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zoom RSS 『333のテッペン』/佐藤友哉 ◎

<<   作成日時 : 2011/06/17 15:18   >>

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『Story Seller』「333のテッペン」『Story Seller(2)』「444のイッペン」『Story Seller(3)』「555のコッペン」で読み続けてきた、「普通」の皮をかぶり続けようとする主人公・土江田。彼のストーリーは「666のワッペン」を加えて、1冊の物語になりました。
「333〜」「444〜」「555〜」は既読でしたが、ここはあえて再読。一気に続けて読むと、よけい土江田の過去が気になりますよ、佐藤友哉さん。
で、『333のテッペン』を読んで、土江田の過去が明らかになったかというと、色々と小出しにはされてるけど・・・って感じですねぇ。でもそれでいいや!って思えちゃうあたり、私も大分毒されてるのかも(笑)。

多分、土江田の過去は神戸の猟奇事件の・・・だと思うんですよね。そういう意味では、怪物・化ケ物だけど、実際普通の生活に馴染もうとしている努力は、報われるんだろうか。
土江田は事件を起こした後、国家機関に保護され『教育』され・・・、解放されたのち「『教育』された者は「普通」になって普通の生活を営めるのか」という監視の下、名前を変え、暮らしている。彼を解放した警察などの国家側は、危険人物を世に放ったと非難されない為にもメンツの為にも、彼に問題を起こさせてはならない、と彼が巻き込まれた事件に関与してくる。
な〜んて書くと、大変シリアスな物語のように見えるんだけど、そんなことはない。
土江田は真剣にしゃべっているのに、感覚がズレているから会話は変な方向に転がるし、周りの人物はわざとのようにそれを煽っているし、巻き込まれる事件は実現可能だけど荒唐無稽系なものばかり。
思わず土江田と一緒に、現実のストーリーにツッコミを入れたくなってしまう。

確かに土江田はとんでもない過去を背負っていて、事件に巻き込まれやすく、時折過去の自分が顔を出しそうになるのを必死になって抑え込まなくてはいけない。
土江田を「普通」に引き留めるのは、勿論本人の意思の力もあるんだけど、女子高生探偵・赤井の存在が大きいと思うんですよね〜。恋愛感情ではなく、かといって他の感情の執着があるわけでもなく、赤井から漂うのは土江田の求める「普通」じゃないのに、それでも土江田は赤井に救われている。
赤井の「女子高生の制服」という年齢には足らない背丈、しかしながら外見年齢に見合わぬ優雅さ、そして一番の違和感はそんな女の子が優秀な「探偵」であること。それら全部含めて、「普通」じゃな自分を現実に引き留めるのは、何故か赤井だ、ってことを頭で理解ではなく感覚的に悟っているんだろう。

う〜〜ん。感想をシリアス展開にすると、ちっとも面白くないなぁ。

佐藤さんて、私より若いんですよね〜、だいぶ。なのに何故だろう、私の子供時代のアニメや特撮からの引用セリフが、すっごくしっくりくる。しかも、それを使うのはもっと若いはずの女子高生探偵・赤井で、青春時代を浪費してしまってる26歳の土江田はそれを理解できないという(笑)。
そうかと思えば、土江田は探偵小説の類を結構読みこんでるようで、赤井の探偵らしくなさにやたらツッコミを入れている(但しその探偵像は古臭い)。また、過去の自分から乗り換えた今の人生を「ストーリー」と称したり、シニカルな部分もある。
「普通」に憧れ、過去に自分が企画運営した「祭り」のような酸鼻極まる事件に思いを馳せる「普通の人」を理解できず、どうしたらいいのか戸惑う様子はまるで、迷子の幼児のよう。
土江田の土江田としての新しい人格の不確かさが見えるたび、こちらはひやひやしてしまう。

それに赤井ときたら、ご都合主義丸出しで必ず「偶然」と称して、土江田の巻き込まれた事件に登場する。最初は女子高生の姿で土江田を油断させ、国家側から監視を請け負っているのかと思ってた。そうではなさそうだけど、だとすると、ホントご都合主義的存在だななぁ(笑)。面白い子だから、許せてしまうけど。
全体的な見かけによらず優雅で上品な動きをしたかと思えば、根拠もないのに(←探偵としてはあるまじき言動)土江田を弁護したりする。優秀な探偵(真実ではなく依頼人の希望優先)で、高所恐怖症で、犬が怖くて・・・そして「私○○って嫌いなんです。」「だけど、土江田さんだったら別にいいですから。だから、また会いましょうね!」なんて言えてしまう。なんかカッコいい。

あ、そうそう。「666〜」はちょっとグロテスクだなぁ・・と思いますよ。グロイのが嫌いな人には、ホントに嫌〜な話になってる。私もちょっとうぇぇ、ってなった。
土江田ったら、死体を掘り返すような警官・中島に見破られるほど、常軌を逸した雰囲気を振りまきながら歩いてるんだ、未だに。同類は引き合うからなのか・・・?即席のイカレた男に同類扱いされるほど、土江田の過去は簡単じゃないと思うんだけど。危うく「死体を漁る」音に反応して狂乱しそうになる土江田は、かなり難しいバランスの上に立っている。何とかこちら側に引き戻せたのは赤井の登場。

そう言えば、『Story Seller』で読んでいたときには全然気づかなかったんですが、どの事件も「東京」と名のつく場所で起こってたんですよねぇ。「東京タワー」「東京ビックサイト」「東京駅」そして「東京スカイツリー」。まあ、「666〜」の場合、スカイツリーが見える場所ってことになりますが。2011年6月現在、まだ完成してませんし。
木を隠すなら森の中、人を隠すなら・・・ってことで、かつて<頭悪くて頭のおかしい場所の住人>であった土江田を紛れ込ませるなら東京、そして事件が起こるのは「東京」を代表する場所、ってことなのね、きっと。
続けて読まないと気がつかないことってあるのねぇ(←いやそれは私だけだ(笑))。
あ、それとラストに必ず「土江田さんだったら別にいいですから。だから、また会いましょうね!」って赤井が言うシーン、土江田が赤井を見る秒数が、「333〜」では3秒、「444〜」では4秒、「555〜」では5秒、と伸びていくんですよ。些細な描写だけど、そういうところがいいなとか思ったりする。
ちなみに「666〜」の時はそいう別れ方をせず、後から「助手になりませんか」という電話が来る。冷え切って重い気分だった土江田だけど、冷たさが少し消えて、6グラムほど軽くなり、なんとなく快方の予感がしてくる。勿論これで土江田が真っ当な普通の人になれる訳もないのだけど、やっぱり土江田を救うのは赤井なんだな・・・と感じて、明るい気分で読了したのは言うまでもない。
「777〜」が読める日が来たら、土江田は赤井の助手になってるかなぁ?

(2011.06.16 読了)

333のテッペン
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佐藤友哉 新潮社発行年月:2010年11月 予約締切日:2010年11月23日 ページ数:285p


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333のテッペン 佐藤友哉
333のテッペン著者:佐藤 友哉新潮社(2010-11)販売元:Amazon.co.jpクチコミを見る そのテッペンで死体ハッケン、東京タワー立入禁止。数に呪われた男。謎に愛される少女。東京タワー、東 ... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2011/06/17 20:29

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは^^
確かに土江田の正体はちゃんとはわからなかったですね。未成年の時に何だか酷い事をやらかしたみたいな^^;凄い曖昧ですみません。
でも、わからなかったということはこれからもこのコンビが出てくるんだって前向きに考えてます。このコンビわりと好きなので^^
そういえば舞台は全部東京ってつきますよね。気付きませんでした〜。まだ東京とつく観光地がたくさんあると思いますし、続いていってほしいです。
苗坊
2011/06/17 20:28
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
土江田の過去は「世間を震え上がらせるような事件を起こした」のだろう・・・ということは推測できますが、その土江田を国家機関が全面的に保護し教育し、世間へ解放(たぶん金銭支給もあり)したのは何故なんだろう?ってのも疑問ですよねぇ〜。
いずれ判るかもしれないし、このままかもしれない。だけど、赤井とボケボケ(二人ともボケ)なコンビで、依頼者の望む解決を提供する、名探偵&助手になってくれないかな〜と希望しています。
そうですよね〜、〈東京〉ってつく観光地はたくさんありますもんね♪
水無月・R
2011/06/17 21:20

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