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zoom RSS 『桜庭一樹短編集』/桜庭一樹 ○

<<   作成日時 : 2014/03/29 10:39   >>

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桜庭一樹さんらしい〈強化ガラス製の少女〉の物語もあれば、意外な組み合わせの物語もあり、空気感も色々の『桜庭一樹短編集』、大変楽しませていただきました〜

「このたびはとんだことで」
妻と愛人の狂気に満ちた攻防を見守る「俺」は。
「青年のための推理クラブ」
あの『青年のための読書クラブ』のスピンアウト?
「モコ&猫」
潔いファッションの女子。彼女を見つめるだけで満足の男の子。
「五月雨」
静かに雨の降る日、山の上ホテルで起きた、不思議な出来事。
「冬の牡丹」
ぼろアパートに一人暮らしをする男女のやるせなさ。
「赤い犬花」
都会育ちのぼくと村の子ユキナは、三本松を目指して道なき道を進んでいく。

バリエーション豊かですよねぇ。
出来事を外から見ているだけの物語、当事者となって活躍する物語。
語り手が少年だったり、青年だったり、少女だったり、30直前の女性だったり。
現実を貫く物語、幻想に紛れ込む物語。
生き生きと輝いている生もあれば、疲れて澱んでいる生もある。生き永らえることに倦む者、淡々と生きる者。
それぞれにドラマがあり、それぞれが色々な思いを抱いている。

私は、「五月雨」が好きかな。
山の上ホテルで、老作家から、中国地方に伝わる吸血族の物語を聞かされる若き作家。老作家が立ち去った後、現れたのは狩人の女。冷徹な亡者に姿を変えた青年に、女は矢を放つ。射抜かれた青年は、銀色の粒になって鉄砲薔薇の真紅の花弁と共に四散した。
幻想的で、うつくしく、淋しい。吸血族最後の一人となって、追われる者。家族を殺され、ひたすら追い続ける者。
フロントマンの目の前で付けられた決着。それぞれの中にある想いが、ぎゅうっと胸に迫ってきました。
山の上ホテルでなら、こんな事件は起こったかもしれない、そんな気がします。

「青年のための推理クラブ」
は、『青年のための読書クラブ』のパイロット版という事で、あの学園の読書クラブの少女たちの、生き辛さや葛藤がさらりと描かれ、でも最後に救われる、そこがよかったです。あのころの生き辛さは、本当に何もできない自分が嫌で嫌で、仕方なくて、たまらなかったです。そんな閉塞感と、ともだちによる救いが、鮮やかに描かれていました。

「このたびはとんだことで」は、「俺」がどういう状態なのかずっとわからなかったのだけど、最後に「何」だったかがわかって、うすら寒い思いがしましたねぇ。
妻も愛人も、「あれは私の男」と狂気の渦の中にいるんだけど、「俺」だって死んでも意識を残してて、平然と妻と愛人のやり取りを眺めてるんだから。
あぁ、桜庭作品の駄目な男だ、この男(笑)。いや、駄目というか、何もしないというか・・・。とにかく、こういう男は女を惹き寄せるんだけど、結局最後は修羅場か死かしかないのよねぇ。今作はなんと、どっちもだけど(^_^;)。
最後に、愛人が「俺」を手に入れる?んだけど、出来たらここは、妻の狂気が上を行っててほしかったかなぁ。

短編集ということで、物語は少々小粒でしたが、いろいろな「桜庭さんの世界」をいっぺんに読めて、とても興味深かったです。

そういえば、桜庭さんて、ひらがなを使って言葉を印象的に飾るのが上手いなぁ、って気が付きました。
特に「うつくしい」という表現。感じで「美しい」と書くより、柔らかで儚い感じがするような。
他にもさらっと漢字で書いてしまうことを、あえてひらがなにすることでより深い雰囲気を出す言葉が、たくさんあったように思います。
ううん、やっぱり桜庭さんはいいなぁ。

(2014.03.27 読了)

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桜庭一樹 文藝春秋発行年月:2013年06月 ページ数:252p サイズ:単行本 ISBN:9784


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桜庭一樹短編集 桜庭一樹
桜庭一樹短編集著者:桜庭 一樹文藝春秋(2013-06-13)販売元:Amazon.co.jp 一人の男を巡る妻と愛人の執念の争いを描いたブラックな話から、読書クラブに在籍する高校生の悩みを描いた日常 ... ...続きを見る
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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
本当にいろんなジャンルの作品が詰まっているのにどれも桜庭ワールドだなと感じるのが凄いなと思いました。
私は1番最初の作品が面白かったと言いますか印象深かったです。
確かにひらがなでの表現が上手いですよね。
この桜庭さん独特の世界をまたどんどん読んでいきたいなと思いました。
苗坊
2014/03/30 01:13
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
「このたびは〜」は、私も興味深かったです。エスカレートしていく狂気、淡々とそれを見つめる男…終わり方は必然、という気もしますよね。まあ私は妻が手に入れて哄笑して欲しかったですけど。
「ともだち」「いたい」「かなしい」などもひらがなだった気がします。
桜庭作品、たとえ〈人生ぬかるみ系〉でも、読みたいですね、やっぱり。
水無月・R
2014/03/30 23:16
バラエティに富んだといいますか、桜庭さんの魅力が一杯詰まった短編集でしたね。楽しめました。
「五月雨」良かったですよね〜!いつか、長編または、連作短編集みたいな感じで読めるといいなぁと思います。
すずな
2014/04/02 12:44
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
色々な桜庭さんの物語を読めて、楽しかったですね。
「五月雨」の物語、また読めたらいいなぁって思いますね♪
水無月・R
2014/04/03 21:01

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