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zoom RSS 『蒼空時雨』/綾崎隼 ○

<<   作成日時 : 2010/03/08 22:36   >>

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昨年12月創刊したメディアワークス文庫のラインナップの中で、結構気になっていた綾崎隼さんの『蒼空時雨』
なんでも「第16回電撃小説大賞」の選考委員奨励賞を受賞した作品だということです。
おお〜、正統派恋愛小説、って感じだなぁ〜!・・・萌え叫ばない恋愛小説は、久しぶりだ(笑)。

25歳前後の男女がそれぞれの思いを胸に抱き、過去にとらわれたり、互いに遠慮したりしながら、・・・それでも自らの思いをしっかりと見つめ自分の恋を得て歩き出す。
25歳という年齢すらかなり過去になりつつある水無月・Rでありますが、それでもこの恋心の苦しさには、とても心を打たれました。
まっすぐに自分の恋心に向き合えない、屈折した心と過去を持つ、5人の男女。何も言わなかったから、育たなかった関係。少しの間、語らなかった真実。こじれてゆく想い。そして、解かれて繋がる想い。
――― それらの恋は、いつも雨に包まれていた。

美しかったり、悲しかったり、寂しかったり、温かかったりする、様々な思いが、交錯する。言えなかったこと、言わなかったこと、ついてしまった嘘、知ろうとしなかったこと、お互いを慈しんだこと。
6つの章それぞれ語り手が変わり、別の角度から関係性を読むことができる。・・・ちょっと読みにくかった部分もあるけど。

第一話「ヤコブの梯子で雨宿り」舞原零央・前編
雨の降る夜、部屋の前で倒れていた女を拾ってやった男。
第二話「雨、ときどき嘘」譲原紗矢・前編
倒れていた本当の訳。誤解と真実。
第三話「哀しい雨には濡れないで」楠木風夏
夫が姿を消した。双子の姉がそれに関わっているのか。
第四話「日の照りながら雨の降る」朽月夏音
子供のころから大好きだった人。喪った今でも、愛している。
第五話「君の隣なら雨宿り」舞原零央・後編
自分を好きだったと言ってくれた女、自分も好きだった。
最終話「雨がくれたもの」譲原紗矢・後編
本当に愛している人は。

実を言うと、第三話の半ばあたりでちょっと飽きて来ていた。第一・二話と確かに登場人物は重なるけど、関係ないし。紗矢と朱利がどうなってしまうのか、気が急いてしまって、イライラし通しだったなぁ。風夏とその夫の間にあるゴカイを、そうなるように仕掛けていた風夏の双子の姉・夏音には怒りすら覚えていた。
でも第四話、夏音の物語はそこから気持ちを切り離して読めるほど、悲しいくらい美しかった。紗矢と朱利の物語への焦りを一時忘れてしまうほど。僅か5歳で出会ってしまった運命の人・義理の兄・稜のために、一卵性双子の妹とは全く違う性格を築きあげ、隠すためなら何もかもを犠牲にして、ただひたすら愛してきた。そして、稜が逝った後、稜からの手紙が届き続ける。
〜〜この愛はまだ、続いていくことを許されていた。〜〜 (本文より引用)
一度失ったものほど、大切に思える。本当にそうなんだな。冷たい人だと思っていた夏音の、誰にも知られたくない・知られるつもりのない思いを、読者だからこそ知ることが出来た。読めてよかったと思う。

零央以外の登場人物が皆、幸せになる。零央だって、恋愛は成就しなかったけれど、自分の周りにいる人たちの優しさや温かさを再確認する幸せを得ている。
ハッピーエンドはいいね、本当に!
多分、私にはこんなに体力や精神力の要りそうな恋愛は出来ないけど。25歳に戻っても、きっと(笑)。

ただな〜、気になったのは、どんなに「警察は呼ばないで」って言われても、素性のわからない女を部屋へ上げてしまうのはどうなんでしょう、今時の防犯事情としては・・・。いきなり警察呼ばなくても、救急車は呼ぶべきじゃないかなぁ。大丈夫・・・て言われたら、ほっとくしかないような気がする。家に上げてくれと言われても私だったら入れないなぁ・・男女の差かしらん。しかも、その後居座られても、事情を聞かない、というのはかなり不思議です。上がりこむ紗矢の方は、かなりの覚悟があったわけだけど・・・ねぇ。

それと、零央・朱利・風夏・夏音が、地元を離れて東京へ進学や転勤をしても綿密な中が続いている、というのがすごいと思う。特に零央と朱利が同じアパートに住んでるというのは・・・ちょっとヘンかなぁと。零央なんて、東日本有数の名家のお坊っちゃまなんだから、探偵事務所で生計成り立たなくて親のカードで暮らしてるという状況なら、アパート暮らしってのは可笑しいんじゃないかと思ったりする。まあ、余計なお世話ですが。

多少ツッコミ処や、語られてない部分への疑問が残らなくはないけれど、新人作家さんの描く恋愛小説としては、かなりレベルが高いんじゃないでしょうか。・・・て、なんで私、こんなに偉そうなことを言ってるんだろう。
それぞれの物語に張られた伏線がきちんと回収されてる事や、登場人物たちそれぞれの事情も自然な形で描かれていること、優しい気持ちで読み続けられること。とても素敵な物語だったと思います。

少しセンチメンタルで、弱気なあの若者たちを包む雨が、いつまでも優しいものでありますように。
雨が降っても、止んで晴れた空が広がっても。雨の記憶が、雨が運んで繋ぎ合った気持が温かく続きますように。
そんな、祈りにも似た想いで、本を閉じました。

(2010.03.07 読了)

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蒼空時雨(綾崎隼)
第16回電撃小説大賞選考委員奨励賞受賞作。 ...続きを見る
Bookworm
2011/04/19 12:27

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
水無月・Rさんこんにちは〜やぎっちょです。
自分のブログのコメントがもはや巣窟と化してしまったので、コメントレスしに伺いました。どんどんブログを書く時間がなくなってしまって、なんとかつないでいる状況です。。。せっかくいろいろと残してくださっているのに申し訳ございませんです。
この本、やぎっちょとしましては結構ヒットだったんですよ。買ったのは完全ジャケ買いなんだけどぉ・・・。
確かに3章4章はちょっと間のび感がありましたね。早く結末(とその間のドラマ)を知りたかったのにな、っていうのは思いました。
でも久々に分かりやすい恋愛ドラマ読めて満足なのでございまする。。。
やぎっちょ
2010/04/22 11:17
やぎっちょさん、ありがとうございます(^^)。
お忙しいのですね・・・。
私のコメントに関しては、ホントお気になさらず(#^.^#)。
正統派恋愛小説、ハッピーエンド、とっても良かったです。
この作品がデビュー作、これから先が楽しみですよね♪
水無月・R
2010/04/22 22:47
とにかく夏音のお話が良かったです〜。思わず涙腺が緩んでしまいました。
私も最初の章で「すんなり泊めるかー!?」と思ってしまって…。確かに紗矢は必死だったんだろうけど、違和感を感じまくりでした。なので、紗矢は最後までイマイチ好きになれなかったんですよねー。主役カップルなのに^^;
すずな
2011/04/19 12:34
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
夏音の話、よかったですよねぇ!
それに比べると、紗矢の話は持っていき方がちょっと強引だったかな・・・という気も(^_^;)。
でも、いい物語でしたね♪
水無月・R
2011/04/19 21:06

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