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zoom RSS 『海うそ』/梨木香歩 ◎

<<   作成日時 : 2016/06/11 22:13   >>

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梨木香歩さんの描く自然の風景は、静かで力強くて、淋しさと温かさに満ちています。
本作『海うそ』も、濃密な自然の気配とその中で息づく〈ひと〉の強さと弱さが描かれる、美しい物語でした。

大学の研究室の教授が遺した資料に心惹かれ、九州にほど近い〈遅島〉に渡りフィールドワークをする人文地理学者の秋野。島内で様々な協力者を得、かつて修験道で栄え、明治の廃仏毀釈で荒れ果ててしまった、島内部の寺院や自然風景などを巡る。
50年後の島の変わりようと、それでも淡々とひそかに続いていく自然の営みとひとの意識、失われても忘れられても、それでも確かに存在する何か。何か劇的なことが起こる物語ではないのだけど、なぜか心に染み入りました。

「海うそ」という言葉。
山深くそして山と海が近い急峻さを持つ南方の島ならではの湿気と温度差の生み出す蜃気楼をそう呼んだ人がいて。
どんなに島が様変わりしても、海うそが見えるこの島は、やはり変わらない。

かつて修験道の僧坊で育った者の遺した覚え書きと秋野がフィールドワーク中に廻った廃墟、島民を口ごもらせる民間信仰の衰退、そして戦争をはさみ50年を経てあまりにも変わってしまった島の様子。
様々な繁栄ののちに失われ、それでも島の自然は在り様を変えながらも連綿と続き、人々も代替わりして過去との繋がりは断たれてしまったけれど、それでもどこか根っこの部分でつながっているような、そんなほのかな温かさが残りました。

色々な動植物の名前が出てきて、知らないものやぼんやりとしか浮かばないものを一つずつネットで検索しながら読み進めました。
濃密な自然の気配にむせ返りそうでしたが、その分秋野が廻った土地の気配が感じられるようで、良かったです。

(2016.06.11 読了)

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梨木香歩 岩波書店発行年月:2014年04月 ページ数:190p サイズ:単行本 ISBN:9784


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