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zoom RSS 『悲嘆の門』上・下/宮部みゆき 〇

<<   作成日時 : 2017/10/13 10:54   >>

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宮部みゆきさんの、『英雄の書』の続編。
〈無明の地〉において〈万書殿〉を守る、『悲嘆の門』
その門番と戦うための力を集めている戦士・ガラ。
ガラの存在を知ってしまった主人公・孝太郎は、彼女の力を分け与えられ、〈言葉〉が見えるようになる。

分厚い上下巻、起こり続ける陰惨な殺人事件、女子中学生のネットいじめ、失踪する浮浪者たち。読んでいて気が晴れるようなことは起こらないのに、それでも読むのをやめられませんでした。
現実の世界にだんだんとファンタジーが紛れ込んできて、ファンタジーが色を濃くするときの不穏さと胸のざわつきに囚われて、引きずられるように読み続けて、最後を迎えた時に残ったのは、予想以上に重苦しい気持ちでした。

前作では、誠実に「正」を培ってゆきたいと思っていましたが、それは可能なのだろうか、と思わずにはいられません。
事象の表裏は一体。表が力をつければ、裏も・・・力を増していく。正邪ともに育てるのは、人である。
前作では、〈物語〉の力を見せつけられました。本作では、「それでも、生きていく」という重さがのしかかってきました。
「生きていく」ことは、物語作り出しその中でいくつもの選択をし、進んでいくこと。
〈私(水無月・R)の物語〉の凡庸さ卑小さに気付いて、ちょっと悲しくもなりました(笑)。いやまあ、不満はないですけど。

上巻半分読んでも、個々の事件は語られるものの、本当の繋がりが見えてこず、不安はいや増すばかりでしたね。下巻に至っても、連続殺人事件の方は思われていたような事件ではないことは判明しても、孝太郎がガラの力を借りて暴走を始め、その傲慢さを責めながら読み続けることが、ずっと引っかかっていました。
「見えた言葉」だけを信じて、勝手な制裁で罪びとたちを消してしまうのは、正義なのだろうか・・・と。でも、それを責める自分も、いざそういった事態に直面したら、どう行動するのかわからないという、不安。
そんな孝太郎を心配したり怒ったりしてくれる、元・刑事の都築老人や〈狼〉のユーリ(前作主人公の少女)はいても、聞き入れずガラの力に酔ったように悲嘆の門にまで来てしまい、孝太郎は「後悔する」ことになる。
辛くもそこから帰還できたのは、やはりガラの力で見た「母が子を思う清浄な輝き」であった。
全てが終わり、孝太郎は「すまない」と2度だけ呟き、「生きていく」ことを心に思う。
無や闇に落ちきる前に何とか救われた孝太郎だけど、これから先も忘れることなく「生きていく」ことを課せられた、のだと思いました。

しかし、人間というのは、「見たくない事実は見えない、理解できないふりができる」ものですな。読んでるだけの私ですら「美香のトラブルは終わってない」と感じているのに、あえて軽く見て踏み込んでいくことを保留し続ける孝太郎には、ずいぶんイライラさせられました。あの年代のトラブルは、そう簡単に解決するものじゃないのに…。しかも、左目で異変を「見て」いるのに。その結果起こった「孝太郎だけの事実」は彼の中に存在し続け、これから孝太郎はそれを負って「生きていく」ことになってしまいました。

でも、あの経験や〈悲嘆の門での出来事〉や〈悲嘆の門に至るまでの彼と彼に関わる者たちの物語〉を「忘れて生きていく」ことは、あまりにも無意味。だから、彼は彼の軛を負って生きることで、〈物語〉を生み育て、世界を回していく。
全ての出来事は無駄がなく、広がり繋がっていく、そういう物語でした。
正直、面白かったとも楽しかったとも思えず、物語はずっしりと重く私にのしかかってきたのですが、それでもやっぱり、読んでよかったのだと思います。

(2017.10.09 読了)

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悲嘆の門(上・下)(宮部みゆき)
「英雄の書」(上・下)の続編。 ...続きを見る
Bookworm
2017/10/23 05:27

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コメント(2件)

内 容 ニックネーム/日時
コメント&TBが大変遅くなりました。すみませんm(__)m

本当になんとも気の重い読書になりましたよねぇ。水無月・Rさんと同じく途中では止められなくて…。
正直、もうちょっとワクワクするようなお話になるのかな、最後はスッキリ終わってくれるはず!と思いながら読みましたが、最後の最後まで重い気持ちのままでした。なんとも後味の悪い結末でしたね。
だからと言って、読まなければ良かったとは思えないのは、さすが宮部さん!ってところでしょうか(^-^;
すずな
2017/10/24 05:52
すずなさん、お忙しい中、ありがとうございます(^^)。
お気になさらず〜(^^♪。

ずっと重苦しくて、やるせなくて、すっきり昇華することもなく、本当に後味が悪かったですね。
とはいえ、やはり<人が生き続けていく>ということは、正も邪も表も裏も、全てを負っていくことなのだな・・としっくり来たことも事実なのでした。
宮部さんて、やっぱりすごいですねぇ。
水無月・R
2017/10/24 11:09

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