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zoom RSS 『デンデラ』/佐藤友哉 ○

<<   作成日時 : 2010/01/05 22:32   >>

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あけまして おめでとうございます
今年も、素晴らしい作品に出会って、良い記事(←かなり疑問)をUPできるといいなぁ〜と希望しています。
この一年また、お付き合いいただければ光栄に存じます。
さて2010年のトップを飾りますのは、佐藤友哉さんの描く衝撃作、『デンデラ』。それは、かつて日本の農村にありえた「姥捨て山」のその後の物語。
私にとって佐藤さんは「サイキック風味なバイオレンス小説」を描く作家さんです。そして、今作も『暴力』に満ちている。主人公たちは、『村』に用なしとされた、老婆たちだというのに。
老婆たちは、厳しい生活を送りながら、時に『暴力』を操り、時に『暴力』にさらされ、「デンデラ」という集落で生き続けている。その最後は・・・。

70歳になると、冬の『お山』に連れてゆかれ、そこで死んで極楽浄土へ行く。村でずっと続いてきたその因習に、役に立たなくなった自分の希望を見出していた、斎藤カユ。立派に死にたいと思っていたのだが、老婆たちの集落・デンデラに救い出され、そのことを恥じ憤っている。
デンデラには、カユを含め50人の老婆たちが生活している。なんと30年も前から、お山を挟んで村と反対側に秘かに住処を作っていたのだ。デンデラの祖であり長である三ツ屋メイは100歳。村や男衆に対する復讐の念に燃え、「村を襲撃するのだ」と公言してはばからない。対して穏健派も存在し、もちろんどちらとも態度をはっきりさせない者もいる。
知識も技能もない老婆たちが30年かけて培った経験だけで、デンデラは生きながらえている。
突如、お山を縄張りとする巨大熊・赤背が、デンデラを襲う。赤背とその子熊は、冬眠し損ね、飢えていた。武器を持たない人間の弱さと味を覚えた赤背は、デンデラを襲撃し、撃退され、お山で老婆たちを待ち伏せし、またデンデラを襲う。
そのさなかに、疫病まで発生し、デンデラは崩壊を迎える。
生き残ったカユ達は、それぞれの考えをもって解散し、行動を開始する。

姥捨て山その後、老婆たちの暮らす集落。そこはユートピアではなく、冬山の厳しさ・飢餓・野生動物の襲来・もちろん人間同士の対立もあり、生きていくのが精一杯である。「村を襲撃する」といっても、武器は木の槍と石を削り出した小刀程度。しかも、それを扱うのは、老婆。どう考えても勝ち目はないが、長のメイは実行を企画していた。そこへ、圧倒的な力を持って赤背がデンデラを襲う。デンデラ崩壊はここから始まる。
50人もいた老婆たちは、赤背と戦って殺され、食われ、また16年前の疫病の再発で死亡し、最後には6人になる。デンデラが隠し続けた16年前の虐殺。村で行われていた因習としての『暴力』。村への怒りとお山で死んで極楽浄土へ行きたかったと願う、自己欺瞞。村にもデンデラにも同調できない、カユの焦燥と怒り。赤背の本能。
全てがぐるぐると絡みつき合い、多種多様な暴力・殺戮を経て、物語は終わりを迎える。

何せ登場人物は50人+熊の親子。把握できない、と思っているうちにどんどん人が減ってゆく。カユの視点で物語は進んでいくが、貧しい村で生まれ育ち、因習に疑問を持たず、思考する暇を持たないまま、ただひたすら歳月を過ごしてきたカユは思考することがうまく出来ない。
が、最後に取った行動は、そんな自分を縛ってきた村に一矢報い、デンデラを再生させようとうする生き残りたちや村を襲撃することを希望していた者たちの意思を継いだものとなった。

清々しい終わりとは思えないのに、すっきりもしないのに、何故か満足のいく終わりだと思った。カユの計画がうまくいくかどうかも分からないのに。それでも、デンデラの老婆たちの様々な思いを汲んだカユの最後の行動は、老婆たちの色々な思いを無理やりにでも自分のの中で消化して一つの結論を出した。カユも、デンデラでの生活で変わったのだと思う。

力強い暴力の物語でした。もちろんそれを肯定するわけではないです。まず姥捨ての時点で、うなづけませんし。状況によっては、私だって捨てられる立場にあるから。なにも生産出来ず、浪費するだけの存在だから。
だから、その暴力の力強さに救われた物語なのだ、と思います。
・・・多分、私はデンデラで生き残れない。現代人には無理ですね(^_^;)。

(2010.01.05 読了)

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デンデラ(佐藤友哉)
いや〜迫力があった!登場するのは70歳を越えた老婆達ばかりだっていうのに、弱弱しさよりも、ずっとずっと強さを感じた。「強さ」と言うより「しぶとさ」かな。 ...続きを見る
Bookworm
2010/01/15 12:50

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
最初から最後まで老婆達の生への執着や力強さに圧倒されっぱなしでした。殺伐としてるのに、清々しさも感じないのに、夢中で読んでしまったんですよねぇ。
読後感は良くないのに、みょーな充実感を感じた1冊でした。なんだか不思議な感じです^^;
すずな
2010/01/15 12:55
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
そう、重た〜い読後感なのに、なぜか充実してましたよね。
読み切って、おぉう!と唸らされました。
現代に姥捨て山がなくてよかった・・・(^_^;)。
水無月・R
2010/01/16 00:53

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