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zoom RSS 『サブマリン』/伊坂幸太郎 〇

<<   作成日時 : 2017/05/13 17:40   >>

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前作『チルドレン』から12年、何度かの転任を経て、再度一緒に働くことになった家庭裁判所の調査員・武藤とその上司・陣内。
相変わらず陣内は唯我独尊全開なのに、それがイヤにならない(笑)。それは自由気ままながらも、少年たちときちんと向き合っているからなんでしょうねぇ(ただし対処法は斜め上方向だったりするんですが)。
伊坂幸太郎さんの描くこういう人物、私は好きですね。でも一緒に働くのは、大変そう(笑)。

陣内の破天荒ぶりの振り回されつつサクサク読めるのですが、ストーリーを要約しようとすると、途端にあちこちに張り巡らされた伏線を一つ一つ紹介せずには進めなくなるため、うまくあらすじなんか紹介できないのでした…。
メインストーリーとしては、無免許運転の末に男性をひき殺してしまった少年・棚岡がなぜ口重く、事件について語らないか…を明らかにする話だとは思うんですが。
事件の背景を知り、何を考慮に入れるかそして入れないか、少年犯罪事件の処罰の軽重など、判断が難しい問題がたくさん出てきました。
つい事件の表面だけを見て、犯罪を起こした少年を「悪」と断ずることは、私もやってしまっていそうだし、かといって家庭に事情があったなどしたら何をしてもいいというわけでもなく…。少年事件の基本に「更生」があることは理解は出来ても、「犯罪に対して処罰が軽すぎる」と感じてしまうので、色々考えさせられました。

まあ、そういう難しい部分はあまり追求しないでも、物語は楽しめます。
ネットを駆使して「他者を脅迫したことのある者を脅迫していた」という罪で保護観察中の少年・小山田が、今度はネットを駆使して「犯罪を起こしそうな人」をピックアップして武藤に阻止させようとしたり、棚岡が過去に遭遇した交通事故の加害者・若林青年(その事件は陣内が担当していた)と武藤&陣内の新たなかかわり、前作の登場人物・盲目の永瀬とその妻優子(結婚したのね)も登場して、軽妙な会話と陣内の突飛な行動でだんだんに棚岡の事件の真相に迫っていく展開は、なんというか壮大でしたね。

事情を考慮に入れるべきなのか、あるいは罪は罪として事情とは切り離すべきなのか、という点では、やはり罪は罪なのだと思います。ただ、少年法の基本は「更生」にあるということは、「更生すべき少年」をどう見守っていくか、そして本人がどう過ごしていくかが大切なのだろうなと感じています。
作中で陣内が、小山田に「お前はいい奴だ、法律違反はしてる、ただ、悪いことはしない奴だ」と言ったという話があるのですが、本当は(建前的には)いけないのかもしれないけど、これが「少年の更生」に必要な言葉なのかもしれないな、と思いました。
同じく陣内の言葉に「別に自分たちの頑張りとは関係なく、少年は更生するし、駄目な時は駄目だ」というのもあります。
陣内って、なんというか「本質」をとらえてるなぁと思います。まあ、対処の仕方としては、ちょっと破天荒すぎる気もするんですけどねぇ…。突き放してるようで、情が深いと言えば、いい感じなんだけど、それともちょっと違う気がする。たぶん、なんだかんだ言いつつ、一番少年たちの「自らで更生する」という成長を信じてるのかな?なんて思いました。

最後に若林にかかってきた電話。その前に3人でしゃべってたみたいな展開になったらいいなぁと思います。

棚岡がひき殺してしまった男の背景を小山田が調べてきて、それを救いにしなかったのは、よかったと思います。なんとなく、それは逃げだと思います。悪いことをしそうなやつを殺したんだから、別にいい・・・とはならないと思うんですよね。やっぱり、命は、そんな予測だけで簡単に奪っていいものではないと思うので。

作中、永瀬と優子、陣内がちょっとしんみりとしたムードになったシーンがありました。前作の登場人物・鴨居が本作で登場してないのが、ちょっと不穏な気がします。その辺の物語が、次作で出てくるんじゃないか、ちょっと悲しいけど…という気がしました。
タイトルの「サブマリン」の意味は、直訳すれば潜水艦ですが、事件や人間の深層には人知れず隠されていることがある…みたいな意味もあるのかなぁ、と思いました。深い・・・。

(2017.05.13 読了)

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サブマリン 伊坂幸太郎
サブマリン著者:伊坂 幸太郎講談社(2016-03-30)販売元:Amazon.co.jp 「武藤、別におまえが頑張ったところで、事件が起きる時は起きるし、起きないなら起きない。そうだろ? いつもの仕事 ... ...続きを見る
苗坊の徒然日記
2017/05/13 18:41
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Bookworm
2017/05/15 12:44

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コメント(4件)

内 容 ニックネーム/日時
こんばんは。
ずっと待ってたチルドレンの続編!
また陣内達にあえて嬉しかったです。
同じように陣内達も年を重ねているのが良かったです。
内容は前回と同じように重たいものでした。少年犯罪は本当に難しいですよね。
若林にかかってきた電話は私もそうであったら良いなと思います。
また出てほしいですよねー続編!
苗坊
2017/05/13 18:46
苗坊さん、ありがとうございます(^^)。
あの陣内もおっさんに!!でも、相変わらずなので、笑ってしまいました。
少年犯罪は「更生」という目標をどうクリアするか、本当に難しいです。本人の資質もあるし、環境もあるし…。
願わくば、若林のように「罪を忘れずに、でも懸命に生き、真っ当でありたいと努力し続けられる」少年たちになってほしいと思わずにはいられません。
だからこそ、ラストの電話には期待を抱いてしまいますね。
水無月・R
2017/05/13 19:49
伊坂作品らしく沢山の伏線が張り巡らされていて楽しませてもらいました。
たしかに私も「罪は罪」だと思いますが、一概に割り切れないものだなぁということを考えさせられた作品でした。
タイトルの意味、なるほどなぁと思いました。深いですね。

すずな
2017/05/15 16:52
すずなさん、ありがとうございます(^^)。
伏線いっぱいで、とてもあらすじが書けませんでした(笑)。
物事というのは、簡単な一面だけで判断できるものではない…ってことなんですよねぇ。
本当に、難しい。
水無月・R
2017/05/15 19:34

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