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zoom RSS 『傷痕』/桜庭一樹 ○

<<   作成日時 : 2012/04/09 20:51   >>

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キング・オブ・ポップがこの世を去った。彼の歌声を聴かない日はないというぐらい、世の中に浸透し、熱心な平和活動などで名を馳せた、偉大なる男が。彼は11歳になる娘(だと言われる少女)と、銀座の廃小学校を改築した「楽園」に住んでいた。
最近の桜庭一樹さんの作風を、私は勝手に〈人生泥沼系〉と呼んでたんですが、本作はそんなことはなく、ちょっと安心。何せタイトルが『傷痕』だなんて不穏な単語だったんで・・・。

私はマイケル・ジャクソンについてあまり詳しくないんだけど、生前の彼を取り巻く出来事や、彼の死とその後のいろいろなことがモチーフになってるんだろうな、っていう程度のことはわかりました。
ただな〜、「キング・オブ・ポップ」という名称がつくほどの大スターが、日本から生まれるか?とか、日本人のポップスターの死が、世界終末時計を進めるか?…ううむ〜、想像がつかない。
まあ、あまり気にしてもどうかと思ったので、マイケル・ジャクソンのことはあまり考えないようにして読みました。

銀座の廃小学校、ってところでまず 『赤×ピンク』を思い出しました。もちろん、全然物語は違うんですけどね。
そんな一等地を個人が、本当に個人的な住宅及び行楽地として使うってアリなのかしらん。しかも空撮防止のために、特殊な赤外線でガードし、侵入者を防ぐために大量の警備員を雇う。大勢の子供たちを『楽園』に招待するのだが、彼らは中での出来事を口外しないという、守秘義務の契約書を書かされる。
派手なパフォーマンスで聴衆を引き付ける傍ら、平和運動への多大な助力、貧しい子供たちを遊園地を併設する自宅に招く、いつの間にか連れてきた幼子を自分の娘と言い、彼女のプライバシーを守るために外出時には大きな仮面をかぶらせる。
彼の行動は常に世間の注目を集め、話題となり、多くの人々が、彼に魅了されていた。
そんな彼を取り巻く人々が、彼について語る。
自分の成長とともに、彼をつかず離れず見つめ続けたサラリーマン。彼のスキャンダルを暴こうと追い続けた、イエロージャーナリスト。彼を虐待で訴えた少女。彼を支え続けた、同じミュージシャンの姉。彼の姉の運転手をしている女性。娘である〈傷痕〉。

いろいろな人が〈彼〉を語るけど、私的に一番印象的だったのは、イエロージャーナリストの滋田夏生。ひたすら、〈彼〉の有罪を求めて、執拗に関係者を追い回して取材をし、扇情的な記事を書き。だけど、〈彼〉の死を息子から聞いた時、一瞬にして虚脱する。いろいろなことを考え、だが〈楽園〉に侵入するために、再び立ち上がる。嫌な男だけど、芯が一本通っていて、だけど弱くて虚勢を張っている。アクは強いけれど、純粋な面もあり、なんか、非常に人間臭い。好きかといわれたら、好きではないけれど、印象的な人物であった。

彼らが語る〈彼〉は、偉大で、輝いていて、それでいて孤独だ。子供のころから芸能界を泳ぎ切ってきたため、子供らしい生活を送ることなく大人になり、「キング・オブ・ポップ」として人々に求められるがままに、疲弊した心身を虚像で隠して、ある日突然、世界から去った。
取り残された〈傷痕〉が、楽園を出て普通の子供として生きていくことを選んだことは、必然だったのかもしれないと思う。
そのために必要なことは、たぶん彼のファミリーがバックアップしてくれるだろう。ただ、彼女に「普通の子供」としての生活ができるかどうかは、分からない。今まで、その経験が全くないのだから。
でも、どうか、世間から見つかることなく、彼女が普通の子供として〈彼〉が送ることが出来なかった〈普通の人生〉を歩んでいってほしい、と思った。

作中で一度も名前を書かれなかった彼。彼は個人ではなく、シンボルだったのだと思う。傷痕には、シンボルではなく、個人としてのささやかな生活を送ってほしい、そう感じた。
そういう意味では、もうちょっと傷痕が語る章が長かったらいいのに、と思いました…。

(2012.04.07 読了)



傷痕/桜庭一樹
オンライン書店boox
著者桜庭一樹(著)出版社講談社発行年月2012年01月ISBN9784062174596ページ数33


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傷痕 桜庭一樹
傷痕著者:桜庭 一樹講談社(2012-01-12)販売元:Amazon.co.jpクチコミを見る この国が20世紀に産み落とした偉大なるポップスターがとつぜん死んだ夜、報道が世界中を黒い光のように飛びま ... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2012/04/09 21:35
傷痕(桜庭一樹)
・・・あれ? なんだか桜庭さんにしては、ズキズキドロドロ、ドロドロドロ・・・が少なかったような。このタイトルからして覚悟して読んだんだけど、子供の名前や登場人物の名前が相変わらず突拍子もないだけで、内容的にはそれほどでもなかったなぁ・・・。実在した人物を彷彿させる物語だからでしょうか。 ...続きを見る
Bookworm
2012/04/10 12:37

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは^^
そ〜なんですよね!傷痕っていうタイトルなのに傷痕の章が短いというか傷痕の事があまりわからないまま終わってしまったと言いますか…。それが残念でした。
そして滋田は私も印象的です。彼が一番傷痕を一人の人として心配していたような気がしました。
傷痕は普通の人として人並みの幸せを営んでほしいなと願ってやみません。
苗坊
2012/04/09 21:32
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
傷痕のことが、あまりわからないままに終わってしまったのが、残念ですよね〜。
ささやかだけど、人並みな生活、傷痕がそういう生活を送れるといいと、私も本当に思います。
水無月・R
2012/04/09 21:57
日本から「キング・オブ・ポップ」と言われるような大スターが生まれるのか?と、私もそこから違和感でした^^;全くピンとこなくって、本当に”お話”を読んでるんだな〜という心地で読了した作品でした。
傷痕についてもほとんど分からないままっていうのも、もやもやが残っちゃいましたね^^;
すずな
2012/04/10 12:44
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
そういわれてみると、すごく「フィクション」な物語でしたね。
傷痕のことがわからないままなのも、「お話」っぽいですもんね〜。
それでも、傷痕のこれからの人生が穏やかであるといいな、と思います。
水無月・R
2012/04/10 22:31

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