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zoom RSS 『砂子のなかより青き草』/宮木あや子 ◎

<<   作成日時 : 2014/12/20 15:16   >>

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実を言うと、清少納言は苦手でした。才気煥発・当意即妙、『枕草子』というエッセイで宮中の注目を浴びる華やかさが、私には眩しすぎて。
でも、『砂子のなかより青き草』に描かれる清少納言は、頭は良いけれど、悩んだり迷ったりしながら、失意の連続の中でも少しでも明るさを見つけようと苦心する、とても現実味のある女性の姿をしていました。結構、好きになったかも。
宮木あや子さんの、しっとりした平安世界を堪能しました。

なんとしても、中宮定子を守り仕えたいと思い、定子の兄・伊周に密かな思いを抱きつつも、まずは定子を思う心を優先した清少納言こと、なき子。この世の春を謳歌していた中宮定子の近辺にも、少しずつ包囲する影の勢いが増してくる。定子の父・道隆の死後、一族は道長一派の策に嵌り、どんどん追い詰められていく。
宮廷を追われ、それでもなお帝を一途に慕う定子。帝も定子を大事に思っているのだけれど、周りを道長派に固められなすすべがない。
なき子となき子の同僚の宰相の君、二人の年増(と言っても三十路)が見送った定子の最期。そして、二人はともに旅立つ。

定子と一条天皇の間にある真実の愛情、なき子と伊周の複雑な恋心、夜離れして尚なき子に助力を惜しまない則光、宰相の君のひた隠しにした終わってしまった想い、定子主従の互いを大事に思う心・・・強い思いがあふれる物語でした。
『枕草子』が定子の日々を伊周に伝える手段であったこと、そのため美しいものはより美しく、楽しいものはより楽しく、嫌なものと題しても並べ立てるその中におかしみを加え、描いて行ったそのことは、なき子の心のよりどころでもあったのかもしれないな、と感じます。

冒頭に書いたように、平安朝二大女流作家で言えば「作品に対する矜持を描いた物語」の多い紫式部派だったので、本作で描かれる紫式部には、本当に戦慄しました。乳児誘拐、放火、呪詛。冷徹に定子追い落としを図るその言動、怖ろしかったです。
そしてそれを知っていて(或いは指図して)、なき子に「え、なあに、まだ死んでないの定子ったら」と言い放つ彰子の性格の悪さ!身分高き姫君がそのようなことを平然と口走るとは、なんて驕り高ぶった・・・と、酷く嫌な気分になりました。いくら、藤原道長一族の権勢が世を圧倒していたとしても、余りに品性が下劣だ・・と感じました。
まあ、中宮側との対比のために、あからさまに酷く描かれたのかもしれないのですが。

定子亡き後、なき子が雪に言葉で描いた情景、宰相の君と二人でそのような場でひっそりと暮らしていけたら、幸せではないにしても心静かに暮らせたら、なき子と宰相の君は報われるのかもしれない、と思いました。

(2014.12.04 読了)

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宮木あや子 平凡社発行年月:2014年06月05日 ページ数:253p サイズ:単行本 ISBN:9


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砂子のなかより青き草 宮木あや子
砂子のなかより青き草著者:宮木 あや子平凡社(2014-06-20)販売元:Amazon.co.jp 寂しい。寂しい。寂しい。でも強くなりたい。清少納言が枕草子に綴った嘘と真実とは?R‐18文学賞デビューの ... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2014/12/20 21:51
「砂子のなかより青き草」 宮木 あや子
砂子のなかより青き草 寂しい。寂しい。寂しい。でも強くなりたい。 清少納言が枕草子に綴った嘘と真実とは? R‐18文学賞デビューの実力派による平安時代小説の大本命。 ◆◆◆ 年を重ねてから士官をした清少納言。 敬愛する中宮定子様を守るため、ただ強く、強くあろうとする清少納言の姿が少し痛ましくもありました。 先日ちょうど史跡巡りなるものをして、平安の頃の建築物のオブジェなどを見たこともあり、ありありとこの時代に想いを馳せられました。 枕草子といえば、男性に媚びず、定子を心から慕い、時に拗ねたりもす... ...続きを見る
BOOKESTEEM
2015/03/22 10:12
砂子のなかより青き草(宮木あや子)
宮木さんが描く清少納言。 ...続きを見る
Bookworm
2015/05/13 12:47

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コメント(6件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは^^
私も清少納言ってあまりいい印象を持っていなかったです。学校の授業の先入観って怖いなと思います。それが原因かはわかりませんが^^;
清少納言の人間味がひしひしと伝わってくる作品でした。最後のシーン、本当に良かったですよね。
冲方さんの「はなとゆめ」も清少納言のお話で、私は好きでした^^
苗坊
2014/12/20 21:54
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
この物語で、清少納言のイメージが変わりました。先入観って怖いですね(^_^;)。
宰相の君となき子の有能なもの同士の会話が、素敵でした。
もちろん、最後のシーンは、本当に心に沁みました。
水無月・R
2014/12/20 23:00
こちらにもこんにちは☆
時代ものって、どこに光を当てるかで全然見え方が違ってきますよね。
それに書き手によっても登場人物の人柄が結構違ってたり・・・もっとも、それって時代ものに限らずなんでもそうだと思うんですが、史実の人物で自分が存在を知っている人だけにいろんな人が書かれる時代物を読む楽しさがありますよね。
枕草子も大好きなので、この時代のこの情緒ある感じがなんとも言えずよかったです。
本書を読んで、枕草子に、切に願うような祈りみたいなものが込められている気がして、また改めて読み返してみたくなりました。
yoco
2015/03/22 10:17
yocoさん、ありがとうございます(^^)。
ホントにそうですねぇ。今までどちらかというと、清少納言は鼻持ちならない才女、っていうイメージが・・・(^_^;)。
物語そのものを素直に楽しむことも、大事なんだなと、改めて思った作品でした。
先入観を叩き壊されるというのも、よい読書体験ですね。
〈思い〉の強さが、物語をより美しく切なくしていたと思います。
水無月・R
2015/03/22 20:23
私もこの作品を読んで清少納言のイメージが変わりました。…変わりましたというか、読む前は「紫式部と同時代に生きていた人で枕草子を書いた人」というくらいの認識しかなかったんですけどね(^-^;この作品を読んで清少納言に興味がわいてきました。枕草子もちゃんと読んでみたいとも思いましたが、それはいつになるやら…。

水無月・Rさんが書かれているように「強い思い」があふれる物語でしたね。それぞれの思いに切なくなったりもしましたが、それ以上にそこまで思えるということを羨ましくも感じました。
すずな
2015/05/14 05:25
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
清少納言と紫式部、平安女流作家として並び立つ存在なのに、案外皆さん清少納言の人物像がなかったんですね。よかった、私だけかと思ってた(笑)。
枕草子は、高校と大学の古文でちょっとやりましたが。。。いつか、…ううむ、私にいつかは来るかしら(^_^;)。
「強い思い」は、やっぱり宮木さんならでは、でしたね♪
水無月・R
2015/05/14 17:55

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