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zoom RSS 『白の祝宴 〜逸文紫式部日記〜』/森谷明子 ○

<<   作成日時 : 2012/07/02 16:10   >>

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『千年の黙 〜異本源氏物語〜』の姉妹篇、だと思います、たぶん。
香子(紫式部)の物語の作り手としての矜持、物語を世に出すために折れざるを得なかったことへ苦悩などを描いた前作。本作『白の祝宴』は、中宮彰子の出産前後を記した『紫式部日記』の成立の経緯を描く、王朝ミステリーです。前作でも、登場人物たちを生き生きと描いた森谷明子さんの文章が素晴らしいと感激してたんですが、本作もよかったです〜。二段組みで300ページを超える大長編で、読むのに時間はかかりましたが、満足いたしました。

『紫式部日記』が何故面白くないのか。源氏物語に比べて冗長な描写、時系列の混乱、いきなり入り込む書簡などの不思議を、新しい解釈で解明していて、とても面白い。・・・な〜んて言ってるけど実は私、『紫式部日記』の題名は知ってるけど、読んだことない(^_^;)。だけど、森谷さんのこの解釈により、「中宮彰子のお産の記録」を編纂させられる(←自らはこの仕事をあまり喜んでない)紫式部こと香子という姿が浮かび上がってきて、へぇ〜なるほどね、あの時宮中ではこんな事件が起こってたんだ〜、なんて野次馬的興味まで湧いてきちゃったりしました。

中宮のご出産を控えてざわつく土御門邸では、女房達による「中宮様のお産の記録を日記に書く」という一大イベントが進行していた。膨大なその日記を編纂するために、中宮女房として再出仕した香子は、その量の多さや内容のつまらなさにうんざりしていた。
中宮が無事若宮を出産し、続くお祝いの宴のさなか、藤原隆家邸を襲った盗賊の一味が土御門邸に侵入したことが判明する。
香子と藤原隆家邸の家人・義清の部下である小仲は土御門邸を探索し、情報収集にあたるが、盗賊の足取りはぷっつりと途絶えてしまった。
亡くなった先の中宮・定子の遺児である敦康親王と修子内親王は、現中宮の出産により日陰の身となり、隆家邸や伯父・藤原伊周の屋敷でひっそり暮らしている。
かのお子達の閉塞感をまざまざと感じる周囲の者たちの鬱屈も絡めて、物語は進行していく。
中宮を呪詛する呪符の発見、呪符を巡っての取り違えと勘違い。
香子の長らくの里下がりの、本当の理由。とある中宮女房の出自とその人となり。
様々な事件と謎が描かれ、最終章に少しずつ解きほぐされ、明らかにされる真実。
そして、母が編纂した『紫日記』にちょっとした手を入れる賢子。「この日記は残る」という言葉。

いやぁ…凄いです。
創作であるはずの、女房達の日記編纂にうんざりする香子とか、お互いを牽制したり出し抜こうとしたりする女房たち、自由に動き回る童たち、貴族社会の回りくどさや、台頭する武士たちの自負など、登場人物たちが生き生きと描かれているのが、とても素晴らしいです。今回、ストーリーが結構複雑だし、最初の盗賊事件が最後の方まで全然解決しないので、ちょっと読むのに疲れてしまう部分はありましたが、平安時代の宮中だって、いつでも雅でゆったりしてたわけじゃなく、ちゃんと生きてる人間が様々な思いを抱いて生きていたんだな、って感じられました。
彰子の女房・紫の君(ゆかりの君)の転身先とその意外な正体には、びっくりしましたけど。アクティブな人だなぁ。しかも香子も感心する文才がある。彼女の新しい女主人もきっと、彼女の存在に慰められることが多くあるんだろうなぁ…と思います。

前作では香子の代わりに情報を集めるために駆け回った女童・あてきが成長して阿手木となり、前作では微笑ましい恋をしていた岩丸(この物語では義清)の妻になっている。妻といっても、この時代は通い婚で、阿手木の住居および職場は香子の実家・堤邸である。この阿手木が、大人になったなぁ〜って思うんですよね、ホント。中宮および藤原道長からの度重なる要請に、再出仕した香子の代わりに、香子の父・藤原為時、宮仕えはしているけれどちょっと頼りない香子の弟・惟規、香子の賢子の世話や堤邸の万事を取り仕切る、立派な女房ぶり。でも、生来の活発さは失われていないのがいい。義清の危機にあっては藤原隆家邸にも駆けつけ、香子の依頼とあれば中宮の里帰り御所となっている土御門邸へも赴く。
義清の部下・小仲や糸丸たちにも慕われ、堤邸でも皆から頼りにされている。そんな彼女が出産を経て、更に強くしなやかになったような気がします。
最後の方で阿手木が、「賢子様が大人になったら義清のもとに行き一緒に生きていく」と言っていますが、これはまたのちの物語への伏線だったらいいなぁと思います。私、阿手木のこと好きですもの。彼女の物語、というのも読んでみたい気がします。

さて、残念なことが一つ(笑)。
文句言いの実資のおっちゃんは登場いたしません。前作のあちこちで、宮中行事はかくあるべしとか、最近の女房はなってないとか、ぶつぶつ言ってたこの小父様(堅物なのに物語好き)、いい味出してて結構好きだったんですけどねぇ。
次作『望月のあと 〜覚書源氏物語『若菜』〜』に出てきてくれないかしらん。

(2012.07.01 読了)

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逸文紫式部日記 森谷明子 東京創元社発行年月:2011年03月 ページ数:343p サイズ:単行本


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