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zoom RSS 『数えずの井戸』/京極夏彦 ◎

<<   作成日時 : 2011/02/25 00:38   >>

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は〜、今回もぶ厚かったですなぁ、京極夏彦さん(笑)。
本書『数えずの井戸』は、京極版「皿屋敷」である。
まず番町・青山家に関してどんな噂が流れたかが語られ、そして実際の惨事の結果だけが語られ、序章となる。
本編は、青山家で起きた惨事の関係者たちの性質とそれに関わる物語が、延々と語られていく。次第に歪みを増していく、彼らの事情と性質。読んでて非常に落ち着かない気持ちになりました。
あ〜、それと・・・、長かった〜(笑)。結末の事実だけは分かってるけど、結局どうだったのよ?というのが・・・ねぇ。読んでて面白いとか爽快とか、そいうう物語じゃないですしね(^_^;)。
後半は、とんでもない勢いで読んじゃいましたけど。

≪主要登場人物≫
青山家当主・青山播磨:世の中のみならず、己も欠けておる。それを補うものは見つからない。足りているはずなのに、足りない。
愚鈍な町娘・菊:先を読んでしまうため、身動きが取れない。変わらぬままが、良いのに。
青山家側用人・柴田十太夫:誉められたい。忠臣であるのも、それが故。だが、当主は感謝こそすれ、誉めてはくれぬ。
播磨の友人・遠山主膳:つまらぬ。何もかもが嫌いだ。己は狂うている。全てぶち壊してしまえばよい。
米搗き男・三平:ひとつ、ふたつ、みっつ―――。数えることだけが、大事なのだ。
播磨の上役の娘・吉羅:手に入れることが可能なものに対しては、強欲。それでかまわぬ。

各々の性質に従って行動したが故に、全てが無惨にも崩れ去る結果となる。
数える者、数えぬ者、数えることを厭うもの。足るを知る者、足らぬと思う者、足らぬことを知らぬ者、足ることを怖れる者。
それぞれが一人なら、ここまで狂うことはなかったものを。互いがそれぞれと関係しなければ、一人ならば、ここまで歪むこともなかったものを。

「皿屋敷」なら、私も漠然と知っている。「一ま〜い、二〜ま〜い・・・・九ま〜い・・・一枚、足りない・・・」と井戸端に現れる、濡れ鼠の女の幽霊。家宝の皿を割ってしまい、御手討ちにされたとも自害したともいう菊なる下女の怨みの物語だという。
だが、この物語は、違う。「番町皿屋敷」を、少しだけ歪んだ性質をもった者たちが関わってしまった為に、その歪みが成長し、静かに密やかに狂気を増していったという真実で、語り下ろされる。
欲を持つ者、持たぬ者。持たぬ者であったはずが、欠落に気付いてしまった者。
全てが間違った方向に進み、いつの間にか取り返しのつかない、凄惨な事態を迎えてしまう。
多くの者が、何故か判らぬままに命を落とし、とある者は青山家の庭にある井戸に吸い込まれ、とある者は青山家の庭や座敷で無残な死に様を晒す。

とにかく、陰惨。小さな狂気が、個々それだけなら収まってたであろうその性質が、互いに影響しあい、悪い方へ悪い方へと転がっていく。冒頭で、何があったかが語られているので、そこへ向かって行き明るい方向には転ばないことが分かっているので、余計に重苦しい。
物語そのものが長く、重苦しい雰囲気であるにもかかわらず、それぞれの狂執の生き急ぐ感が私を急かし、前半はダレてたのだけれど、後半はすごい勢いで読了してしまった。

それぞれの歪みと狂気は些細なものであったかもしれない。
その中で、私が一番狂っている・歪んでいる、と感じたのは青山播磨である。
足りぬ足りぬ、足りぬが何がどう足りぬのか分からぬ。そして、誰にも何にも興味がない。ただ状況に流され、足らぬことだけを強く意識して、煮え切らない日々を送る播磨。
だ〜〜!!も〜〜!!お前が悪い!と叫びたくなるほど、煮え切らない。
誰も悪くない、と思うけど、あえて叫ばせて欲しい。播磨、お前が悪い!(笑)
この男は、ダメだろう・・・、色んな意味で。
最終的に、全てに結末を無理やりつけてしまったのは、この男だし・・・。

後始末を、頼まれてしまった徳次郎は、関わってしまいその顛末を知った又市は、どれほどやるせない思いをしたことだろうか。『巷説百物語』シリーズでも、〈ひとの為せる罪悪を怪談になぞらえて始末をつける〉ということをずっと行っていた、又市たちだけれど。それでも、後味の悪さ、後悔、哀しさは格別だったのではないかと思う。

序章を除いて、「○○数え」「数えずの○○」が交互に続いていく章立ても意味深だなあと思ったのだけど、井戸の穴を模した(と私は思うのだが)章タイトルのある章扉の丸が「○○数え」では白地に黒、「数えずの○○」薄い黒地に白と全く逆のデザインになっているのも、意味深。更に言うと、地の色がどんどん黒くなってゆき、まるで登場人物たちのはまり込んだ悪い巡り合わせがだんだんに色濃くなっていくのを象徴しているかのよう。
ああ、やっぱり、後味が悪い・・・。
でも京極さんのこういう作品は、嫌いじゃない、というか好きだ・・・、と思ったりする私である。

(2011.02.24 読了)

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