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zoom RSS 『黎明に叛くもの』/宇月原晴明 ◎

<<   作成日時 : 2015/01/14 15:40   >>

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昨年、外伝『天王船』を先に読み、年をまたいで本編である本作『黎明に叛くもの』を読み始めました。重厚で緻密で幻想的で・・・読むのにすごく時間がかかりました(なんせ文庫の厚みが3センチ以上ある)。が、やっぱり読めてよかったです。
歴史と幻想の物語の名手・宇月原晴明さんの描く戦国絵巻、絢爛豪華で少し切なくて、胸を詰まらせながら読みました。

『天王船』を読んだとき、とにかく《球体関節人形が怖い》と思っていたので、読み始めて「果心」が出てきた時には、ドキッとしました。
ですが、読み進むにつれその存在にも慣れ、無邪気で露悪的な「果心」の活躍に幻惑されるように。
そのうち球体関節人形であることは慮外になり、久秀との剽げたやり取りに笑ったり、人ならぬ身軽さでの動きに目を見張ったり、物語の一員であることを受け入れていました。(でもやっぱり球体関節人形自体はまだ怖い)

『天王船』と関わりあるエピソードが出て来るたびに、なるほどあの物語の本筋ではこんなことが起こってたのか・・・とワクワクし、各章の冒頭文末に引用される国内外の資料と史実と物語の融合に眩暈を覚えながらも納得し。
とにかく、色々なことが起こり、知っている史実をなぞりながらも細部にオカルティズムをにじませた異質な要因が描かれ、濃厚な退廃の気配に惑わされながら読んでいました。
・・・なんだろう、何から書いていいのか、全く分からない。

久秀は、波山の法(イスラム暗殺技術)を見事に使いこなして天下を得、かつての兄弟子・斎藤道三に認められたかった。ただそれだけだったのに。
天下を二分しようと誓い合った兄弟子は織田信長に自分には出来ない天下取りが出来ると認め、久秀にも信長の下につけと遺言する。
何度も叛き、欺き、天下の名将たちの欲望に揺すぶりをかけ、なんとしても信長の天下を挫こうとし、それでも必ず阻止される久秀が、後半哀れで仕方なかった。
むきになればなるほど、信長という光輝く存在に退けられてしまう、明けの明星たる久秀。
それでも最後に、道三の縁戚である明智光秀に己の怨念を流し込み、世に名だたる《本能寺の変》を起こさせることに成功した、その妄執。

本作に描かれなかった、一つの背景を私は想像するのです。
何故、信長は、何度叛かれても、久秀を茶道具ひとつで許したのか。それは信長が「美濃のお父」とよぶ道三からの依頼だったのではないか。
「かつて弟弟子であった久秀を、よろしく頼む」と。
だからこそ、最後まで信長は久秀を自分の配下に組み入れ保護しようとしていたのではないかと、そう思うのです。
ただ、それは全く久秀の望むところではなく。あのような結末を迎えてしまったのではないかと。
久秀の妄執は、自らを滅ぼし、そしてのちに光秀をも滅ぼしてしまった。そう感じました。

物語のあちこちに花咲き乱れる庭の風景が描かれます。数々の薬草、薬木。鳥兜の青、罌粟の赤、黒、白。風が吹けばいっせいに花を揺らし、妖かしの香りを振りまき、白昼夢を見せる。
美しいものは妖しく、傀儡の果心もまた美しく、子供のように残酷で無邪気。
老いた身でも美しかったという久秀。
その美しさが、逆に哀れでありました。

・・・うう〜ん、なんだか非常にとりとめないことばかり書いてしまっています。
本当はイスラムを設定に持ち込んだ見事さとか、そういったことにも言及したいんですが、どうにも文章力不足で。
宇月原さんの作品を読むと、自分の文章表現力の稚拙さが際立ってしまいますね。
それだけ、濃厚で素晴らしい作品だという事なのだと、居直ってしまいましょうか(笑)。
ますます、他の作品も読みたくなってきました。ただし、前にも書いたとおり、とにかく根性がいるのですよ(^_^;)。ゆっくり、一つ一つの作品をかみしめながら読んでいきたいと思います。

(2015.01.13 読了)

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