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zoom RSS 『それからはスープのことばかり考えて暮らした』/吉田篤弘 ○

<<   作成日時 : 2010/07/28 23:33   >>

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この作品、以前吉田篤弘さんの『百鼠』を読んだときに、イマイチ私には合わないなぁ〜というレビューを書いたんですが、その時に雪女さんという方からコメントで「別の作品でいいのがありますよ」と教えて頂いたので、「読みたい本リスト」入りしてました。
『それからはスープのことばかり考えて暮らした』という長いタイトルが印象的です。

仕事をやめ、住まいも変えた僕(オーリィ君)は、新しく住む街をゆく人たちが皆「3」と書いた紙袋を大事に抱えて歩いて行くのを見て、大家さんに尋ねると「おいしいサンドイッチ屋さんなのよ」と教えられる。
古い映画の大好きな僕は、そのサンドイッチを買って映画館へ向かう。僕の見るのは、とある女優(主役ではなくどちらかというと端役)が出てくる映画ばかりなのだが、その映画を見に行くと、ときどき出会う老婦人がいる。
サンドイッチ屋「トロワ」(フランス語で「3」)に通い詰めるうち、そこの小学校4年生の息子と知り合いになったり、トロワにスカウトされたりして、緩やかに日常が過ぎて行く。
あちこちの映画館で出会う老婦人は、あの女優ではないのか。トロワで新しくスープを売りに出そうかということになり、試作品を作っては、大家のマダムやトロワのオーナーやその息子に試食をしてもらう日々。
老婦人と知り合いになり、特製スープのレシピを教えてもらい、それにいくらかの独自の改良を加え、素晴らしいスープが完成する。

主人公・オーリィ君も、周りの登場人物たちも、街の人たちも、映画館のポップコーン売りの青年も、皆が心優しくて、健気に生きている感じが、ちょっとむずがゆかったりする(笑)。
イヤ、私自身がもう、人として純粋じゃなくなってるんだなぁ、ということなんですけどねぇ。

あのひとは憧れの女優なんだろうか、きっとそうなのだろうと思いつつ、直接聞くことはしないオーリィ君。
サンドイッチ屋の息子・リツ君が家出して来て自分の部屋に転がり込んで来ても、鷹揚に受け入れるオーリィ君。
教会へ密やかに通うトロワのオーナーと、それと知らず同じく教会の近辺に出没するリツ君。
映画館で、スープをすすったり、口笛を吹いたりするあおいさん。
フランス映画のマダムのような、大家さん。
支配人が失踪し、他の従業員もいなくなった映画館を一人で切り盛りする、ポップコーン売りの青年。
色々な人が、密やかに、温かく繋がりながら、緩やかに穏やかに流れて行く、何気ない日常。
その中に、ちょっとだけ優しい、温かい事が起こる。

ラストで「オーリィ君の作ったスープが飲みたいわ」と、あおいさんに言われた、オーリィ君。
きっと、これから完成したスープに安定性とさらなる改良を求めて、オーリィ君はスープのことばかり考えながら暮らしていくんだろうなぁ。
その中のスパイスとして、あおいさんのことやトロワのサンドイッチのことや、大家のマダムや映画館の青年たちとのかかわりがあり、更に素晴らしいスープに仕上がっていくんだろうと思います。

そんな、優しい物語でした。
ただ・・・先述しましたように、人として純粋性を失っちゃった私には、「ファンタジーだなぁ〜」って感じてしまうんですよね(笑)。
いえ、だからこそ、優しさが際立つというか。
ラストの「名なしのスープの作り方」、レシピかと思ったらスープ作りの心構えでした。
どうだろう、これの通りに作ったら、おいしいスープが出来るかしらん。

(2010.07.27 読了)

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
まずは読了お疲れさまでした(^^ゞ
そうですね、確かにファンタジーぽいです。それも他に比べると薄いくらい(笑) 私は逆にスレてしまったからこそふわキラしたファンタジックなものに弱いのかも知れません。
読んでいくうちに架空の町が住んでいる人ごとぽこんと出現する感じが、個人的には好きです。でも好き嫌い分かれるのもわかるなあ、とも思います(笑)
ラストのスープのレシピは「人生は楽しんでこそ美味しい」てことなのかな?と勝手に解釈しました。雰囲気で読んで雰囲気で解釈してお恥ずかしい限りですが(汗)
読んでいただけて、感想も聞かせてもらえて嬉しかったです。ありがとうございました。自分と違う視点でなるほど!と思うこと多々です。
(ちなみに今「武士道セブンティーン」まで読みました。面白いです!「エイティーン」が楽しみですw)
雪女
2010/07/30 21:00
雪女さん、ありがとうございます(^^)。
うわ〜、そうなんですね。他の作品はもっとファンタジックなんですね〜。
読みたい本リストがなかなか進まないんですが、楽しみにしてます♪
スープのレシピ、人生の味わい方ってとらえられるんですね!ナルホドです!

武士道シリーズ、いいですよネ。『エイティーン』楽しんでくださいね♪
水無月・R
2010/07/30 23:54

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