなのだ。 ...続きを見る
■空蝉草紙■
2009/11/30 13:58

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
はじめまして。香桑さんのブログから参りました。
苗坊と申します。
TBさせていただきました。
しをんさんの作品は大好きで、ちょこちょこ読んでいます。
この作品、忘れかけていますが直木賞作品なんですよね。
2人は最初はでこぼこコンビだと思っていましたが、次第に息があっていくのが読んでいて面白かったです。
2人にはそれぞれ過去にいろんなことを経験していましたけど、それを払拭させるといいますか、前向きにさせてくれるラストがとても好きです。
苗坊
2009/10/02 00:20
苗坊さん、はじめまして。
TB&コメント、ありがとうございます!
【蒼のほとりで書に溺れ。】へようこそ!

トホホな中に、ほろりと来るような、切なくなるようなエピソードが織り交ぜられ、そのバランスの素晴らしさに、脱帽でしたね。
私も、このラストシーンはとても好きです♪

拙いレビューばかりで、お恥ずかしい限りですが、もしよろしければ、またお越しくださいませ。
水無月・R
2009/10/02 23:22
こんにちは〜お久しぶりです。
最近、この続編?がでたんですよね!読みたいけど読む時間がなくて泣きを見ております・・・
でも水無月・Rさんがまだ読んでいなかったとは意外!でもって私と同じくあの部分を引用しているあたりがまたびっくり(笑) きっと誰もがあの文章に心打たれるって証拠ですね。
空蝉
2009/11/30 14:01
空蝉さん、ありがとうございます(^^)。
はい〜、そうなんですよ。実は(笑)。
続編もちゃんと[読みたい本リスト]には入ってるんですが、なかなかたどり着けない!
・・・くくぅ〜!
あのラストは、いいですよね!
失った物事そのものは取り戻せないけど、形を変えて取り戻せるものはある・・・新しく作っていくことが出来るんだ、とても救いがあるラストでした。
水無月・R
2009/11/30 23:20

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