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zoom RSS 「ヒア・カムズ・ザ・サン」/有川浩 ◎ (『小説新潮』2011年6月号掲載)

<<   作成日時 : 2011/08/08 19:57   >>

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たった7行の、演劇のあらすじ。
そこから生まれた小説は、演劇とは全く違うもので。
原作でもノベライズでもない、全く違ったエンターテイメントとして両立。
ますます有川浩さんのフィールドが広がってるなぁ〜、と思いましたよ。いや、演劇の方は観てないんですが(さすがにこれはDVD買わないよ(笑))。
萌え〜!はなかったけど、何と言うか穏やかな気持ちになれました、「ヒア・カムズ・ザ・サン」
ホントは、小説と演劇、両方を体験して比べられたらいいんですけどね〜。なかなかそうはいきませんや。
キャラメルボックスさんで、ノベライズか脚本の公開をしてくれないかなぁ(^_^;)。

<ものや場所>に宿る、人の思いを感じ取ることのできる古川真也。彼はその能力ゆえに、「自分はズルをしてるのではないか」というコンプレックスを持っている。そういえば、こういう特殊能力のある登場人物って、今までの有川作品にはいなかったような気がする。
普通の人だけれど、ちょっとだけ、能力者。だけど、その能力で世界を変えるとか救うとか支配するとか、そういう大それたことが出来るわけではないし、本人もその気はない。真面目な性格なんだろうなぁ、引け目にすら感じている。
そんな真也の同僚・カオルの父が20年ぶりに帰国するという。彼は実は話題の映画のメイン脚本家で、真也たちの作っている雑誌がその脚本家の特集を組もうとインタビューの場を設ける。
そこで、明らかになった脚本家の心情と真実。

萌え(恋愛要素)はなかったけど、そして緊迫した戦闘シーンもなかったけど、それでもしみじみ、あぁ有川さんだなぁ・・・と思いました。なんだろう、登場人物に寄りそう・・・というのとも違うなぁ。
真摯に生きている人が、きちんと報われる(派手な救いや上昇ではないけど)、だから自分も真摯に生きよう、って気持ちになるところ・・かな。

しかし、カオルの本当の父と母親の夫婦関係って、ちょっとどうなんだろうって思う。カオルの母がしっかりした強い人だといっても、夫婦になっても子供が生まれても、(家族のためとはいえ)仕事一筋で、確かに素晴らしい才能があるんだろうけど、そればっかりで家族を顧みてもらえなかったら、哀しくならないだろうか。私だったら、耐えられないと思う。代わりに親切にしてくれる献身的な代理人(夫の親友にして優秀なマネジメント担当者)がいるとは言っても、物足りなくならないだろうか。或いは、その代理人に心を移してしまわないだろうか。
どうも、そういう本筋じゃないところが気になってしまいました(^_^;)。

そうそう、本作では、物語そのものだけじゃなく色々と考えました。
例えば<ものに宿る人の思いを感じ取れる>っていうのは、文章で表すのはそんなに難しくないけど、演劇ではどうやって表現するんだろう、とか。毎回主人公が独白するのかしらん・・・。
あらすじは同じでも、演劇のストーリーは全く違うものだそうで、見比べてみたいよなぁ(でも無理だわな)とか。
自分だったら、このあらすじから、どんな物語を妄想するんだろう・・・と思いかけて止めました(笑)。しょせん私の妄想では、単なる辻褄合わせにすらならない気がするからなぁ・・・あははは。

冒頭で有川さんのフィールドが広がってるって書きましたが、有川さんはネタを掴んだらうまく広げられる、凄い作家さんだな〜と思います。
本作の場合、小説『図書館戦争』シリーズ→アニメ『図書館戦争』→柴崎役の沢城みゆきさん→シアトル劇団子さん→小説『シアター!』シリーズ→演劇「もう一つのシアター!」→司役の阿部丈二さん→演劇集団キャラメルボックスさん→「ヒア・カムズ・ザ・サン」のあらすじ七行という、ぐいぐいと手繰り寄せられる関係性があっての、展開ですよね、多分。(この流れ、私の勝手な考えなので、違ってたらごめんなさいです)
それと、真也やカオルのいる編集部の様子はきっと、どこかの出版社さんの編集部がモデルなんじゃないかな〜。新潮社さんだったら、楽しいな〜。編集さん達が、ニヤニヤしながら自分たちがモデルの作品の校正してたら、面白いじゃないですか。まあ、真也のような能力者はいないと思いますが(笑)。

ちなみに。
今回は、図書館に予約を入れて順番待ちして、『小説新潮』を読みました(笑)。さすがに毎回買えないのよ・・・。

(2011.08.07 読了)

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タイトル (本文) ブログ名/日時
ヒア・カムズ・ザ・サン(有川浩)
小説新潮 2011年 06月号掲載の中編。 ...続きを見る
Bookworm
2011/08/10 12:33
ヒア・カムズ・ザ・サン
有川 浩 2011 小説新潮2011年6月 雑誌は買わないと決めていたのに、見かけると買ってしまう病気。演劇集団キャラメルボックスとのコラボのこの小説も、演劇のほうがどうせ観られないんだからと見送るつもりでいたはずだ。なのに、本屋さんのレジ横に並んだ「小説新潮」を家に連れて帰ってしまった。いつも通りだ。やる、やる、と言いながら、なかなか成果を見ないダイエットに似ている。  真也は30歳。出版社で編集の仕事をしている。 彼は幼い頃から、品物や場所に残された、人間の記憶が見えた。 強い記憶は鮮やかに ...続きを見る
香桑の読書室
2011/08/11 12:21

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
本当に近年特に、有川さんのフィールドが広がってるな〜と感じますね。この作品だって、水無月・Rさんが書いてらっしゃる通り「図書館戦争シリーズ」が発端でここまできちゃったんですもんね。ホントすごいですよね。
それにしても、確かに<ものに宿る人の思いを感じ取れる>って演劇ではどうやって表現するんでしょうね〜。興味がありますが確認できないのが辛い所ですね^^;
すずな
2011/08/10 12:44
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
そうなんですよねぇ。演劇とこの作品は、物語としては別のものなので、DVDを入手しようというところまではいかないんですけど、〈感じ取る〉ということをどうやって舞台上で表現するのかな?という純粋な疑問がわきますよね。
どなたか、舞台を見に行った方がいたら、教えて頂きたいですね〜♪
有川さんのフィールドが広がるのは嬉しいのですが、追っかけるのに色々財政事情が(笑)。
またキャラメルボックスさんとのコラボ企画があるようですね、楽しみです☆
水無月・R
2011/08/10 22:33
そーなのです。フィールドが広がれば広がるほど、財政的な事情やら物理的な事情やら時間的な事情やらで、追いかけきれないところが出てくるのが少し悔しくて残念で、だけど嬉しい。
楽しみ方は人それぞれ。楽しいと思っていられる範囲で無理しないのが一番なんだ、舞台を見に行けない自分を慰めました。笑

自分がカオルの母親だったら、心移りするほうに一票、かも(^^;;;
香桑
2011/08/11 12:19
香桑さん、ありがとうございます(^^)。
そうなんですよねぇ〜、なかなか追いかけきれなくなってきました(^_^;)。
でも、それだけ有川さんの作品にいろんな可能性があり、エンターテイメントとして楽しめる人が増えるということで、ファンとしては嬉しい限りです。
舞台を見に行くのは、なかなか難しいので、残念なんですけどね〜。
水無月・R
2011/08/11 21:36

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