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zoom RSS 『私はフーイー』/恒川光太郎 ○

<<   作成日時 : 2016/02/18 14:51   >>

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恒川光太郎さんの描く沖縄独特の民俗意識みたいなものは、常に死の匂いが付き纏う。
明るい光、輝く海、うっそうと茂る森、陽気な人々。生命力豊かなその島で、ひっそりと息づく彼岸の気配。
本作『私はフーイー』で、沖縄の森には狂人が棲み付いているイメージが刻み込まれてしまった・・・。私、沖縄に行くことがあっても、絶対森には入らない・・・!!

南国の島の強烈な日の光は、死を薙ぎ払わず、その影をより濃くする気がする。常に、生と死は隣り合わせで、そして気が付かない間に反転している。
そんな物語が7つ描かれる。
どの物語も、真の原因や発端が語られていないことに気が付きました。
現象として発生するも、その理由は人間の知る必要はない、ただ受け入れよ、という事なんでしょうか。そうだとしたら・・・、ひたひたと怖くなってきました(^_^;)。

気に入ったのは「月夜の夢の、帰り道」。唯一、救いがあるかもしれないラスト。
島の少女の「そんな風にはならない」の一声。
そして少年の「ぼくはそんな風にはならない!」の宣言。
妖怪女と不気味な男はかき消え、少女は「この島には、魔物がいるから気をつけて」と去っていく。
少年が呑み込まれてしまったかもしれない闇を、一瞬にして吹き飛ばした少女の気焔。
その気焔を浴びることこそが、タイラさんの望みだったのではないか。自分がせねばならないことを為したうえで、少女によってそれを打ち消されたかった。未来のタイラさんと大場が救われるために。かつてのタイラさんがしたかもしれない後悔を、発生させないために。タイラさんは、魔女だから。

「ニョラ穴」で描かれる、ニョラに支配される狂人と、その狂気がだんだん伝染してしまう主人公が怖ろしかったです。主人公は自分がおかしいかもと分かりつつ、それでも長い長い手記を綴る。自分が経験したと思っていることを。そのノートですら、夢の産物かもしれないと思いながら…。頭のどこかは冷静な部分がありながらも、狂気に飲み込まれる。これほど恐ろしいことはないのかもしれません。

しかしね、なんというかこの本、表紙の絵がおどろおどろしいのですよ。若い娘の左目の辺りにカブトムシらしきものがくっついている肖像画。顔にいく筋もの黒い汚れが付き、背景は真っ黒。大変、よろしくない気配が漂っている。この表紙絵だけで、充分ホラーですな・・・(^_^;)。

恒川さん、『夜市』『草祭』みたいな、郷愁漂うかそけき闇に潜む異界の物語は、もう書かないんでしょうか。やっぱり私は南国ホラーより、和製ホラーの方が好きなんですよねぇ。恒川さんのそういう作品、大好きです。いつか、日本人の心の奥に響く、怖ろしくもやさしく美しい物語、また読みたいです。

(2016.02.17 読了)

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