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zoom RSS 『MAMA』/紅玉いづき ◎

<<   作成日時 : 2011/04/26 17:17   >>

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愛だなぁ・・・!
紅玉いづきさんご本人も、あとがきでそういうことを書いてるけど、本当に、ひしひしと「愛」を感じる物語でした。
「恋愛」ではなく、そして単純な「母親の子への愛」でもなく、簡単に定義してはならない「愛」という絆で、物語は世界を描いてゆく。
魔物のママになることで、新しい絆を得た少女とその使い魔の物語『MAMA』は、優しさと強さと、苦しみと喜びと、孤独が入り混じった、素敵な物語でした。

魔術師の一族にありながら、落ちこぼれだった少女・トトはある日、神殿の奥に封印されていた〈人喰いの魔物・アベルダイン〉を開放してしまう。トトは魔物・アベルダインに新しい真名・ホーイチを与え、そしてホーイチの「ママ」になることを約束する。そして、ホーイチはトトの使い魔となった。
アベルダインを開放した際に失った耳の代わりに、「どんな言語でも理解し話すことが出来る」能力を身に付けたトトは、魔術師ではなく外交官として王宮に上がる。王宮では王女・ティーランや他国の聖騎士と知り合い、外交官として活躍し、時に刺客に襲われることもあったが、そのようなものはホーイチが撃退し・・という日々を送る。
ある日、街に出たトトは奴隷商と争う武人・ゼクンと出会う。ホーイチを持つが故にサルバドールの後継者としてトトの名が挙がり、彼女はホーイチを手に入れようとする魔術師たちに次々と襲われるようになる。ホーイチを守るために、自らの中に彼を封じたトトは、やがて傷つき倒れ、トトを守ろうとしたゼクンも重傷を負う。ホーイチは、一つの賭けに出る。ゼクンを喰らって、ゼクンの傷をいやしゼクンになり変るか、或いはゼクンの魔力と魂の強さに負けてゼクンに吸収されるか。そして、ホーイチは消え、ゼクンとトトは国を出奔した。人喰いの物語は終わり、最後に一節がつけたされる。とある女性が、夫にも自分にも似つかない、美しい子を生んだ。彼女は、その赤子の名前を、産まれる前から知っている、と。

続く「AND」は、アベルダインの母の呪力が籠った耳飾りを王宮から盗み出したダミアンが、耳飾りに導かれて妹・ミレイニアと共に、耳飾りを真の持ち主の元へ届ける旅路の物語。旅の間に、ダミアンは耳飾り記憶を追体験し、苦しむ。ミレイニアは本当の妹ではなく、一緒に孤児院を抜け出してきた仲間なのだが、ダミアンを愛しており、彼を守るために、常人が触れば火傷を負いかねない耳飾りに触れ、「必ず帰るべきところへ連れて行ってくれるから、泣かないで」と呼びかける。
ダミアンとミレイニアが探し当てたのは、ホーイチと名乗る少年であった。ホーイチは言う。母のおとぎ話にアベルダインの名が出てくると。ホーイチに耳飾りを渡した2人は、『兄さんは死ぬまで妹と一緒にいる』というミレイニアの占いにうなずきながら、共に旅立ってゆく。

長々あらすじを書いちゃったけど、やっぱり全然物語のよさが伝わらないなぁ・・・ううむ(^_^;)。
トトの、アベルダインの母の、ミレイニアの、相手を思う「愛」の強さに、ただひたすら息をのむばかりだった。
勿論、男性たちだって、相手を思っているのだけれど、彼女たちの思いとは次元が違うと感じる。レベルが低いとか、そういうことではなく、好きだ・大切だ・守らなくては・・・など様々な思いが撚り合わさって、より強い思いになっていて、相手を守っている・・・彼女たちの「愛」とはそういうことが出来ることなのだと、とても心を動かされたのである。
魔術の力なく一人ぼっちだったトトが、ホーイチを子とし、ティーランという友を得、ゼクンを愛し愛され・・・、全てが愛につながってくのが素晴らしいと思いましたね。
そして「AND」で明らかになった、アベルダイン(人間)と人喰いの過去。全てを苦しみながら追体験して、旅を続けたダミアン。ダミアンを支え、共に旅をしたミレイニア。きっと、アベルダインのお母さんも、報われたというか安心したんじゃないかなぁ。
そして、人喰いの魔物は〈人喰いの魔物〉から〈アベルダインを喰らい封印されたもの〉や〈トトの子であり使い魔・ホーイチ〉を経て〈ゼクン〉となり、〈トトの産んだ子・ホーイチ〉として、転生を繰り返して、より強固な愛の存在になったのではないかしらん。
互いに補完し合う物語「MAMA」と「AND」、両方の物語あっての完成度だったと思います。

トトやホーイチも好きだったけど、実は一番ティーランが気に入っていた。高貴な生まれゆえの辛辣な物言い、気まぐれとも我儘とも取れる言動、でもその裏でトトを良き友と思い、陰ながら力を貸しているところが、強く美しい少女だなぁ!と思って。
そうしたら、「AND」の冒頭で「いずれ国母となる美しき女性」として出て来て、とても嬉しかった。
しかも、ダミアン達がホーイチに耳飾りを届け、実はこの旅路がティーランの仕組んだことだった、物が物だけにそういう流れが必要だったということが分かり、更に嬉しくなった。
ティーランは、より美しく、強く、切れ者な、最高の女性に育ったのだなぁ・・・って。そして、その身分や場になってもなお、トトと交流を続けている、というのがいい。「愛」も美しいけど「友情」だって、強く美しく、確かなものなんだ・・・!
ティーランは中心人物ではないけれど、どちらの物語にもなくてはならない存在、こういうカッコいい女性、好きです。

(2011.04.25 読了)

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MAMA (電撃文庫)クチコミを見る 海沿いの王国ガーダルシア。トトと呼ばれる少女は、確かな魔力を持つ魔術師の血筋サルバドールに生まれた。しかし、生まれつき魔術の才には恵まれな ... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2011/04/26 22:59

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは^^
愛ですよね、本当に、この作品は愛が全てだと思います。そして深い。
水無月・Rさんのおっしゃるとおり、「MAMA」と「AND」両方あっての完成版なのだと思います。
「AND」が本当に感動しました。
私もティーラン好きです^^
きつい物言いですけど、抱えているものが大きいからなんですよね。だから気品があって、カッコイイ。素敵な女性でした。
苗坊
2011/04/26 23:01
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
「愛」だなんて照れ臭いけど、本当にこの物語の愛は真っ直ぐで強くて、優しくて・・・とても素敵でした。
苗坊さんが前におっしゃってたように、紅玉さんの作品は、本当に素晴らしいですね。
紅玉さんの綴る「愛」の物語、これからも追いかけ続けていきたいです!
水無月・R
2011/04/27 22:33

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