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zoom RSS 『深泥丘奇談・続』/綾辻行人 ◎

<<   作成日時 : 2011/10/19 11:33   >>

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『深泥丘奇談』に続く、綾辻行人さんの怪奇幻想譚シリーズ第2弾です!
彼岸と此岸がいつの間にか入れ替わるような、知っているはずの町がどこか違う異界になってしまってるような、そのぞわぞわする落ち着かなさ。周りの人は平然としているのに、自分だけが感じる違和感。
常に、〈怖ろしくおぞましい経験をした――ような気がする。〉と曖昧に霞んでしまう記憶。
これは、イイです!素晴らしいです『深泥丘奇談・続』

いやぁ〜、前作でももうメロメロでございましたが、今回もまあ、スンバらしく私の心をガッチリ掴んじゃいましたね!
あの、ひたひたと忍び寄る不安感、不協和音・・・狂っているのは自分なのか、世界なのか。自分の知らない、幼少から住んでいるはずのこの町の因習。この世のものとは思えない、妖異の気配。
怖ろしいけれど、いつの間にかその世界に引き込まれるような。深泥丘病院だけでなく、深泥丘の町全体から漂い溢れる、不穏な空気と気配。
うぉぉぉ〜〜!怖い怖い怖い〜〜〜ッ!

主人公の作家・私は、数年前から、激しい眩暈と曖昧になる記憶に悩まされている。
行きつけの〈深泥丘病院〉には、左右の眼帯と眼鏡でしか区別のつかない3人の石倉医師がいる。咲谷看護師はどの診療科にも現れるどころか、病院外でも私の眩暈の窮地を救うが、何故そのシーンに必ず現れるのか。「******」とは、「*******」とは、何なのか。私の幻視の中で飛翔する巨鳥や猫目模様を持つ生物たち。
息をする空気すら、重くねっとりと絡みつくような、異空間の気配。だが、誰もがそれに気づかない、というよりそれに違和感を感じているのは自分だけのようだ。何かがおかしい―――ような気がする。

「鈴」
迷い込んだ神社で鈴が鳴る。誰もいないのに。そして、私の頭の中でも、その音が…。
「コネコメガニ」
実は、甲殻類が怖い。だが、コネコメガニは甲殻類ですらないという。
「狂い桜」
閏年の狂い桜は、良くない。それを打ち消す、厄除けのまじないとしての行為と、その結果。
「心の闇」
こんな夢を見た。―――ような気がする。心の闇を取り除く手術を受けた私。
「ホはホラー映画のホ」
こんな夢を見た。―――ような気もする。刑事の私と警察医の石倉医師が、連続殺人事件の5件目を発見してしまう。
「深泥丘三地蔵」
深泥丘には、3つの地蔵がある。消失しているはずの一つめの地蔵を発見した私は、その開眼を・・・。
「ソウ」
刑事の私と石倉医師が、生を粗末にする者が殺されてゆく事件を追う。という夢を見てしまった。―――ような気がして・・・。
「切断」
50のパーツに分けられた、死体。犯人は、50回切断したという。その矛盾とは。
「夜蠢く」
私が見つけて咬まれてしまったのは、〈あらぬもの〉だったのか?猫目模様の恐怖。
「ラジオ塔」
特定の年齢にのみ聞こえる、音がする?老いた者たちは泣き、子供たちは嗤う。そこから飛び出そうとする禍々しい何か。突如空から舞い降りる巨鳥はそこへ飛び込み・・・。

夢オチな3編がいい。漱石の『夢十夜』の手法を借りながら、きっちり物語を深泥丘の世界に迷い込ませている。大体、こんな夢を見たような気がするって言っても、この作家の場合は夢だったのか現実だったのか、かなり怪しい。もしかしたら、深泥丘の別の平行世界では、私は作家じゃなくて刑事で、石倉医師も切れ者の監察医で・・・深泥丘にはホラー映画も真っ青の怪事件が頻発しているのかもしれないじゃないか。
曖昧に滲み広がるこの世界では、虚実が反転し、何が本当かなど、断定できるわけもない。主人公は、いつ自分を見失うかもわからないほど、混乱している。
しかし、怖ろしいのはその混乱や記憶の曖昧さを許容してしまっている、主人公のこだわらなさ…のような気がする。
だけど、とりあえず、せっかく取り除いた「心の闇」をもう一度取り込んじゃうのは、如何なものかと思いますよ?夢オチとはいえ(^_^;)。

前作でも思ったんだけど、主人公と同年配のはずの奥さんが、妙に明るく可愛らしい。子供がいないからか、本格ミステリ作家という難しいご主人を持ってるからか、夫妻の会話は明るくカラッとしているのに、どこか微妙にかみ合ってない感じも、実はちょっと怖かったりする。次作あたりで、何か怖ろしいことが起こってしまうんじゃないか、とヒヤヒヤするのだ。
ご近所の森月夫妻の普通っぽさ(生きてるコネコメガニをバリバリ食べちゃうんだけど)も、何かしら、怖い。
・・・・ていうか、この作品全体が怖いんだよ!(笑)。
コネコメガニのたてる「みゅ、みゅみゅっ・・・」という音(鳴き声?)も怖い。猫の鳴き声のようで、見かけはカニ、だけど甲殻類ですらなく脚が十三本あり、「***」の仲間だとは…怖ろしすぎる。「***」が何か、全然わからないのに、怖い。

私が一番気に入ったのは、「深泥丘三地蔵」。三つの地蔵のうち消失した一つめを見たと主張する男は、気が狂れているという。その男は似て非なるこの町の地図を描き続けているという。
この町のようであって、この町ではない。
主人公が、いつもあえて明文化せず不気味に感じていること。やはり、主人公は気が狂れているのか。
そして、一つめ・二つめ・三つめ、という名称の事実。そして、巨鳥の眼を得て発見した一つめの地蔵が開眼し、あふれる水に飛び込んだ巨鳥は怪魚となり、水底に幻の町の気配を感じた―――ような気がする。
二重三重に仕掛けられる、幻想の世界。その中ではもはや、主人公は人の姿を維持できていない。いつか、主人公は自らを失って、幻想の世界に閉じ込められて(閉じ籠って)しまうのではないか…。
そんな余韻のある終わり方が、怖かったけれど、良かった。

ホラー映画のコピーキャットな事件が起こる「ホはホラー映画のホ」「ソウ」ですが、ホラー映画の知識がなくてもちゃんと読めます。ただし、「13日の金曜日」を模した事件の経緯には、ぎゃ〜!ってなりました。ああ、夢でよかった・・・てあれ?夢じゃないんじゃないの、ってさっき自分で書いてたような…うわぁ、混乱する〜。

猫目模様を持つ、怪しげな生物たちが、あちこちで登場。呪いの文様?!だったりするのかもしれないですな。
その文様は見えないけれど、茫洋とした生物(含む人間)の絵があちこちに意味深に出没。基本墨絵のごときモノクロの中に数か所、薄い紅色がもやもやと加えられる。いかにも不穏さを煽るようなその色の入り方に驚いて、不安が広がり、息が苦しいような気になる。
この装丁をデザインした祖父江慎氏も、綾辻さん同様に怖ろしい人なのだと思う。

(2011.10.18 読了)

深泥丘奇談(続)
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幽ブックス 綾辻行人 メディアファクトリー発行年月:2011年03月 ページ数:299p サイズ:単


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