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zoom RSS 『最後の記憶』/綾辻行人 ○

<<   作成日時 : 2009/12/20 00:06   >>

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白髪性若年性痴ほう症の母。現在から過去へ向かって、次々と失われていく記憶の中で、残るのは印象の強い記憶。母の中で、もっとも強い記憶は、殺戮の現場から逃げ出したというものであった。次第に濃度を増していく、恐怖の記憶にさいなまれる母を看取りながら、この痴呆症が遺伝性のものであることに、つまり自分に遺伝子発症することを恐れる主人公・僕・波多野森吾。
・・・彼の取った行動は。

『深泥丘奇談』のその怪しい幻想世界で水無月・Rを虜にした綾辻行人さんの本格ホラー長編。
母に残される『最後の記憶』を追い、母の母も白髪性若年性痴ほう症で死んだのかどうかを確かめるため、母の故郷を訪ねた僕は。

ショウリョウバッタの飛ぶ音、そして突然ひらめく白い閃光、惨殺される子供達。殺戮者の「あいつ」が追ってくる。そこから逃げ出してきた子供時代の母の記憶。大学院で研究を続けていた僕は、若年性痴ほう症が自分に遺伝するのではないかという恐怖に病的なまでに蝕ばまれ、生きる気力を失いかけていた。
再会した幼馴染・藍川唯に背中を押され、一緒に母の故郷を訪ねる。そこで聞き出した養女だった母の、生家を訪ね「母の母も白髪になって惚けて亡くなった」と聞き、僕は「もうどうでもいい。`この世界`からいなくなってしまえばいいのだ」という心境になり、異界に紛れ込む。
そこには、子供だけが楽しく遊び暮らす世界があった。だが、僕は話しかけられてしまうのだ。狐の面をかぶった人物に。
〜〜「生きているのは楽しいかい?」〜〜 (本文より引用)と。
狐の面は僕に教える。この異界は子供達を吸収して、続いてゆくのだと。
ここで、幸せに暮らす子供たちの中に、子供時代の母がいることに気付き、子供を吸収する異界の真実の姿に恐れを抱いた僕は・・・・。
自分が生まれてくるために、自分の生にしがみつくために、僕は、「あいつ」になった。

その母の、もともとの名は「咲谷由伊」。ああ・・・『眼球綺譚』『深泥丘奇談』にも出てくる、あの。綾辻さんのホラー小説には欠かせない名前なんですね、きっと。同一人物ではないけど、何かしら恐怖の根源になる存在の。

なんとも、陰惨な展開。主人公・僕(波多野森吾)の、独りよがりで醜い行動。ループする、恐怖と醜さ。ホラーというよりも、もっとダークな感じがする。
ある意味、僕は非常に素直なのだ。母を思いやるよりも、自分も若年性痴ほう症になることへの恐怖から色々なことを投げ出し、逃げ、そして自己正当化のために忌むべき「あいつ」になる。母の最後の記憶が、最悪なものになっても、自分を生かすために。母を苛む記憶を作る。

なんて、忌まわしい。なんて、イヤな気持ちになるんだろう。森吾の自分勝手さが、一番酷い。自分が痴呆になることを恐れ、殻に閉じこもる、その醜さ。可能性を確かめるために訪れた地で、自分可愛さに恐るべき行為に及ぶ、その狂気。
非常に、イヤ〜な、読後感です。
ですが、逃れられない引力があった。嫌だ嫌だ、森吾の行動が自分勝手で酷過ぎる、そう思いながらも、読み続けずにはいられない引力が。
怖ろしい、作品です。

(2009.12.19 読了)

最後の記憶
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角川文庫 著者:綾辻行人出版社:角川書店/角川グループパブリッサイズ:文庫ページ数:509p発行年月


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