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zoom RSS 『深山に棲む声』/森谷明子 ○

<<   作成日時 : 2010/04/12 22:06   >>

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今までも、美しい矜持や、ほほえましい事件、壮大な歴史など、様々な舞台で物語を繰り広げてくれた、森谷明子さん。
今回も、「物語」を操り、深山とそこに棲む人々を守る、複雑に織り上げられた世界を見せてくれました。

冒頭に、「ロシア民話より」として、日本にもある、知恵者がやまんばに追いかけられる物語の要約があり、この『深山に棲む声』も、原型はそこから来ているんだけど、そんな枠はすぐに飛び越えて、独自の物語が展開していく。
かつて、都から貴人の子を連れて深山に逃げてきたと思われる女・ババ。ババに閉じ込められている少年。ババに協力する男・オシヲ。山で迷い、ババに捕らえられたイヒカは、少年と心を通わせ合う。必ず、救いに来ると約束したイヒカだったが・・・。

深山(みやま)と呼ばれ、ある国では〈神の住む聖地〉、ある土地では〈怪物の住む恐ろしい地〉として人里から切り離されている山で、秘かに勢力を付けてゆく一団。
その指導者的存在の女・ババ。ババが大切に育て、仕えるテルヒ。
北国の御曹司、東国の富裕な商家の娘、南国の山育ちの女、西国の奇術師の弟子だった少年・・・他にもさまざまな人間が深山に入り、その山や住む人々のありように魅せられ、集まり暮らしている。

どこの国の話なのか明らかではないし、時代もよくわからない。現実に沿った物語なのか、虚構の世界の物語なのか、それも分からない。だが、どこか懐かしい感じもするし、なんとなく設定に日本的な気配が漂う。
最初の4章ではカタカナだったが人々の名前は、5・6章で漢字を与えられ、ますます世界は、帝の権威が形骸化して、都の平安が乱されていた時代・・・を思わせるものになってくる。
だが、それを特定しなくてもよいと思う。
〈昔話を真に受けるものではない〉・・・のだから。

真実を隠すのは小さな嘘、そしてそれ以外は曖昧に・・・、実在する固有の事実を普遍化させ、どこにでもあることに・・・。物語を操る深山の人々は、それぞれに数奇な運命で集まり、統率力のある頭領の元で生きていく力を常に磨きあげて行った。
深山から目を逸らさせたり、恐れさせたり、実際の出来ごとを普遍的な噂話にすり替えたり。いわゆる「情報操作」なわけだ。そのやり方は、かなり巧妙で、唸らされる。

金が出たことで深山は変わるのか、或いは皇統の話はどうなるのか、オシヲとババが喪った命のこと、色々とあるけれど、先はどうなるのか・・・というところで物語は幕を閉じる。
その先は、物語は深山を超えるだろうし、昔話として操れるものではなくなるだろうから。

(2010.04.07 読了)

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