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zoom RSS 『生霊の如き重るもの』/三津田信三 ○

<<   作成日時 : 2012/07/15 15:46   >>

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三津田信三さんの〈土着民族系ホラーミステリー〉刀城言耶『◎◎の如き●●もの』シリーズでございます。相変わらず、怪奇を合理的に読み解き、二転三転する推理を経て、納得のいく真相「らしきもの」が出た後で、(でも、本当に…?) とひっくり返されるラストは、全くもって目が離せない!
さて、本作『生霊の如き重るもの』(「いきだまのごときだぶるもの」と読む)では、流浪の怪奇小説家・刀城言耶はまだ学生です。ただし、怪異譚には目がなく、全部聞くまでは我を忘れて食い下がる、という悪癖はすでにガッチリ完成しています(笑)。

元華族の血をひき、真面目な好青年に見える刀城言耶ですが、先述の通り怪異譚に対する常軌を逸した言動は、周囲をドン引きさせるに値し、あちこちで有名になりつつあるようです。
学生の怪奇探偵デビューの短編集ってことで、ちょっと事件は小粒。でも、解ききれない謎が残ったり、最後に推理の方向と違うものがそっと存在していたりと、なかなかに面白いです。
じわじわ〜っと迫りくる怖ろしさ、(でも、本当に…?) と読者に感じさせて、すべてがひっくり返ってしまうラスト、怖いんだけど、小気味いい!

「死霊の如き歩くもの」
大学の恩師の紹介で、民俗学の権威である本宮武の別邸を訪れた刀城は、そこで起きた殺人事件を鮮やかに解き明かしてみせる。
「天魔の如き跳ぶもの」
大学の先輩・阿武隈川烏(あぶくまがわからす)から告げられた怪異を追って、竹林のある家を訪れた刀城。天魔の正体と真実を明らかにする。
「屍蠟の如き滴るもの」
本宮から紹介されて、大学教授でもあり怪奇小説家でもある土淵庄司邸を訪れた刀城は、犯人の足跡なき殺人事件を解決するが。
「生霊の如き重るもの」
大学の先輩・谷生のたっての願いで、復員してきた兄2人のどちらが本物かを調べに行った刀城。当主と跡継ぎにのみ起こるドッペルゲンガー現象。
「顔無の如き攫うもの」
通りがかった学生下宿から聞こえてきた怪異譚。無理やり参加した刀城は、一人の学生の幼少の記憶に合理的解釈を提示する。
が、その学生下宿を出た後に見たものとは・・・。

細かいストーリーや謎解きのいろいろを取り上げると、収集つかなくなりそうなんで、やめておきます。
しかし…いやぁ〜、阿武隈川先輩が酷いですな(笑)。インパクトがありすぎる。他大学の学生も恐れる、猛襲って・・・部屋の食べ物全部食い尽くされ、田舎から送られてきた食べ物も余すことなく嗅ぎつけ根こそぎって、すご過ぎです。正に天災(笑)。
そして、人の良さ(育ちの良さ)に付け込まれる刀城言耶のトホホさが、なんとも(笑)。ああでも、利用されてはいるけど、何となくうまく受け流している部分もあり、そういう意味ではお互い様なのかしらん?刀城もかなりの変人ですもんねぇ。

そうですねぇ〜、どれも面白かったですけど、「生霊の如き〜」が一番気に入りました。ドッペルゲンガー現象が、血筋に出たりするんですねぇ。ある意味、跡取りの証明になると言えばなるけど、それが起こると寿命は近い…。
しかし、当人を目の前にして、二転三転する推理を展開した後、「あなたが真犯人」って言うんだ〜。状況証拠しかないし、その犯人は刀城をそのまま帰らせてくれたけど、そうならない可能性もあったと思うのよね。犯人の性格をしっかり見切ったうえでの発言なんだろうけど、もしもを考えたらそれはちょっと無謀だよねぇ・・・。まあ、刀城の若さゆえの「推理したことは明らかにしたい」って意欲ということなのかしら〜。
そうそう、「神戸(ごうど)地方」が出てきましたねぇ。奥戸・初戸と、このシリーズに出てきた地域の名前も。刀城が神戸や初戸を訪れたのは、作家になってからだから、・・・ってことは実はのちのち〈谷生家の跡継ぎ〉を知る機会もあったんじゃないか・・・?おおっと、それは知らない方がいいことかもしれませんね〜。
あるいは〈因縁深き神戸〉で、これから先大きな事件と出会う、っていう伏線なのかしらん、なんて期待も抱いてしまったりして。

さてさて、学生・刀城青年はこの後〈流浪の怪奇小説家〉になり、様々な怪異譚と出会い、それを合理的に解決する真相(のようなもの)を明らかにし、そしてすべてをひっくり返すラストを迎えるわけですが。
ぜひ次作は、ガッツリ長編で、ホラー色満載、二転三転どころか猫の目の如く入れ替わる推理、そしてなぜかトホホの風が吹く、そんな物語が読みたいです。
短編集も面白かったけど、どんでん返しがちょっと小粒だったからな〜。

実は私、このシリーズではいつも、表紙のイラストに震撼させられるんですけど、今回も、怖いですよ〜。
生霊であろう二人の重なる青年。一人は艶やかに斜め後方に流し目をし、もう一人は邪まな微笑みを浮かべつつ前方をそっと見据えている。首や顔にかかる灰色の布は、包帯なのか。左手が優雅につかんでいるのは銃器か。ふふふ・・・ぞぉ〜っとしますねぇ。

(2012.07.14 読了)


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講談社ノベルス 三津田信三 講談社発行年月:2011年07月 ページ数:372p サイズ:新書 IS


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