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zoom RSS 『Q&A』/恩田陸 ○

<<   作成日時 : 2011/03/29 15:13   >>

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2002年2月11日午後2時過ぎ。都内郊外の大型ショッピングセンターで大規模な死傷事故が発生。居合わせた人数はかなりの数に上るにもかかわらず、本当は何が起こったのか、どうしてここまで大きな事故になったのか、誰にもわからない。
この事件を調査する質問者と、事件に色々な形で関わった回答者の『Q&A』(質問と答え)だけで、物語は進行していく。
恩田陸さん、相変わらずひたひたと怖いです・・・。

物語が進行する中で、ショッピングセンターMで起こった災事の真相が分かるのかと思いきや、結局それは闇の中のまま。但し、幾つかの回答の中で「こうではないか」「私はこれを見た」という推測や証言はある。推測を裏付けるかのような事件もあり、前半は淡々と進んでいたQ&Aが、後半狂気をはらんで加速する。
災事の2年後、一度更地になった跡地に再び、大型ショッピングセンターが建つ。まるで、何もかもがリセットされたかのように。何もなかったかのように。
そこでの回答者が語った、災事の余波と思われる事件。新しいショッピングセンターが大きな足に踏みつぶされる幻視。
・・・うわわわわ!怖い!怖いよ恩田さん!

偶然多発した集団パニックの連鎖か、政府の陰謀か、はたまた同時多発テロなのか、人間を超越した存在からの断罪なのか。
解らない不気味さと、質問者と回答者という2者だけの孤立した関係の空怖ろしさ、そして中盤から漂い始めるきな臭さや生臭さ、そしてそこかしこに現れる、人間の醜さ。
災事はきっかけに過ぎず、Q&Aというシンプルな形で露わにされる、私利私欲の構図とそれぞれが信じたがっている真実(だが多分それは虚構)、という物語世界が怖ろしかった。物語世界ではありつつも、それは私たちのこの世界にも共通する。

素性がわからず(最初の方は公的機関の調査者?)、男女も色々な質問者が不気味。彼らは、この災事の何を知っているのか。彼らは、何のために、質問を続けているのか。どんな答えを求めているのか、あるいは誘導しようとしているのか。
そして回答者の方も、災事の直接の被害者、関係者だけでなく、Mの近隣に住む者(当日Mに行っていない)、Mの元顧問弁護士、救急隊員、Mの災事ツアーをする大学生、Mの噂をするタクシー運転手、災事の「奇跡の生き残り」と呼ばれる少女など、多岐にわたる。質問者が回答者になり、回答者が質問者になり、物語が進展しながら、立場は入れ替わっていく。
これだけ多くの人に質問をしても結局、事の真相は解明されず、それなのに新しい建物が建ち、事件の記憶は上書きされて、いずれ消えてしまう。

Q&A形式というのも面白かったし、パニックの中個々が感じていたことに大きな違いがあった事や、関係者の中で狂気や私欲にかられて変容していくものがいたことなど、小説としてとても興味深かったです。
ただ・・・大惨事に引き起こされるパニック、という舞台は、ちょっと痛かった。現在、東日本で拡大し続ける震災被害のことを思い出してしまって、ちょっと辛かった。もちろん、全然状況は違うのだけど。この物語のように作為的なものではなく、避けられない自然災害だったのだから。重ね合わせることは間違ってると思うのだけど、それでも少し、苦しいと感じてしまったのは事実だ。

結局、真相はわからなかった。そのことに、不満はあまりない。
ただ、こんな災事はいつでもどこでも起こりうるんじゃないか、という恐怖が拭えず、もしそうなったら私は・・・と妙な方向へ想像が走ってしまって、それが怖かった。直接の被害者、あるいは被害者の関係者になるかもしれない。私はよく、大型ショッピングモールへ買い物に行く。あの大型店舗で、パニックが起こったら。被害を受けなくても、そんな事が本当に起こったとしたら、もう大きな店へ買い物に行くのも怖くなるんじゃないか。いや逆に、平気な顔で出かけて行き、災事の記憶をわざと上塗りして忘れ去ろうとするのではないか。自分の醜さを垣間見た気がして、怖ろしかった。

恩田さんと言えば、ラストシーンの不可解さが結構特徴的なんですが、今回もアレレ?って感じですねぇ・・・。
「奇跡の少女」が今後経験するであろう事を告げに来る、不可思議な存在。えぇぇ〜?なんかソレは蛇足のような。一つの物語の決着ではあるけど、『Q&A』という物語全体の決着ではないわけで、なんだかなぁという気がします。イキナリSFというかファンタジーな感じになってしまいました。
奇跡の少女のQ&Aは、ラストではなくもう1つ前のQ&Aと入れ替えた方がいいんじゃないかなぁ、せめて。
Q&Aの内容は「なるほどね〜」って思うようなもので、無垢に見える子供の、純粋で単純な思考と行動故の怖ろしさが噴出してくる、なかなかに怖い展開なんだけど。
ラストは「踏みつぶされる虫かご」の幻視の方が、引き締まる感じがするような。
もうひとつ前の「タクシー運転手」のQ&Aと間をおく方が、怖さが迫って来るような気がします。

終わり方や、災事の原因究明に至らないもどかしさはありつつも、「問いと答え」のみで進行し展開する物語は、新鮮で、興味深かったです。

(2011.03.28 読了)

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