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zoom RSS 『Nのために』/湊かなえ ○

<<   作成日時 : 2010/06/11 23:55   >>

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あの日、あの時、或いは過去のどこかで。それぞれが、それぞれの大切に思う『Nのために』、語らなかった真実がある。

アレ・・・?なんか、段々毒っ気が薄くなってきた気が・・・。今回の物語の中心が、悪意の連鎖ではないからでしょうか、湊かなえさん。
それと、まずは事件ありき、で殺人事件があって、その後事件の関係者の独白、という流れがちょっと手慣れ過ぎていて、パターン化してないかしらん?という気もします。
とはいえ、今回もやっぱり〈物語の造り〉は本当に、上手いんですよね〜。複雑にいろんな物事が絡まり合って、時が流れ、十年後当時を振り返って、彼らは思うのだ。
「Nのために」、と。

台風の晩、床上浸水したぼろアパート〈野バラ荘〉で、杉下希美・安藤望・西崎真人達は知り合った。
仲良くなった安藤と杉下は、たまたま旅行先で、安藤の4月からの上司・野口夫妻と知り合い、将棋を通じて仲良くなって行った。
そしてある日、高級料理店の出張サービスで食事会をと集まった彼らの中に、野口夫妻の殺害、という事態が投げ込まれる。
杉下・安藤・西崎、そして杉下の幼馴染で料理店のサービス者である・成瀬慎司。
彼らは、野口夫妻の死に、どのように関わったのか・・・。

新聞の三面記事にでもありそうな、ありふれた不倫の果ての殺人事件、のはずだった。
殺人を犯した者はその場でおとなしく捕らえられ、素直に十年の刑期を過ごした。
十年たって、彼らは「あの事件は、なんだったのだろう」と思い返す。
「あの時、一番大切だったNのために、自分を犠牲にしてもいいと、行動した。きっと、あの場にいた誰もが、そうしたのだ」と。

どんなに俗な事件でも、実はこんな深い裏があるのかもしれないなぁ・・・。
それぞれの事情、それぞれの理由、それぞれの思惑で動いて語ったこと、絡み合って事件の秘密は深くなる。
最初は、〈N〉とは4人に共通する一人の人物をさすのだと思っていたのだが、それは違った。それぞれが、別の〈N〉のために行動した結果、事件は齟齬なく片付いてしまった。
だが、その各人の〈N〉すら、複数だったのではないだろうか。一番大切な〈N〉。深いシンパシーを感じていた〈N〉。心の平安を得た〈N〉という場所。理解し理解されてると思っていたのに違った、けれど愛おしい〈N〉。
〈N〉という、平凡でいて何か意味深そうな、絶妙なイニシャル選択が、読み終わってから妙に、ストンとおさまりました。
これが〈T〉や〈O〉や〈X〉では、タイトルとしてインパクトがなかったかも。

杉下・安藤・西崎・成瀬、それぞれ過去に悲しい経験があり、成瀬以外の3人が野バラ荘に住んで知り合った、という設定はちょっと無理やり感がなくもないかな〜。特に杉下と安藤は場所は違うけど小さな島出身、という共通点があるのも・・・、どうだろう。勿論それがあるからこそ、2人は『田舎度』の張り合いで仲良くなったんだけど。

最初、勝手に安藤は女だと思っていました・・・。安藤の独白が始まって、「俺」という人称で語り始めて、やっと気がつきました。あんまり杉下と安藤が仲良いので、絶対同性だと思ってたんですよね〜。コレは、全然ストーリーに関係のない、私の思い込みなんですが(笑)。

元々、杉下と西崎が目論んでいたのは、〈野ばら荘〉の存続。そのための深謀遠慮で野口夫妻との出会いがあり、そして西崎も野口夫人・奈央子と知り合い、彼女の置かれた状況と自分の過去を重ねて彼女を救いたいと思う。そして、島にいた高校生時代に杉下を大事に思い、彼女のおかげで危機を脱したと思っている成瀬は、杉下に頼まれて西崎の計画に加担する。
安藤は杉下に〈世界の果て〉を見せてやりたい、と野口との将棋勝負に挑もうとし。
計画通りに運ぶはずだった展開は、いつの間にか野口夫妻の死という、最悪の事態でシャットダウンされる。

十年後の、それぞれの語りは、哀しく澄んでいる。
それぞれ自分の行動を、後悔することなく、淡々と回顧する、その語りは。
Nのために。 ただ、Nのために。
狂信的なものを全く含まず、ささやかな祈りににも似た響きを、持っていた。

(2010.06.10 読了)


Nのために
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Nのために(湊かなえ)
衝撃のデビュー作「告白」から4作目。 実は、タイミングが合わなくって3作目の「贖罪」は未読なのです。もう少ししたら読めるかな。 ...続きを見る
Bookworm
2010/06/14 12:35
Nのために / 湊かなえ
あらら、だんだん毒が薄くなっていくような…。読後感の悪さがとびぬけているのが湊さんのすごいところ、と思っているだけに今回はわりとあっさり読めてしまった。 ...続きを見る
たかこの記憶領域
2010/06/22 20:13
それぞれのN
小説「Nのために」を読みました。 ...続きを見る
笑う学生の生活
2010/11/07 15:32

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
いけないと思いつつ、どうしても「告白」と比べてしまうので、衝撃とか、展開とかに物足りなさを感じてしまいます;;;
でも、気持ちをぐっと掴んで離さず、つい一気読みしちゃったんですけどね〜^^;
あ。私も安藤は最初、女だと思ってました!
すずな
2010/06/14 12:50
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
警察での供述では、安藤は「私」と言ってたので、どちらともとれるからまあいいのか?・・・と後で思いました(笑)。
やっぱり『告白』のインパクトを超えるのはなかなか・・・。
でも本当に「物語の造り」は、上手いと思います。
十年後に振り返る、あのとき隠していた真実を語りだす彼らの〈N〉への思いの深さ。胸に沁みました。
水無月・R
2010/06/14 23:44

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