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zoom RSS 『絶唱』/湊かなえ 〇

<<   作成日時 : 2017/01/06 14:54   >>

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困ったなぁ…というのが実は一番の感想。
阪神大震災も東日本大震災も、〈外側〉にいたから。語る資格がない…と思ってしまう。
もちろん、物語を読むのであって、私が語る必要はないのだけど。
阪神大震災で罹災した湊かなえさんの描く、震災で心に傷を負って、人生が分岐してしまった女性たちが、南国トンガで新たな一歩を踏み出す物語。
一番最後まで読み終えて『絶唱』というタイトルの意味がやっと分かり、胸を打たれました。

「楽園」
自分を取り戻すために、この国に来たのだ。
「約束」
逃げるように来てしまったこの国で、きちんと歩き出す。
「太陽」
あの人みたいに、誰かの太陽になり、誰かを輝かせる。
「絶唱」
尚美さん、もうすぐあの震災から二十年です。

トンガでゲストハウスを営む日本人女性・尚美さん。
阪神大震災でそれぞれに傷を負ってもがいている女性たちが、それぞれの動機で訪れたトンガで、その尚美さんと巡り合い、現地の人々や自然とかかわりあう中で、自分なりの答えを見出していく。
彼女たちが抱えている、過去・悲しみ・後悔・現在と未来・希望の芽・・・。
余りにも大きな出来事の中で翻弄され、自分の中から奪われたものに囚われ、それでも再生していく彼女たちのひたむきな姿は、時に読むのがつらくなるほどでした。
そのつらさは、彼女たちへの同情ではなく、当時ろくに何もしなかった自分への恥ずかしさだろうと思います。
そのあたりがとても抉られて、つらかった。

一歩引いて、「物語」として読むと、つらい経験から一歩ずつ踏み出していく彼女たちから、勇気というか温かさをもらったような気がします。
最初は、それぞれの持つ「人としての心の弱さ」が鼻についてしまって、ちょっとイラついたりもしました。それでも、それぞれがその「弱さ」を自覚していて、このままではいけないと思っていることがだんだんわかってきて、素直に彼女たちの努力や変化を応援する気になりました。
すぐに大きくは変われなくても、弱さを克服し切れなくても、変わろうという意思がある限り、人は前を向いて生きていける。そう信じることができました。

「絶唱」が手紙形式で始まった時、(たぶん尚美さんはもう…)とわかってしまい、ちょっと辛くなりました。
「絶唱」で手紙を書く〈私〉は、湊さんであり、湊さんが取材した人たちであり、湊さんにはきっと届けたい〈尚美さん〉がいたんだろうなぁと。
もちろんノンフィクションではないのだから、すべてが事実であるということではありませんが。

初版発行日が2015年1月17日。
あの時から20年がたち、もうすぐ21年になろうとしているこの年末年始で、たまたま図書館の予約順が回ってきて読了したことは、「当事者」ではなく、何もしなかった私を苛みました。
それでも、湊さんが「書き続けること」を選んで、この題材を小説化してくれたこと、感謝しています。

(2017.01.01 読了)

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湊かなえ 新潮社発行年月:2015年01月22日 予約締切日:2015年01月20日 ページ数:24


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