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zoom RSS 『ニセモノの妻』/三崎亜記 ◎

<<   作成日時 : 2017/10/22 11:04   >>

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珍しくあっさりと読めた、三崎亜記さん作品(笑)。
それでもやっぱり、物語の主題は〈失われる〉ということ。切ないです・・・。
表題『ニセモノの妻』を含む、4つの物語は、〈街〉や〈世界〉ではなく、〈ささやかで普通の家庭〉から失われていくもの、そこから新たに生じてくるものを描いていました。

三崎さんの作品世界は実はすべて同じなのでは、と勝手に勘ぐっているのですが、どの物語にも通底しているのが〈失われる〉こと。街や人、感情や出来事が、失われ、忘却され、それでも心のどこかに引っかかっているその心許なさは、寂しいような、切ないような、それでいて温かい気持ちを呼び起こします。
本作は短編集ということで、世界観(いつも「世界設定のノートが見たいッッ!」と騒いでいる水無月・R)に触れつつも深追いすることがあまりなかったので、読みやすかったです。

「終の筈の住処」
思い切って手に入れたマンションは、建設反対運動をされていたのだけど…。
「ニセモノの妻」
ある日、妻のニセモノが現れ、ホンモノ探しが始まる。でも・・・?
「坂」
坂を愛好するあまり、闘争と陰謀が激化する住宅街。
「断層」
家に断層が発生し、苦しみながら対処する家族。

いやぁ・・・。簡単に要約してみましたが、全く物語の本質をとらえられてません。三崎作品の奥深さですよねぇ(^_^;)。

「坂」の、主義主張に入れあげすぎて暴走する人々に、何でそこまで・・・?と思わずにはいられないんですが、どうも三崎作品の人々は、〈自らの思い〉に固執し暴走しやすい傾向があるように思います。以前、他の作品のレビューで「この物語の人々は、もう精神体なのでは」という推察をしたことがあるのですが、なんとなくやっぱりそうなのかも…なんて思ってしまうんですよねぇ。
そうであれば「ある日突然ニセモノが現れる」とかも、割と受け入れやすいかと。
いや、それより、実体の実在よりも精神性に重きを置いている・・・かな。
実体は、厳然として、ある。しかしながら、精神性の重要度も上がりつつあり、精神体への過渡期にあるがゆえに、様々な支障が生じていて、その混乱の物語を三崎さんが描いているとしたら?
勝手な推測ですが、この思い付きは妙に、すとんと腑に落ちた気がします。

「断層」の切ない展開、どちらにもとれる(夫は妻を失い、でも夫の中ではずっと「戻り」の状態が続いている?いや、夫は向こう側へ行ったのではないか?)ラスト、物語としての完成度がとても高いなぁと感じました。
ただね、一つだけすごく引っかかることがあるんですよ。
妻の名前は「希美(きみ)さん」なのに、夫には名前がなく「夫(おっと)さん」と呼ばれていること。単に表記の問題ではなく、希美さんとの会話でも「夫さん」と呼ばれているのは、どうしてか。
その疑問に対する答えが一切ないままに、物語が終わってしまって。
例えば、希美=君であるとしたら、夫はどう変換するべき?実は、「夫」こそ、実在しないんじゃないの?と思ったら、すごく不安になって来ちゃったんですよ。
変なことに、引っかからなければよかった…。

あっさり読めつつも、やっぱり〈喪失〉とそこはかとない不穏さをはらんだ物語は、三崎作品の世界観の一端を担っていて、ますますその世界を知りたくなるのでした。
失われたものへの郷愁、忘却されてしまうことの哀しさ、それでも忘れることが出来ずに真摯に生きていく人々の温かさ。
読んでは悲しくなくなったり切なくなったりするけれど、それでも知りたい、その世界を理解したい・・・と思わずにはいられません。でもきっと、全てを理解することは出来ないんでしょうねぇ…。

(2017.10.21 読了)

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