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zoom RSS 『書楼弔堂 〜炎昼〜』/京極夏彦 ◎

<<   作成日時 : 2017/04/02 15:34   >>

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毎度のことながら、凶器になるレベルの製本ですねぇ、京極夏彦さん!!いやもう、京極さんの作品は、そういうものだと思っておりますけどね(笑)。逆にそうじゃなかったら、寂しいかも?!
『書楼弔堂 〜破曉〜』に続く、『書楼弔堂 〜炎昼〜』
書舗「弔堂」への案内人は、前作の元旗本の高遠氏から弔堂の近隣に住む元薩摩藩士の孫娘・塔子に変わり、彼女は明治の著名人或いはいずれ著名人になる人々と「その人のための唯一冊」を繋いでゆく。

欝々と自宅の近隣を歩いていた塔子は、「書舗を探している」という田山・松岡両氏に出会う。捜している条件に合う建物に彼らを案内し、一緒に店に入る。
弔堂主人は、彼らの話を聞きながら対話しながら、彼らに必要な「唯一冊」を渡してゆく。
塔子は、ある時は演歌師、またある時は心理学博士、のちの女性運動の始祖、のちの陸軍大将、そして勝海舟を案内し、あるいは弔堂で知り合いとなり、我々読者と引き合わせてくれる。

塔子は、女子高等師範学校を卒業しており、当時の女性としては学も教養もある方ではある。が、傑出した人物ではなく、父に「花嫁修業の一環」として学校へ通わせたのだと言われるぐらいの主体性のないままの卒業なので、世の中の在り方に一家言を持っているわけでもなく、弔堂での闊達な会話にはほとんど加わることが出来ず、聞き手一方。時折思うところを語るところで、いわゆる「物のわからぬ女子供」の言葉であり、私と同レベルぐらいの思考なのである。
そんなわけで、実は、とても塔子に親近感を持って読んでいたのでした。
なんだかずっと、塔子と同じ目線で、明治の著名人たちの会話に聞き入っていたような気がします。

その塔子、元薩摩藩士のおじい様に「読書」を禁じられているのは、やっぱり時代ですよねぇ。「学もいらぬ」という祖父、「女にも学という箔は必要」という父、でも二人の思う話の落ち着き先は「婿を取って家を継ぐ」あるいは「嫁に行き家には養子をとる」というもので、塔子に「結婚」を強いるもので。
当の塔子は、嫌ではないけどでもまだ自分が何かになるのは何となく嫌で、半端な自分を持て余しながら時を過ごしている。
その合間に弔堂とそこを訪れる客との交流があり、彼女の中で明確に変わる何かがある訳ではないけれど、たぶん彼女は自分自身と向かい合い始めることになる。

最終章「探書拾弐 無常」で話題になる、「幽霊とは何か」という定義。とても納得がいきました。何故幽霊は怖いことになってるのか、なぜ人は幽霊を見てしまうのか、この世とあの世の在り処とはどこか。
幽霊を見るのは、見る者が生者だから。京極さんの幽霊・生者の関係観の解釈が素晴らしかったです。

最初に出てきた松岡氏は、弔堂主人から「唯一冊」を与えられず、何度も登場します。
塔子の語りのおいても、各章の終わりに
〜〜いえ、それはまた、別のお話なのでございます。〜〜(本文より引用)
と、意味深に松岡氏については、繰り延べされるばかり。
松岡國男がいずれ誰になるかは、わりと最初の方で分かりました。名前と目指す研究の方向性とを考えるとこの人しかいないな!と。ただ、この人の前身が「新体詩人」だったのは、まるきり覚えてなかったです(^^;)。
松岡氏は、最後に弔堂主人から
〜〜貴方様の一冊は〜(中略)〜貴方様のお書きになるものと推察いたします〜〜(本文より引用)
と言われ、のちに何冊もの書物を記すこととなる。
さて、どれが彼の一冊だったのか。

著名人たちは「唯一冊」と出会ったから、著名人になり得たのか。
それこそ、それは誰も知らないし、別の話かもしれない。

でも、そうだったらいいな、と思えました。
塔子は彼女のための唯一冊に、まだ出会えてません。
そんな塔子は、どんな人生を送ったのでしょうねぇ。彼女も実在の人物なのかどうか、とても気になりますね。
物語の最後に弔堂主人から紹介されたのは「自転車の乗り方の教則本」。
・・・意外なチョイスですが、もしかしてこれがヒントなのかしら(笑)。

破曉、炎昼ときたら、次は何でしょう。黄昏?宵闇? ありきたりな語彙しか持たないのでろくな予測ができないのですが、続きがあることを期待しています。
〈百鬼夜行シリーズ〉と繋がるのかな、という期待もありますし。
ていうか私、結局あのシリーズ読めてない(笑)。今年こそ読み始めたいです・・・。
というわけで、〈私のための唯一冊〉は、まだ見つからなくていいです。

(2017.04.01 読了)

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