蒼のほとりで書に溺れ。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『雪蟷螂』/紅玉いづき ◎

<<   作成日時 : 2011/06/29 14:57   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

なんと狂おしく、激しいのか。
酷寒の山脈に吹き荒れる雪と風、そのさなかに飛び交うのは剣戟と苛烈な愛。
冬ともなれば全てが凍てつくアルスバント山脈に数多ある部族の中でも、双頭と称される激情の一族と狂人の一族が、和平協定の証として族長同士の政略結婚をする。この婚姻に関わる凄絶な愛の物語を描いた『雪蟷螂』は、紅玉いづきさんの〈人喰い物語〉シリーズの最終章である。

紅玉さんの作品は、いつも「愛」が描かれている。
母が子を思い、子が母を思う愛。相手の為ならば、全てを失ってもいいと思える愛。強く深く、優しく激しく、誰かを思い、捧げる愛。
本作もまた、過酷な冬の景色とは対照的な、全てを燃やし尽くし、喰らい尽くすかのような、強く激しい愛情を描いている。

主人公・フェルビエの女族長・アルテシアだけが、愛を知らず、父親たちの作った和平への道をひたすらに進んでいるかに見える。
いや、アルテシアの替え玉であるルイもまた、一通りの愛は知っていても、突き動かされるような自らを全て擲つかのような愛は知らない。
アルテシアにつき従う異形の近衛兵・トーチカは一途なまでの忠誠をアルテシアに捧げてはいるが。
死者を木乃伊にし、現人神(あらひとがみ)として祀るミルデ族の族長・オウガもまた、愛を捧げることも掲げることもなく、母の思いを胸にフェルビエに対し複雑な思いを持っている。

フェルビエの女は、愛する者さえ噛み殺すという激情の持ち主であり、雪蟷螂(ゆきかまきり)と呼ばれている。
婚姻の為にミルデに来たアルテシアは、ミルデの先代の木乃伊から奪われた首を取り戻すために、和平交渉の証人にもなった山の魔女を訪ねる旅に出ることになる。その間、ルイは身代わりとなってミルデに残り、オウガの真実を知る。盟約の魔女とも呼ばれる、山の魔女を訪れ、先代たちが交わした盟約の裏にあった激情が語られる。
ミルデの先代の首を抱いて死したアルテシアの叔母。山脈は彼らを弔うであろう。
ミルデへ戻ったアルテシアは、真実を告げ、オウガと剣を交じえる。ただ一度の恋を上塗りするには、これしか方法がないと言って。そして、打ち負かされオウガに振りおろされた剣を、ルイが身を呈して止め、アルテシアはルイに、ルイの人生をくれと頼む。
そうして婚礼の日、オウガの傍らには愛し愛される喜びに輝く、美しい花嫁がいた。
2人の族長の婚礼の場の片隅に、トーチカと仮面の戦士がいた。
アルテシアは、少女の頃、倒れていた少年を救ったことがある。一瞬の邂逅であったにもかかわらず、それは彼女にとって、ただ一度の、全てを喰らい尽くすが如き、愛であった。

なんていうか、感想が難しいですね。
ここまで激しい愛は、なかなか現代ではお目にかかれませんから。過酷な自然と部族間の争いの中で、ひときわ激しく命を燃え上がらせ、高らかに愛を奮い立てる、その強さは、息苦しいほど。
こういった愛を持てるかといえば、多分出来ないし、それを羨むことも、多分ない。
それでも、彼ら彼女らの愛が成就するという結末を得て、読んでいる間ずっと激しく動き続けていた感情が落ち着いたのは、確かだ。

ENDのあとに入った、雪原で少年を引き起こして口づける少女のイラストが、とても良かった。

(2011.06.25 読了)

雪蟷螂
楽天ブックス
電撃文庫 紅玉いづき 角川書店 角川グル-プパブリッ発行年月:2009年02月10日 予約締切日:2


楽天市場 by 雪蟷螂 の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『雪蟷螂』/紅玉いづき ◎ 蒼のほとりで書に溺れ。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる