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zoom RSS 『コロヨシ!!』/三崎亜記 ◎

<<   作成日時 : 2010/09/09 20:43   >>

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せ・・・設定ノート見せて下さい三崎さんッ!
って、毎っ回、三崎亜記さんの作品の時言ってますね、私(笑)。
本作『コロヨシ!!』も、「三崎さんの描くこの世界の仕組みはどうなっているんだろう・・・?」という謎を、一生懸命追っていましたからねぇ〜。

だって、すごいんだもの。
私たちの生活する現実の世界とは全く違う、だが確固とした世界が、物語に存在している。
しんみりするような出来事も、うぷぷと笑ってしまうような出来事も、その世界には矛盾なく存在する。様々な人たちが、色々な事を想い、それぞれ行動し、それが世界を構成している。
だから、『失われた町』『刻まれない明日』のように、静かに物悲しい物語も、この『コロヨシ!!』のような青春スポーツ奮闘物語も、どちらも同じ世界にある。
それが、すごいと思うんですよねぇ。

三崎さんの作品群は、どうも同じ世界の色々な出来事を少しずつ描いているようなんだけど、全貌はまだまだ深い霧の中。
〈西域〉〈居留地〉〈あの戦争〉・・・様々なキーワードで、少しずつ見えてくるものもあるのだけど。

〈あの戦争〉で敗者となった「この国」は、戦後に十年間の〈暫定統治〉を受け、その後30年を経ている。スポーツとしての〈掃除〉は、「旧国技」と共に「活動禁止スポーツ」に指定され、高校生だけに許されるスポーツとしてのみ、存在することになった。
そんな、いかにもいわくありげなスポーツに励む高校生・樹は、両親には掃除をしていることを内緒にしている。だが、才能ある彼は2年生の夏の大会で、州大会に進むことになり、そこで州政府直轄校と対戦し、実力の差に愕然とする。
茫洋として一本ズレている「掃除知らず」の顧問からの意味のわからない特訓や、〈異邦郭〉に関わりある後輩・偲(しの)との練習、幼馴染にして生まれながらの支配者的お嬢様・梨奈の策略、部活の先輩や関わる協力者たちの影響を受け、樹は成長してゆく。
そして冬の州大会で上位入賞を果たし、全国大会へと進出。だが、全国大会当日の朝に「新たな国技の最有力候補は〈掃除〉」と発表があり、マイナースポーツの大会だったはずの会場は一転して、報道関係者がごった返す場所になっていた。
しかも樹はそこで、掃除の審判者である〈裁定士〉から、意外な事実と一連の出来事の意味を知らされる。
打ちのめされる樹。だが、彼は立ちあがり、偲とともに会場へ向かう。
自分の〈掃除〉をする為に。これからの〈掃除〉を切り開くために。

「この国」の歴史の暗部、〈居留地〉や〈異邦郭〉の謎めいたエキゾチックさ、今までの三崎作品に流れる静謐な物悲しさを踏まえながら、「少年少女の成長」や「スポーツにかける情熱」という躍動的な物語が広がっていくのが楽しい。
現実の「掃除」といえば「毎日毎日ずっと終わることなく繰り返され、主婦を悩ませるもの(笑)」なんですが、この物語では何と「西域の武術に端を発し、八百年前にこの国へ伝播し、独自の発展をしたスポーツ」なのである。
長物と呼ばれる棒を手に、塵芥という小さな羽根のようなものを多数巻き上げ、軽やかに舞いながら見せ場を作り、最終的にその塵芥を腰に付けた寄せ袋に収め、その美しさを競う。
勿論様々な制約があり、その定型の中でどれだけ的確に塵芥を操れるか、美しく舞えるかが裁定される。
武道のような、舞踊のような、今までに見たことのないスポーツなのに、三崎さんの文章によって目の前に立ちあがって来る、その動きの力強さと美しさと言ったら。
現実のスポーツ全般に全く興味のない私にも、見えてくるのだから、すごい。
複点視認という技術も、宙を舞いながら乱れ飛ぶ塵芥の動きを計算しコントロールするという理屈も、どう考えても私には無理なんですが(笑)。

「掃除」に対するちょっと屈折した思いを抱いてはいるものの、普通の高校生である樹、部活の仲間たち、親友でもあり「掃除部の助っ人」でもあるスポーツ万能の大介、〈居留地〉流の掃除を身につけている不思議な後輩・偲、それぞれの若者たちの成長も清々しいし、スポーツに掛ける深い思いに、ちょっとくすぐったくもなる。
「掃除知らず顧問」寺西の、わざとらしいボケっぷりも面白いし、掃除部の周りににいて影響を与えたりする大人達・ハンドルマスターのWF(ダブレフ)や西域で掃除を続ける黒木先輩もカッコいい。
そして、国防省国家保安局の管理官・池田の慇懃な態度や、樹の幼馴染・梨奈の父の不気味な存在感、「掃除」に関わる人々が何かを隠している様子、しかもそれはこの国の在り方にすら関わるものではないかという疑惑。不穏なものも纏わりついてくる。

色々な状態を内包して、物語が進み、全国大会直前に樹に知らされる、真相。
「掃除が新しい国技となるための話題提供として、直轄校ではなく一般校の生徒の優勝」が必要だということ。そして、新生国技としての「掃除」に華を添えるために、様々な特訓や色々な文化に触れてきたこと。仕組まれたスターになるべく、ここまで連れてこられたこと。
ここで、「ふざけるな!」と踵を返して退場することもできた。
だけど、樹はそうしなかった。
樹は、自分の掃除を、見極めたかったから。

おお〜。少年成長物語の王道です。出会った少女との、恋愛や友情を超えた連帯感や成長への相乗効果とかも、王道だ〜。でも、ちっとも陳腐に思えない。
樹のおじいちゃんはどうしたのか、とか気になることはいっぱいあるけど、なんとなく続編じゃなくても別の作品で別の形で語られるんじゃないかな〜、と思います。最後に梨奈の父から受け取ったカードキーも、そこで活かされるんじゃないかしらん。
掃除部の過去の物語も、ネタ振りはあちこちされてるんで、番外編とか出ないかな〜と期待してます!

結構分厚い本だったのに、ワクワク感ですごいスピードで読んでしまいました。
現実の「掃除」は主婦としての私の仕事ですが、スポーツの〈掃除〉は、一度見てみたいなぁ。軽やかに舞いあがる塵芥を、技巧を凝らして打ち広げ、操り、自らの舞いと共に一体化し、そして美しく収める。どんなにか、心躍る光景だろう。
異邦郭にも行ってみたいし、P/Tでハンドルマスターの操る音に身をゆだねる客賓(マロード)にもなってみたい。
もちろん、生まれながらのお嬢様である梨奈に激しく振り回される樹を見ながら、「哀れな奴よ・・・(うぷぷ、ここにもトホホが♪)」と呟いてみたいし。
フィクションの世界であることは、重々承知してはいますが、それでもこんな妄想を抱いてしまいます。
これからも、三崎さんの作品を読んで、あの世界のことをもっと知りたい・・・と思いますねぇ、うん。

(2010.09.09 読了)

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三崎亜記 角川書店 角川グループパブリッ発行年月:2010年02月 ページ数:470p サイズ:単行


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コロヨシ!!(三崎亜記)
うわっ、なにこれ!?何これっ!何、これーーーーっ!! と、最初から最後まで(心の中で)叫びながら、多少は思わず声に出して呟きながら読んでしまいました。いや〜〜〜〜まさに「これぞ三崎ワールド!」な1冊でした。う〜タマラン。 ...続きを見る
Bookworm
2010/09/10 12:43
コロヨシ!! 三崎亜記 角川書店
凝りに凝った長編。 いつもながらの、この世界とは少しずれた感じの 仮想空間が舞台なんですが、三崎さんの描き出す異次元は 何だか、いつも懐かしい。 これまでの三崎さんの作品を読みこんできた読者には 軽くデジャブも誘う、彼ならではの世界です。 三崎さんの、この設定の面白さには、いつも唸らされます。 今回のテーマは、掃除。 この掃除は、私たち主婦が常日頃苦しんでいる(笑)掃除とは 起源としては同じなのですが、全く別ものです。 その、似て非なる世界を見事に構築し、競技としての哲... ...続きを見る
おいしい本箱Diary
2010/09/12 23:11
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小説「コロヨシ!!」を読みました。 ...続きを見る
笑う学生の生活
2010/09/18 22:47
『コロヨシ!!』
 三崎亜記  角川書店 「掃除」という競技がある世界。しかし、戦争に絡んだ歴史的経緯により、高校生の三年間しかできず、競技者は国によって管理されている。  主人公は、祖父に手ほどきを受け親に隠したまま子どもの頃から「掃除」をしてきたが、大会に出場することになったり、すこし違った「掃除」をする一年生の少女に出会ったり…という話。  漢字を多用する造語とか、前後左右を説明せずに終わる作風は三崎亜記の得意とするところだが、最初のあたり、部活紹介の辺りまではやけに楽しい雰囲気で、これ万城目学か? と... ...続きを見る
blog mr
2011/06/04 08:25
【コロヨシ!!】(三崎亜記)を読了!
知ってました?「掃除」がスポーツ競技だって  まずは来訪記念にどうかひとつ!  人気blogランキング【あらすじ】20XX年、掃除は日本固有のスポーツとして連綿と続きつつも、何らかの理由により統制下に置かれていた。高校で掃除部に所属する樹は、誰もが認める才能を持ちながらも、どこか冷めた態度で淡々と掃除を続けている。しかし謎の美少女・偲の登場により、そんな彼に大きな転機が訪れ・・・辞書にもちゃんとでてるんですって、「新公式明解国語辞典」。って、本当に探しちゃいました三崎亜記さん、あいかわらず「不思... ...続きを見る
じゅずじの旦那
2011/07/05 18:21

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
本の分厚さを忘れるくらい面白かったですね!
「掃除」をここまで”スポーツ”として描ける三崎さんに脱帽でした。スポーツだけじゃなく、青春物らしく恋愛もあったり、少年達の成長もあったりと本当に楽しめる作品でした♪
すずな
2010/09/10 17:06
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
躍動感たっぷりの、いい物語でしたよね♪
いつもの三崎さんの郷愁をそそる静謐な物語も素敵ですが、若者が元気に頑張っているのもいい!と思いました。
水無月・R
2010/09/10 23:05
こんばんは♪ちょっとぶりでございます。
水無月・Rさんの本語りは熱いです(*^-^*)
読ませて頂いて、私もまたこの本の細部が蘇ります。
三崎さんの世界って、どこかにある、パラレルワールドのようで・・いつか行ってみたいような、ちょっと怖いような、でも懐かしいような、不思議な世界ですね。いつになく青春爆発のこの世界も、とても魅力的でした。続き読みたいですね〜♪
ERI
2010/09/12 23:16
ERIさん、ありがとうございます(^^)。
三崎さんの世界観は、ホントに緻密で、どこかにあるんじゃないかと感じてしまいますね。
行ってみたいような、でもあの美しい世界には弾かれてしまいそうな…。
とても魅力的な世界観ですから、是非この世界の物語を、どんどん広げていってほしいですね!
水無月・R
2010/09/12 23:31
掃除で舞う「塵」の表現が綺麗なこと…
まさに舞い踊る。
これを読むと掃除が楽しく、、、やっぱりならないなぁ(^^ゞ
じゅずじ
2011/07/05 18:23
じゅずじさん、ありがとうございます(^^)。
実際の家のお掃除と、スポーツの〈掃除〉の隔たりは・・・越えられない高い壁が(笑)。
こんなスポーツだったら、スポーツ観戦の苦手な私も、楽しめそうです。観てみたいなぁ!
水無月・R
2011/07/08 15:43

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