蒼のほとりで書に溺れ。

アクセスカウンタ

zoom RSS 『聖なる怪物たち』/河原れん ○

<<   作成日時 : 2012/02/07 12:42   >>

ブログ気持玉 0 / トラックバック 0 / コメント 0

飛び込み出産を発端とした医療ミステリーで、新聞の書評でも取り上げられていて興味を持った、『聖なる怪物たち』。なんというか、ドロ〜っとした読後感ですなぁ・・・。
誰もが、必死に何かを守っている。だが、誰もが、悪い。でも、私だってそれを断罪することはできない…。
河原れんさんのこと、全然知らなかったのでウィキペディアで調べたんですが、作家専業の方ではなく、映画脚本描いたりするクリエイターという括りの方のようですね。
で、この作品、ついこの間からドラマで始まりました。…確かに、ドラマにしやすそうな物語だわ、うん。

産科医がいない夜間救急に、飛び込み出産の妊婦が現れる。当直の外科医の帝王切開手術で子供は生まれてくるが、妊婦は死亡。直後、手術に立ち会った看護師長と看護婦のもとへ男が現れて、手術について口止めをし、脅していく。手術を担当した外科医は、医療ミス疑惑をちらつかされて病院を辞める。生まれた子供の周囲にはそれぞれ思惑を持つ大人たちがいる。子供を引き取った夫婦、その姉、病院再建を願う院長。子供の出生の秘密の周りに何重にも張り巡らされる嘘。嘘と嘘は絡み付き、強固に子供とその関係者を守るかに見えたが、次第に綻びはじめる。子供の、本当の血縁上の親。だが、そのことは、生まれてきた命にとって、良いことなのか。すべての登場人物たちは、後悔と苦みを心に食い込ませながら、生きていくことになる。

現代医療の問題(人手・資金不足)、不妊治療・代理母出産の問題点など、社会問題的な面もあるけれど、やはりクローズアップされているのは「聖職者」と呼ばれるような、医療従事者や教育関係者のエゴや矛盾と心の弱さ、世間的な立場の弱さ。
物語の冒頭に入る独白は、登場人物たち誰にも当てはまる。誰がこのモノローグを語ったとしても、おかしくない。
誰もが、仮面をかぶっている。かぶっていることにすら気づかないままに。

代理母出産をたくらんだ夫婦と代理母。それぞれの思惑と計画。
出産は病気じゃないけれど、無事に子供が生まれてくるかどうか、そしてその子供が心身ともに健全であるかどうか、そしてももちろん妊婦の無事ですら、何の保証もないのだ。代理母出産を、隠し通そうというのには、無理があるなと思った。

中心的登場人物である外科医・健吾も、正義感に突き動かされて謎を追い、真実を探り当て、関係者の前で暴き立てるけれど。だが、子供を正しく警察に届けることはできない。子供の出生の秘密を葬ることで得る、自らの保身や病院への助力、患者たちのためになること・・・・。雁字搦めになって、身動きが出来なくなり、子供を手渡してしまう。
そうすることが、子供のために、良かったのか。判らない。表面的には、裕福な家庭で手厚く育てられることの方が幸せだろうけれど。本当のことを、子供が知る日が来たら。

そんなこんなで、ドロ〜っとした読後感なのですよ。
誰もが、何かを守るために、悪いことだと知りつつ、行ってしまう。あとになって後悔しても、取り戻せなくて、重ねる嘘と作り事。ずっとそれを心の中に、どす黒く抱きながら、それでも自らにできることをして、生きていく。
登場人物たちに、後悔が晴れる日は来ない。

(2012.02.07 読了)

聖なる怪物たち
楽天ブックス
河原れん 幻冬舎発行年月:2011年05月 ページ数:309p サイズ:単行本 ISBN:97843


楽天市場 by 聖なる怪物たち の詳しい情報を見る / ウェブリブログ商品ポータル



テーマ

関連テーマ 一覧


月別リンク

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!
ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。
→ログインへ

トラックバック(0件)

タイトル (本文) ブログ名/日時

トラックバック用URL help


自分のブログにトラックバック記事作成(会員用) help

タイトル
本 文

コメント(0件)

内 容 ニックネーム/日時

コメントする help

ニックネーム
本 文
『聖なる怪物たち』/河原れん ○ 蒼のほとりで書に溺れ。/BIGLOBEウェブリブログ
文字サイズ:       閉じる