蒼のほとりで書に溺れ。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『女中譚』/中島京子 ○

<<   作成日時 : 2010/02/20 23:57   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 1 / コメント 2

実は元ネタになる作品をよく知らなかったりするんですが、中島京子さんの〈本歌取り〉小説、面白かったですよ〜。
タイトル『女中譚』そのまんまの、女中の物語。
そっか〜女中と言えば、メイドなわけで、メイドと言えば秋葉原ですよね。(←何かチガウ)そんな秋葉原で、昔女中(メイド)だった老婆が、今のメイド(メイド喫茶のお姉さん)たちに語る「あの頃のちょっとスレた女中(メイド)の物語」。

「ヒモの手紙」
元ネタは林芙美子『女中の手紙』。秋葉原のメイド喫茶に入り浸る老女・おすみ。彼女は過去、カフェーの女給していた時、隣に転がり込んできたろくでなし男・信作の代わりに、千代という女に金をねだる手紙を書いてやっていた。千代は自分が信作に騙されていることにも気付かず、執拗なまでに新作への愛に縋っていた。その愚かさに苛立ちを隠せなかった、すみ。
「すみの話」
元ネタは吉屋信子『たまの話』。女給から、奥様がドイツ人である伊牟田家の女中になった、すみ。ハーフのお嬢様・萬里子は以前の女中・たまを慕っていたが、奥様はたまと萬里子が会わぬよう、すみを使いにやる。過去、たまは萬里子と危うい関係にあり、すみはある晩萬里子にその関係をけしかけられる。
「文士のはなし」
元ネタは永井荷風『女中のはなし』。おかしな作家の家の女中になった、すみ。主人の居ぬ間に浅草の踊りの稽古に出かけ、ある日作家の家から出奔する。後に作家が書いた小説にすみをモデルにしたらしき「女中」の事が描かれ、すみは作家のもとを訪れる。

昭和初期の蓮っ葉な雰囲気が案外、現代に通じるんだなぁ・・・と、驚きました。て言うか、昭和初期はもっとお淑やかな時代だと思っていました、なんとなく。だけど考えてみれば、どんな時代にも猥雑な場所があり、スレた男女はいるんですよねぇ。「ヒモの手紙」の信作なんてかなり酷い男だけど、そうやって女から吸い取る奴は現代でもゴロゴロいるし、下手するともっと巧妙に酷かったりするもんねぇ・・・。

女中→メイドつながりで、秋葉原のメイド喫茶、というのも、変な取り合わせのようでいて、しっくりくる。ハタチ前後のメイドのりほっちが、同じアパートに住むおすみと友達だというのも、面白い。すみは秋葉原の歩行者天国で、パフォーマンスをする娘たちや、メイド喫茶の宣伝で路上で立ったり座ったりするだけの娘たちにも、疑問を抱きつつも全く否定しない。そこが面白い。

おすみばあさんのカラッとした語り口がいい。もちろん女中・女給時代のしたたかさも、冴えている。いい加減で、飽きっぽくて、自分の欲に忠実。だけど、落ちぶれた元の勤め先の奥様に食糧を分けてやったりする情も、持っている。おすみさんは、自分に素直で、自由奔放に生きてきた。だからこそのこのスカッとした展開なんだなぁ・・・と思います。

そのスカッとした展開の最後の章は、あの「秋葉原事件」のさなかにおすみが回想していたこと。彼女は事件に巻き込まれたわけではないけど、その事件の片隅で蹲ってしまった。・・・なかなかに、象徴的だと思います。

(2010.02.20 読了)

女中譚
楽天ブックス
中島京子朝日新聞出版この著者の新着メールを登録する発行年月:2009年08月登録情報サイズ:単行本ペ


楽天市場 by ウェブリブログ商品ポータルで情報を見る



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(1件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
女中譚(中島京子)
うーむ、やっぱりこの作家さんはびみょーだなぁ。合うのと合わないのがある。「ダメ。もう全然ダメ。」って訳じゃないんだけど、なんだかどうもシックリこないなーって感じのものがあったかと思えば、楽しめる作品がポツポツあったり。でも、この作家さんのタイトルには惹かれちゃうんだよね(笑)なので、「今度は大丈夫かな?」とか思って、つい手に取っちゃう。で、今回はちゃんと読了したけど、途中で挫折したものも数作あったりするのです;;; ...続きを見る
Bookworm
2010/05/27 12:51

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
水無月・Rさんが書いてらっしゃるように、昭和初期にお話なのに、現代に通じるものがありましたね。
すみのしたたかな生き方を読んだ後に、ラストの秋葉原で蹲るシーンはとっても印象的でした。
すずな
2010/05/28 12:56
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
昭和初期というと、文学少女的な口調で・・・みたいなイメージだったんですけど、通じるものですねぇ(笑)。
ラストシーンには、未だに胸を突かれる気がします。あの惨状を視界の端にとらえつつ、蹲る老婆・・・。
水無月・R
2010/05/29 00:01

コメントする help

ニックネーム
本 文
『女中譚』/中島京子 ○ 蒼のほとりで書に溺れ。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる