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zoom RSS 『西巷説百物語』/京極夏彦 ◎

<<   作成日時 : 2011/09/05 22:52   >>

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京極夏彦さんの、『巷説百物語』シリーズ最新作!このシリーズ読んでたの、もう4年も前なんですねぇ。一人でやたら盛り上がってた記憶があります(笑)。
本作『西巷説百物語』で主人公を務めるのは、靄船の林蔵(もやぶねのりんぞう)。
彼もまた、これまでのシリーズの又市のように、口先三寸で相手を惑わし、仲間の能力を最大限に生かして事に当たる。
「人のなせる罪悪」を「人ならぬ者の仕業」として事を丸く収めるのは、又市ら「ゑんま屋」の江戸組と同じだが、さて上方流の始末の付け方とは・・・。

林蔵と言えば、又市の義兄弟にして、同業(小悪党という意味では)者。彼の決め台詞は
〜〜「これで終いの金毘羅さんやで」〜〜 (本文より引用)
である。
若い頃、大阪で事をしくじった林蔵は、落ち延びた江戸で又市ら一行の裏稼業に加担していたが、また大阪に戻って来ている。
大阪の裏稼業を元締めは、大手版元・一文字屋仁蔵。仁蔵の元には幽霊芝居のお龍、仕掛け屋の柳次、祭文語りの文作、荒法師の玉泉坊など、裏稼業に欠かせぬ才能の持ち主たちがいる。
林蔵は依頼の始末をつける際、標的に近付き言葉巧みに相手の懐に入り込み、最後の引導を渡す役回りである。

それぞれの怪異及び始末について、要約してここに書くのはなんだか難しい。
ただ、なんとなく前出シリーズとは違うなぁ・・・と思い、読み進むうちに最終章「野狐」でそれが明らかになった。
本作では、人ならぬ者の仕業である怪異は、市井の人々にあまり重視されていないから・・・なのではないだろうか。
上方の人々は、割と先進的にさばけていて、事の始末の噂話は「これこれこういうことがあった」の方が、先なのである。「実はそれは○○という怪異にからむものだとか」という説は、戯れ言扱いなのである。
上方はリアリズム優先、ということだろうか(笑)。
現在、上方と呼ばれた地域に住む者としては、ちょっと面映ゆい気もするな・・・(^_^;)

「桂男」「遺言幽霊 水乞幽霊」「鍛冶が嬶」「夜楽屋」「溝出」「豆狸」の6章は、それぞれ単独の始末及び怪異である。
それぞれ依頼人がいて、ターゲットがいて、林蔵達は丹念にその周りを埋め、そして一気呵成に解決を図る。それぞれの仕掛けは大掛かりで、疑心暗鬼に陥っている標的はまんまとその罠にはまって己の罪に落とし前をつけることになる。

そして、最終章「野狐」では何と、前出シリーズの又市・百介が登場する。
山岡百介と言えば『巷説百物語』シリーズにおける、水無月・R的トホホ萌えの対象である(笑)。かつて私が「若き知性派・・じゃなくて天然役者」として絶賛(笑)した百介さん。登場するなり「キャ〜!」ってなってしまいました・・・どんだけトホホ萌えなんだろう私。百介さん、相変わらずいい味出してます。怪異と聞くと我を忘れて突撃取材(笑)。嘘のつけない正直なその性格で、実は重要な騙しを担ってました!・・・ああ、百介さんの活躍(トホホ全開(笑))する物語がまた読みたいなぁ!・・・おおっと、脱線。
「野狐」では、林蔵と又市が大阪にいられなくなった出来事の、裏の事情が分かる。そして、それを操っていたものが、最終的な標的となる。大掛かりな騙しの仕掛け。そして、終末。やりきれない、終末。
〜〜これで終いの。 金毘羅さんやで。 ほな、さいなら〜〜 (本文より引用)
と、林蔵は退場する。

因果応報。一言で括れば、前出シリーズも本作も同じ。
標的は、過去に自分が犯した罪に落とし前をつける形で、表舞台から、あるいは現世から退く。
依頼人の希望を汲み、真実を表沙汰にはせず、怪異の名を借りて事の始末をつける、その鮮やかな手腕。
しかし、その背後には寂寥感が流れる。
何故なら、〈人ならぬ怪異の仕業〉よりも、よほど恐ろしいのが〈人のなせる罪悪〉だからだ。
そこを、描き切る京極さんが、一番恐ろしいのかもしれない、と思う。

ところで。
この『巷説百物語』シリーズ、終わったと思ってたんですが、別の方向から再開、ってことでいいんでしょうか。期待してしまいますね〜。今まで語られたエピソードの合間に、また別の語られざる物語があるのですから。
全部を語り尽くすことは、百物語を最後まで語り尽くすのと同じことになるのかもしれないので、語られない出来事もあるのかもしれないんですが。

ちなみに。
「鍛冶が嬶」で、土佐の者が一文字屋に依頼に来ました。
土佐弁大好きな水無月・Rといたしましては、その依頼者が長く喋れば喋るほど、大喜び(笑)。
いつの間にか逆転するストーリーも良かったと思います。
京極さんて、土佐弁の登場人物も上手に描かれるんですねぇ!好みの物語に好みの方言が出てくると、楽しさ倍増でした♪

(2011.09.05 読了)

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怪books 京極夏彦 角川書店 角川グループパブリッ発行年月:2010年07月 ページ数:611p


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