蒼のほとりで書に溺れ。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『エデン』/近藤史恵 ◎

<<   作成日時 : 2010/11/25 22:59   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 6 / コメント 5

そういえば私、近藤史恵さんの単行本になった作品って、『サクリファイス』しか読んでなかったのね(笑)。
なんかもう、『Story seller』(1)〜(3)を読んでたので、長編シリーズな気がしてました。
今回も主人公は白石誓、舞台は自転車ロードレースの頂点「ツール・ド・フランス」。
選手たちは、そこで『エデン』(楽園)を見たのだろうか。

『サクリファイス』の事件後、チカ(=白石誓)はヨーロッパに渡りロードレース選手として2年を過ごしてきた。スペインのチームからフランスのチームに移り、エースのミッコのアシストとして「ツール・ド・フランス」に出場することになるのだが・・・。
所属するチーム「パート・ピカルディ」は今期を限りにスポンサー撤退が決まり、監督はチーム存続のために自チームエースではなく他チームのエースのアシストをして欲しいと言ってくる。
確かにチームを超えた協力や、出身国が同じ者同士の協力も存在するが、自チームエースを差し置いて・・・というわだかまりが生まれ、チームの中はぎくしゃくしてくる。
監督がアシストして欲しいといったのは、最近ふるわないフランス人ロードレーサーの中で、抜きんでて台頭してきた若者・ニコラ。
レースの休養日、チカは薬の売人に声をかけられた。もちろん断ったのだが、その売人はニコラも自分の客だという。疑惑を持ちつつも、明るく親しみやすい人柄のニコラと言葉を交わすうちに親しくなったチカは、それを否定するようになる。
チカは、自分がアシストしたいのはミッコだと気付き、ミッコにそう宣言する。しかし、それを実行しようとした朝、ニコラのチームメイトで親友のドニが急死。ニコラは「ドニは自分が殺したようなものだ」と引退まで口にする。チカはニコラの監督に頼まれて、ニコラと話をし、ドニの死の真相を知る。
そのまま、ツール・ド・フランスは最終局面に突入し、チカに2つのチームからの移籍話が来る。
ツール・ド・フランスは「過酷な楽園」である。「楽園」に居続けられることが、幸せなのだと、チカは思う。

自転車ロードレースって、求道的だなぁ・・・って思います。
勿論、精神論だけではなく、技術や能力も高レベルを保たなければいけないんだけど、高みを飛翔し続けるエースに尽くすアシスト、風の抵抗を受ける先頭を順番に務める紳士協定など、独自の慣習が多く、特殊なスポーツなのですね。
レースの展開を読むための頭脳戦もあり、駆け引きする能力や経験も必要。

ただひたすらに走るチカ達選手の、力強さと潔い美しさ。その裏側で、嫉妬や自己利益のための画策があり、絡まりもつれゆく事態の中、ある弱さを持ってしまった一人の選手が命を失う。
「楽園」を目指すが故の苦しさと、そこへ至るまでの苦難に負けてしまう者も存在すること、「楽園」であっても居続けることには困難が伴うこと。それでも、「楽園」なのだ。
ロードレーサーたちは、楽園を目指して走り続ける。そして、楽園の中でも走り続ける。

『サクリファイス』を読んでいた方が、分かりやすいかな。日本で何があったか分かっている方が、チカという主人公を理解しやすい。途中で『サクリファイス』の伊庭も、チカに電話かけてくるしね。その電話のやりとりが、本当に2人らしい感じで、何だかやたらほっとした。多分、言葉が通じにくい外国で選手生活を送っているチカの緊張が、伝染したのだと思う。

今期解散しそうだというチーム内だけでなく、レース全体が不穏な緊張の中、駆け引きを繰り返して各ステージを争う選手たち。エース・アシストを問わず、それぞれが自らの走りに誇りを持って駆け抜けて行く姿が、美しい物語でした。

参考までに、近藤さんのロードレースシリーズの概要を。
『サクリファイス』:石尾が頂点に立つ者として犠牲になった物語。
『Story seller』収蔵「プロトンの中の孤独」=新人だった赤城・石尾が台頭。
『Story Seller vol.2』収蔵「レミング」:石尾がチーム・オッジの真のエースになる物語
『Story Seller vol.3』収蔵「ゴールよりもっと遠く」:引退した赤城が石尾の自転車競技への矜持を思い出す

(2010.11.20 読了)

エデン
楽天ブックス
近藤史恵新潮社この著者の新着メールを登録する発行年月:2010年03月登録情報サイズ:単行本ページ数


楽天市場 by エデン の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(6件)

タイトル (本文) ブログ名/日時
エデン 近藤史恵
エデンクチコミを見る あれから三年―。白石誓は、たった一人の日本人選手として、ツール・ド・フランスの舞台に立っていた。だが、すぐさま彼は、チームの存亡を賭けた駆け引きに ... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2010/12/01 00:18
エデン(近藤史恵)
「サクリファイス」の続編。 ...続きを見る
Bookworm
2010/12/01 12:43
本 「エデン」
非常におもしろかった近藤史恵さんの「サクリファイス」の続編です。 前作はスポーツ ...続きを見る
はらやんの映画徒然草
2010/12/05 06:59
「エデン」近藤史恵
エデンクチコミを見る ...続きを見る
本のある生活
2010/12/09 20:28
過酷なロードレース
小説「エデン」を読みました。 ...続きを見る
笑う学生の生活
2010/12/20 18:59
近藤史恵『エデン』
エデン近藤 史恵新潮社このアイテムの詳細を見る ...続きを見る
itchy1976の日記
2010/12/24 21:47

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(5件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは^^
なんと。近藤さんの作品は「サクリファイス」と「エデン」のみなのですね。
近藤さんの作品はたくさんあるので、読んでみてください〜^^って、積読を増やしちゃいますね^m^
このシリーズを読むまでロードレースについての知識が皆無だったので、勉強になりました。
もの凄く過酷ですよね。でも、世界で戦っている日本人選手が実際にいらっしゃるんですよね。
応援したくなりました。
この作品の続編はもうないんでしょうかね〜。
読んでみたいです。
苗坊
2010/12/01 00:20
ホント、自転車ロードレースというのは特殊なスポーツだな〜と思いますよね。個人競技でありながら、チームとして闘う。エースにはエースの、アシストにはアシストのプレッシャーや葛藤がものすごくあるんだろうな〜と、読みながらしみじみと思いました。
楽しく読めたんですが、この「エデン」は「サクリファイス」のようなミステリ色があまりなかったのがちょっと残念といえば残念でした。ちょっと期待してたので…^^;
すずな
2010/12/01 12:51
>苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
うわ〜〈読みたい本リスト〉が長くなる誘惑、ですね(笑)。
この続編があるとしたら、新しいチームでの葛藤やツール・ド・フランスでの過酷な戦いが鮮やかに描かれるんでしょうね〜。
続編、出てほしいなぁ・・・と思います!

>すずなさん、ありがとうございます(^^)。
ミステリ的には、ちょっと残念でしたね、確かに。
だけど、チカの迷いや葛藤がすごく丁寧に描かれてたと思います。だからこそ、選手たちの走りがみんな美しかったんでしょうね。
水無月・R
2010/12/01 21:15
自転車ロードレースの世界って、求道的ですよね。ただ速いとかうまければいいというのではなく、他の強さが求められるというか・・。
「story seller」の2・3を積みっぱなしで、まだ読んでないことを思い出しました^^;
june
2010/12/09 20:27
juneさん、ありがとうございます(^^)。
技術だけでは高みへは登れないというのが、自転車ロードレースですよねぇ。
そういえば、『Story Seller』1〜3の外伝は、どれも石尾&赤城が中心になる物語でした。
この二人の絆の物語も、とてもよかったですよ♪
水無月・R
2010/12/09 22:19

コメントする help

ニックネーム
本 文
『エデン』/近藤史恵 ◎ 蒼のほとりで書に溺れ。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる