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zoom RSS 『豆の上で眠る』/湊かなえ ○

<<   作成日時 : 2015/06/03 21:42   >>

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良くも悪くも、湊かなえさんだなぁ、という一冊な気がする。
非常に映像的。ワンシーンワンシーンが、きっちりと構成されてる感じ。
アンデルセ童話『えんどうまめの上にねたおひめさま』を疑惑のモチーフに、家族とは何かを問うミステリー。
『豆の上で眠る』姫君は、果たして、本当はいたのか。

子供の頃、読んだことあります、『えんどうまめの上にねたおひめさま』。
そして「は?なんじゃそりゃ?」と思った記憶がありますねぇ。
いやいやいや、羽根布団を何十枚重ねた下に豆仕込んで、気付かないのは本物の姫君じゃないって・・・、それはただの被害妄想娘だよ、的なことを考えましたね、子供心に(笑)。もし本当に判るんだったら、本物の姫君は不眠症になっちゃうよ?多分、ちょっとのシーツのしわも気になるだろうしね。そんな過敏症なおひめさまを嫁にもらった王子様は、苦労するだろうな、と。
まあ、わたしのそんな感想は置いといて。

病弱な姉・万佑子に絵本を読んでもらっていた妹・結依子。
小さいころ、その絵本を読んで、よくわかんないね、と言って実験までした。
ある日、万佑子は行方不明になり、2年後居なくなった間の記憶を失って戻ってきた。その姉に、違和感を抱く結依子。その違和感一つ一つはちょっとしたものだし、解消されることすらあるのだけれど、それでもなお、結依子の中で大きく育ってしまう。
そして、13年もたったある日、姉が一緒にいた友達を見かけて、その疑惑はとうとう爆発してしまう。

家族とは何か・・・って、難しいなぁ。姉妹の絆って、どこで生ずるのだろう。何を持って、そう称するのだろう。
私も、1学年下の妹がいるのですが、彼女との絆があるかと言ったら、よく判りません。20年以上一緒に暮らし、今はお互い結婚して別の家族を持っていて。もちろん大事な妹だと思うし、何かあったらできるだけ力になりたいとは思いますが、この『豆の上で眠る』の姉妹たちが思っているような、姉妹だからこその有無を言わさぬ絆って、本当にあるんでしょうか。

最後まで、親きょうだいにまで真実を隠されて、可哀想だったのは結依子。戻ってすぐじゃなくても、どこかで早めに真実を教えてあげていたら、姉妹の関係がこんなにこじれることはなかったんじゃないかなと思います。それに、母親に「万佑子探し」を押し付けられ、危険にさらされたり、友達に嫌われていじめられたり、酷い目に遭ってるし。もちろんその「万佑子探し」を請け負わされることだけでも、心に傷を受けていたと思います。
母親がだんだん狂気に支配されて、通常では考えられないことに結依子を利用するようになり、ずっとずっと「ダメ!ダメなんだってば!あなたは万佑子の母だけど、結依子の母でもあるのに!」って、心の中で叫び続けてました。

先ほど結依子が可哀想と書きましたが、万佑子だって可哀想なんですよね。せっかく本当に家族の元に帰ってこれたのに、きっと血の繋がりという姉妹の絆で受け入れてくれると信じていた結依子が、いつまでも自分を疑って、事件から13年も姉妹として生きてきたのに、それでも自分を本物として認めてくれないのだから。

事件のことを、なかったことにしたかった両親の罪。姉の罪。姉を認められない結依子の罪。結依子のことを慮れなかった万佑子の罪。全ての罪が最終章で明るみに出され、ぐるぐるとかきまぜられ、でも混ざることも昇華することもないままに、物語は終わりを告げる。
結依子の悲痛な叫びを残して。
〜〜本ものって、何ですか―――。〜〜 (文中より引用)

うっわ〜、後味悪いですよねぇ。どうして認められないのか。結依子と万佑子、両方からの立場で歯がゆかったし、切なかった。
両親の判断が、間違ってたんですよね。両親は、良かれと思ってやったことなのだろうけど。世間には知らせなくても、家族にはちゃんと教えればよかったのに。カヤの外に置かれた結依子に、もし本当のことが伝えられていたら、もっと違う関係を築くことが出来たんじゃないかと思うのですよ。

だいぶ最初の方で、何となくの予想がついてしまったので、真相が明るみに出されるまでが、長かった・・・(^_^;)。
その真相のもう一ひねりは全く予想外で、でも納得がいったというかこれも一つの狂気だなって思ったのですが、ちょっとまとめ方が急ぎ過ぎな感じがしました。
あとね、この文章の最初にも書いたんですが、なんとも湊さんらしい〈映像脚本〉的だったんですよね。たぶん映像の方がテンポよく進むから、こんなに長いと感じなかっただろうし、意味ありげな演出とかも挟めたと思うんですよ。これ、映像化難しそうで案外簡単かも・・・。
更に言うと、ちょっと湊さんて〈キーワード連呼しすぎ〉感があるんですよね、私。確かに、物語の中のキーワードって大切だけど、あんまり何回も出てくると鼻につくというか。その辺のバランスが難しいんだなぁ、って思いました。エラそうに何を言うって、自分でも思うんですけど・・・。

だからと言って、つまらなかったわけではなく、疑惑の重ね塗り、微妙な違和感から来る不快感、じわじわと迫りくる不安定感、そしてすべてが明るみに出た時の、圧倒的な事実の重みなど、物語としての迫力はやはりすごいなと思うのでした。

(2015.06.02 読了)

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豆の上で眠る 湊かなえ
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苗坊の徒然日記
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結衣子の姉の万佑子は小3の時、帰宅途中に行方不明になったが、2年後に突然帰って来た。帰って来た姉に喜ぶ家族だが、結衣子は「本当の姉なのか」と疑問に思う。その違和感はずっと拭えないまま13年が過ぎ・・・。 ...続きを見る
Bookworm
2015/06/05 12:27

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは^^
「えんどうまめの上にねたおひめさま」って初めて聞きました。知らなかったです。こっちの絵本を読んでみたくなりました^^
この作品はひたすら結衣子が可哀想でした。お母さんがしたことは決して許されることではないですよね。ちゃんと始めから説明していれば…と元も子もないことを思いました。
後味悪かったです^^;
苗坊
2015/06/04 21:29
私にも妹がいるんですが、姉妹の絆と言われてもよく分かりません^_^;もちろん、大切な家族だとは思うんですけどね。
両親がせめて結依子にだけでも真相を語っていれば、それなりに消化できて、違った絆が生まれたかもしれないのになぁと思ってしまいます。
後味は悪かったけれど、湊さんらしい作品で、そういう意味では面白かったんですけどね^_^;
すずな
2015/06/05 12:37
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
「えんどうまめの上でねたおひめさま」の概要を中1の息子にしましたが、「それがおひめさまの証明になるの?」と言ってました(笑)。
真実を隠される妹、いつまでたっても疑われる姉。どちらも可哀そうでした。
何故、結衣子に真実を教えなかったのだろうと、切なかったです。
水無月・R
2015/06/05 21:26
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
そうなんですよ、何で教えないのかと、むかむかしてしまいました(^_^;)。
確かにこれは、湊さん的後味の悪さですね〜、ハイ。
水無月・R
2015/06/05 21:29

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