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<<   作成日時 : 2010/02/26 22:58   >>

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本当の天才って・・・すごいけど、ここまで来ると全っ然、羨ましくないな・・・。
いつもの伊坂幸太郎さんの作風である、張り巡らされる緻密な伏線、そして見事に回収され収束するラスト・・・というのは、本作『あるキング』にはなかったな〜。まあ、伊坂さんご本人も、あとがきで雰囲気が違う小説って言ってらしたしね。
まあ、こういうのもありかな〜と思いつつ、主人公・山田王求は人生楽しかったのかしらん・・・と思わずにはいられない。

弱小球団・仙醍キングスの熱狂的なファンを両親に持った山田王求(おうく)は、仙醍キングス監督が死亡した夜に生まれた。両親は〈王(=仙醍キングス?)が求め、王に求められる〉という意味をもった〈王求〉という名を付け、野球選手とするべく、異常なまでの情熱を注ぐ。
そして、あっさりそれに応えていく王求。チームメイトや監督、対戦相手、プロ選手まで鼻白む程の圧倒的な実力、フォアボールや敬遠さえされなければ、打率9割という成績をたたき出してゆく。淡々と。
その中で、正気を失ったクラスメートの父に打球を当てて死なせてしまったり、中学で王求をいじめた上級生を父親が殺してしまったりと、不穏な事件が起こる。父の罪は高校1年生になった時発覚し、王求は高校を中退し、所属するチームを失って、個人的にトレーニングを重ねてゆく。
友人の名を借りて受けた、仙醍キングスのプロテストに合格(オーナーの肝入り)、驚異的な打率を誇りつつも、監督からは厭われ、相手チームからはフォアボールか敬遠ばかりかけられる。
そして、ある日、バッターボックスに立つ直前に、コーチに刺され。それでも、王求はホームランを打つ。

なんかね〜、可愛そうな位、いつも淡々としてるの、王求が。打って当たり前、野球するのが、そのためのトレーニングをするのが当たり前、自分の感情はない・・・って感じで、それが、かわいそうというか、なんとも恐ろしいと思った。
周りの人間が、あまりもスゴ過ぎる王求を疎ましく思う気持ちの方が、美しくはないけど、理解できる。

たびたび現れ、憐れむように、嘲笑うように、予言と宣言を与えてゆく、3人の黒づくめの女達。「おまえ」と語りかける見えない語り手。「君」と語りかけられている存在。時々現れては仙醍キングスユニフォーム・背番号〈5〉だけを見せてゆく男。
どれもが、王求が仙醍キングスにおける哀れなる〈王〉になること、そして〈王〉であることだけを、執拗なまでに指し示していく。
三人の黒づくめ女は、『マクベス』の魔女を示唆している、と思われる。揶揄するような、侮蔑するような、「おーく、多くを望むがいい」「おーく、それでも王になる方よ」というセリフは、王求を惑わせることが出来たのだろうか。あの女達が現れずとも、王求は仙醍キングスに行き、自分の運命を全うしたのではないだろうか。

仙醍キングスのために生まれ、仙醍キングスのために育てられ、仙醍キングスのために活躍し、そして、仙醍キングスのために死ぬ。自己犠牲とか、そういうレベルじゃないと思う。抜きん出ているが故に、己の中ではそれはただ平々凡々な出来事だと感じてしまう王求。
まっすぐ過ぎて、いびつで、哀れな男だと思う。物語としては、とても凄いことだと思うけれど・・・。
それでもやはり、王求の生き方は、正しくないって思ってしまう。王求は、きっと正しいとかそういうことは一切、考えないんだろうけど。
・・・それは、哀しい事なんじゃないだろうか。
そう思わせたことが、伊坂さんの勝利、なのかもしれない。

(2010.02.26 読了)

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タイトル (本文) ブログ名/日時
あるキング 伊坂幸太郎
あるキングクチコミを見る 弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた山田王求。 “王が求め、王に求められる”ようにと名づけられた一人の少年は、仙醍キングスに入団してチームを優勝に導く運命を背負い、野球選手になるべく育てられる。 期.... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2010/02/27 00:39
【あるキング】 伊坂幸太郎 著
「自分が読みたい物語を自由に書きたい」・・・  一日一回のポチッ、よろしくお願い致します [:next:] 人気blogランキング【あらすじ】弱小地方球団・仙醍キングスの熱烈なファンである両親のもとに生まれた王求。両親は彼を野球選手に育てるべく異常ともいえる情熱をそそぐ。すべては「王」になるために・・・と、伊坂幸太郎さんはおっしゃっているが、、、  確かにそう思う。自分が読みたいんであって、読者に読ませるものじゃないんだな、きっと残念ながら、オレには何を言いたいのかまったくわからなかった。  さ... ...続きを見る
じゅずじの旦那
2010/02/27 09:39
あるキング 伊坂幸太郎 徳間書店
ここまで面白くなさそうな人生を送っている男の話を 初めて読んだ(笑)もう、読んでいて、気の毒になるくらい しんどい人生・・・でも、彼は天才なのだ。 マクベスが題材になっているのだから、これは悲劇なんだろうけれど 段々、それがホラーのようになっていくところが、面白い。 ...続きを見る
おいしい本箱Diary
2010/02/28 01:59
あるキング(伊坂幸太郎)
今までの伊坂さんとはちょっと趣が違う、でも、あ〜伊坂さんだな、と思える作品でした。すんごく矛盾してるとは思うけど・・・。 ...続きを見る
Bookworm
2010/03/01 12:48
「あるキング」伊坂幸太郎
あるキングクチコミを見る ...続きを見る
本のある生活
2010/03/02 20:22
『あるキング』 by 伊坂幸太郎
『魔王』辺りからどうにも政治色・権力や集団への社会批判とも取られがちな作風を帯びてきていた伊坂作品。 万人受けするエンタメ性が減りよりシリアスな、深刻な問題提起を孕んだ主題に読者層、ファン層もコアなものになってきたそんな折、追い討ちをかけるようにこうした異色作を打ち出した勇気にまず感服した。 ...続きを見る
■空蝉草紙■
2010/04/15 17:37
天才の物語
小説「あるキング」を読みました。 ...続きを見る
笑う学生の生活
2010/05/09 18:01
あるキング / 伊坂幸太郎
うーん、これは伝記だ。 ...続きを見る
たかこの記憶領域
2010/09/28 21:26
「あるキング」伊坂幸太郎
伊坂幸太郎の「あるキング」を読んだ。 最初にはっきり言おう、これは駄作。    【送料無料】あるキング価格:1,260円(税込、送料別) 伊坂らしく、舞台は仙台。 弱小球団の楽天イーグルス、じゃなかった仙醍キングス。 そこで活躍すべく、キングスファンである両親… ...続きを見る
りゅうちゃん別館
2011/12/23 09:28

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コメント(15件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんわ。カキコありがとうございました。
私も、王求は幸せだったのかとそればかり考えていました。
可哀相としか思えなかったです。
王求にチャンスを与えたいと思いつつ、それでも近くにこういう人がいたら嫌だろうなとも思ったり。
語り手の正体はこう来るとは思いませんでした。
王求は全てから解き放たれて、自由になれたんでしょうか・・・
苗坊
2010/02/27 00:41
こんにちは!
王求は純情すぎたのでしょうか。
それとも裸の王様だったのでしょうか。
やはり勝ちすぎ、強すぎはよくないですね(^^ゞ
じゅずじ
2010/02/27 09:44
>苗坊さん。
王求に対する思いは、物語の中の人々もそれぞれでしたよね。
何だか、王求は死後すらも、淡々と野球をしそうで・・・。真の天才に対して、哀れを感じるのは失礼かもしれないんですけどね〜。
色々なしがらみや感情を捨てて、幸せになっても強いですよね。

>じゅずじさん。
勝ちすぎると、称賛されつつも、疎まれる。
確かにこんな人がいたら、どんなにできる人でも自分に希望を持てなくなっちゃいそうですもんね・・・。
水無月・R
2010/02/27 23:49
こんばんは♪
そうなんですよねえ。どうも、王求の人生は幸せとは思えない。多くの才能を持っていることは、より多くの大変な事を抱えてしまう事だとは思うんです。この物語の中で、その彼を理解し、彼に「ありがとう」という人が誰もいなかったのが辛いんですよね。彼の努力は報われなかったのかもしれない・・それが辛い。人の心というものが、彼の一番の敵だったのかもしれませんね。
ただ、王求は、野球が好きだった。そこを貫いた彼の生き方は、やっぱり美しかったと私は思います(^◇^)
ERI
2010/02/28 02:09
ERIさん、ありがとうございます(^^)。
〈王〉だから、誰からも感謝されない、王であることの孤独。
王求は、人から愛される事や自分の感情よりも、王であることを優先した・・・ということなんでしょうね。
本人は、満足だったのかもしれない・・・。
水無月・R
2010/02/28 23:41
王求は幸せだったのか・・って考えちゃいますよね。野球が好きで野球のためだけに生きてきたような王求が、自分が野球をつまらなくしてるんじゃないかと考えるのが、どうにも切なかったです。
june
2010/03/02 20:22
juneさん、ありがとうございます(^^)。
完璧すぎる才能は、それ故に忌避されてしまう・・・。
とても悲しいことだと思いました。
それでも、淡々と野球を続けていた王求の様子は、切なかったですね。
水無月・R
2010/03/02 23:10
最初から最後まで「王求は野球が楽しいんだろうか?好きなんだろうか?」と思いながら読みました。なんというか、「これが天才として生まれてしまった故の運命」とは割り切れないモヤモヤの残る作品でした。
すずな
2010/03/06 10:42
>すずなさん、ありがとうございます(^^)。
どうしても、王求がかわいそうで仕方ないのです。
ただ淡々と野球を追及する姿が、(野球ではなく)生きることに喜びを感じていたとは思えないのですね。
スッキリするより、なんとなく引っかかりを感じてしまう物語でした。
水無月・R
2010/03/06 23:29
こんにちは、お久しぶりです〜!
トラバありがとうございました。
この物語は・・・色々な意味で伊坂氏の朝鮮だと思います。どうしても伊坂節が恋しい私としてはなんとも評価のしがたい作品でしたが・・・
むしろ読者が試されているような(笑)

ずいぶん前に読んだ作品ですが、ずっとUPを忘れておりました;; 怠慢ですね;;
王様に怒られないうちにUPしました(^_^;)
空蝉
2010/04/15 17:37
空蝉さん、こんばんは(^^)。
今までの伊坂節がなくて、ちょっと異色でしたね〜。
確かに、読者が試されてるのかも(笑)。
いや多分、王様は怒らないですよ(^_^;)。
王さまは、野球のことだけ・・・ですから。
水無月・R
2010/04/15 22:45
水無月・Rさん こんばんは。
そうですね、王求それでいいの?って疑問をもたせるのが狙いだったのかな、と思うと伊坂さんの勝ちのような気がします。
いつもの伏線がなく、ちょっと残念でしたが、違う見方をすればこれもアリなのかもしれませんね。
たかこ
2010/09/28 22:40
たかこさん、ありがとうございます(^^)。
王求が、あまりにも淡々と野球を受け入れ、こなしていく姿が、哀れでした。
超越した人間の哀しさ、異様さを印象付けるという意味では、伊坂さんの勝ちだったのかもしれないんですけどねぇ。
水無月・R
2010/09/30 12:02
この話に、王求が幸せだったか不幸だったかなんて考えは一切必要ないと思います。
それが、本の意思だと感じました。
その淡々としていて動じないのが王求の強さではないのですか?
だから、哀れだとも思いません。王求は強い、素晴らしい選手だと思うだけでした。
自分の人生を一つのことにぶつける姿は美しいものです。
スポーツ選手やアイドルを応援する時に、何を感じますか?
情熱であったり愛しさであったり、どうにか頑張ってほしいと思いますよね?
哀れなんてことは多少は感じても、それがすべてではありません。それに、選手やアイドルはそれ以上に答えてくれます。
また、王求にもそれを感じました。選手を応援している気持ちで読みました。
淡々と冷たい文章の中に、燃え滾る様々な人の想いが詰まっている、そこが面白い所なのでは?
みな
2012/12/16 16:20
みなさん、コメントありがとうございます。
そうですねぇ…、私は、考えてしまったのですよ。才能のない凡人と、すべてを超越した才能を持つ天才を、同じ物差しで測るのは、おかしいのかもしれないんですが。
王求は、ファンのため、自分のため、淡々と自分を高めていった、それは事実だと思います。
一つの作品に対して、いろいろな考え方があると思って、私の記事も許容していただければ、と思います。
水無月・R
2012/12/16 22:07

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