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zoom RSS 『木暮荘物語』/三浦しをん ○

<<   作成日時 : 2011/10/12 20:39   >>

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築年数も不明なほどのボロアパート『木暮荘物語』にかかわる老若男女の、ちょっと切なくてなんとなくトホホな日々。それぞれが普通の人に見えながら、ちょっと切実な事情を抱えてて、それがホロ苦い。
三浦しをんさんらしい、弾むような登場人物の内心描写が、とてもテンポがいいです。
そりゃないだろう…とちょっと理解不能な章もありましたが、妙にツボにはまってゲラゲラ笑った章もあり、全体的には楽しかったです。

「シンプリーヘブン」
木暮荘住人・繭。新しい彼がいるのに、3年ぶりに元彼が転がり込んできた。
「心身」
木暮荘大家・木暮。したい。したい。切実にしたい。70歳だろうと、なんだろうと。
「柱の実り」
木暮荘近隣住民・美禰。駅の柱に生えるキノコは、誰にも見えないのだろうか。
「黒い飲み物」
木暮荘住人の雇い主・佐伯。夫のいれるコーヒーは、泥の味がする。
「穴」
木暮荘住人・神崎。階下の女子大生の生活を覗く。
「ピース」
木暮荘住人・光子。友達がこっそり産んだ子供を預かる羽目になってしまった。
「嘘の味」
繭の元彼・並木。住処を提供してくれた女は、料理で嘘の有無がわかるという。

大家さんの煩悩には最初はやや引きましたが、話が進むにつれ、切実なんだな〜とオモシロ哀しい気になってきました。
逆に理解できなかったのが、天井から覗かれてた光子の、「紙外してるときは見てもいいよ」。
いろいろ事情があるってわかってきて、友達の赤ちゃんを預かって親身に世話してあげる優しさもあるし、大家さんの話し相手をする穏やかさもある、いい子だって思うんだけど。
覗いてる二階住人・神崎とくっついちゃえばいいのに。神崎に心許してると思うんだよね〜。
神崎も神崎で、光子の切実さを包み込む優しさがあると思うし。
ただ、私だったら、赤ん坊預けられた時点で大騒ぎにするけど。友達の親、警察、役所、いろいろ巻き込んじゃうな〜。だって、生後1か月の自分の子じゃない赤ちゃんを1週間も預かるなんて、絶対無理だもの。しかも出生届も出てない、公園のトイレで生まれて生後のケアがなされてない子なんて、どんな大事になるかわからないもの…!

ドキドキしたのは「黒い飲み物」の佐伯。穏やかな花屋店主に見える彼女が、夫の浮気を疑い、けがする可能性をわざと見過ごして、夫が骨折したらかいがいしく世話して囲い込み。・・・オソロシイ〜。しかも骨折が治った夫が再び夜中に抜け出すようになったら、繭と一緒に後をつけて現場に乗り込む。ぼろアパート(not木暮荘)のドアを蹴破って。
乗り込んだ後の佐伯・その夫・浮気相手3人の描写(しゃべって行動してるのは、ほぼ佐伯のみ)&佐伯の心情から私、ひとつ学びました。「選択肢を与えて、どちらを選ぶほうが得かを考える猶予を授けた時点で負け」…言えてる。たいていの場合、決定的な瞬間に必要なのは、思い切りと潔さだもんなぁ。とはいえ、この教訓を活かすような事態には、陥りたくはないものです(^_^;)。

逆にゲラゲラ笑ったのが、「柱の実り」。トリマーという仕事柄の出来事も笑えるし、もちろん駅の柱に見えるものについても笑えるし、それが原因で出会った男・前田が〈ヤの字のつく自営業〉で、飼っている犬がミネ(大型プードル)で・・・と、いろいろツボにはまって、笑いっぱなしだった。
だけど、最後のほうで美禰が前田を部屋に招き、柱のものが見える理由の話をした後から、だんだん展開が切なくなってくる。前田は〈長期出張〉で不在になり、ミネをトリミングに連れてくるのは舎弟になる。そして、美禰は前田がアレを取り除いてくれた駅の柱を触って、思い出すのだ。前田と過ごした日々のことを。きっと、美禰は前田が3年後に帰ってきたら、また一緒にミネの散歩に行くんだろう。そう思ったら、切ないけど、何となく安心した。

何気ない人々の日々も、何らかの寂しさや切なさを含んでいる。強さも弱さも全部ひっくるめて、平気そうな顔をして生活をしてく。それぞれに、それぞれの事情がある毎日を。
普通に見える人も、何らかの個性的な面があるんだな…って思いました。そしてその個性的な面をうまく引き出して物語にするしをんさん。しかも、どんなにせつない物語でも、「うぷぷ」と笑える笑い処を逃さず捉えて描きこめるのがすごいと思いますね。しをんさんの作品の、そういうところが、私ホントに好きだなぁ。

(2011.10.11 読了)

木暮荘物語
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三浦しをん 祥伝社発行年月:2010年11月 予約締切日:2010年11月03日 ページ数:267p


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木暮荘物語 三浦しをん
木暮荘物語著者:三浦しをん祥伝社(2010-10-29)販売元:Amazon.co.jpクチコミを見る 小田急線・世田谷代田駅から徒歩五分、築ウン十年、安普請極まりない全六室のぼろアパート・木暮荘。 ... ...続きを見る
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小暮荘物語 三浦しをん 祥伝社
アパートもの、なんてジャンルは無いんでしょうが(笑) 「風が強く吹いている」の時にも思ったんですが、 こういう連鎖していく人間群像を書くのが、しをんさんは とっても上手い。ぼろっちい、「小暮荘」。安普請の壁は ペラペラで、どの部屋の音も筒抜け。 うーん・・・実は、私はこんな建物が大好きなんですよ。 うちの近所にも、こういうアパートがまだ数軒残ってます。 いつから建ってるねん、と突っ込みたくなるくらい古くて、 トタン屋根もボロボロで、しかも線路の真横なんですよ。 電車が通る... ...続きを見る
おいしい本箱Diary
2011/10/21 01:47
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小暮荘物語/三浦しをん(祥伝社) ...続きを見る
京の昼寝〜♪
2011/12/16 12:15

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは^^
出てくる人達が本当に個性的ですよね。
木暮荘での出来事も何だか非現実的な部分もあったりして。でも、皆さんいろんな思いを抱えているんですね。読んでいてちょっとしんみりしたり。
私は繭の回が好きです。
始めと、締めなのがいいなと思いました。
苗坊
2011/10/12 22:03
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
繭の章&並木の章もいいですよね〜。
一つの出来事の最初と終わりが物語の最初と終わりをまとめる、そんな感じがしますね。
これから先、木暮荘関係者みんなが心暖かな日々が遅れそうな終わり方が、良かったです。
水無月・R
2011/10/12 22:37
コメントが遅くなりましたm(__)m

ホントに登場人物たちみんなが個性的でしたねー。ちょっと引いちゃう人もいましたが(笑)、でも、彼らの抱えているものは切実で、読み進んでいくとなんだか応援したくなっちゃうような、そんな気持ちになりました。
私も繭と並木の章が最初と最後になっているのが良かったです。
すずな
2011/10/15 07:03
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
みんな、パッと見は普通そうで、なかなか個性的でしたよね〜(笑)。
そんな彼らが、たどたどしくも一生懸命生活していこうとする姿が、何とも胸に迫りました。
だけど、ニヤニヤ笑えちゃうポイントも外さないしをんさんて、ホントに素晴らしいなぁ♪と思います。
水無月・R
2011/10/15 15:43
こんばんは♪TB遅くなってしまって、ごめんなさいm(_ _)m
「性」って、とてもおかしなもので、当人以外には、大概滑稽なものなんですよね。でも、だからこそ人間だし、こういう部分を、皆が抱えてるってことを愛しく思ったりもします。しをんさんは、そこを描くのがとってもお上手ですよねえ。しをんさんにしか書けない物語だなあと思いました。
ERI
2011/10/21 01:46
ERIさん、ありがとうございます(^^)。
いえいえ、お気になさらず♪
私、しをんさんのこういう作風が、ほんとに好きです。
普通に見える人たちも、ある面ではぎこちなく生きてて、その姿が愛おしい。
〈ひと〉というものを、しっかり見つめて描いているところが素敵だと思います。
水無月・R
2011/10/21 22:45

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