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zoom RSS 『ミツハの一族』/乾ルカ ◎

<<   作成日時 : 2017/12/17 19:40   >>

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美しい、本当に美しい物語でした。
札幌に程近い、開拓村。水源を守る神に選ばれた、二つの役目の者たち。
乾ルカさんの作品は、6年も前に読んだ『蜜姫村』以来ですねぇ。
『ミツハの一族』は、近代から現代への過渡期である大正時代にひっそりと息づいていた古きしきたりとそこに関わる若者たちの、美しい物語でした。

故郷の宮司である従兄の死に伴って、北海道帝大の医学部に通う八尾精次郎は村の水源を守る『烏目役』の後継として、「鬼」を見るよう『水守』に命じることとなった。
黒々とした目を持ち闇目の全く効かない烏目役と、逆に瞳の黒さがあまりなく、光の中では目も開けられないむくろ目を持つ、水守。
水面に立つ「未練を残して死んだ者=鬼」の様子を見ることのできる水守、水守の報告を聞きその未練を解消させるために何をしてもよいという権限を持つ烏目役。
2人の若者とそれを手助けする社仕えの橋野富雄は、井戸の水が濁る度に「死者の未練を読み取り解消する」ことを繰り返し、村の水源を守ってきた。

むくろ目ゆえに、隔離して育てられてきた美しい水守、水守の身体の秘密を知ってなお焦がれる気持ちを失わず、水守の孤独を晴らせるように様々な知識を与えてきた清次郎。
幾人かの鬼が現れ、その未練を知り、それを晴らすためにどうすればいいか模索する清次郎たちの物語は、信州から北海道へと開拓移動してきたという文化も絡んで、とても興味深かったです。
人里隔てて育てられてきた水守の「未練解消」への提案が、最初は情の無いものであったのが、少しずつ清次郎や富雄と触れ合うことにより人間味を帯びるものに変わっていったのが、とても成長を感じました。

そんな中で迎えた最終章。
違和感を覚え、思いついてしまった展開が、本当になってしまった時、とてもつらかったです。
事故で死亡した清次郎が、鬼となって水面に立つ。彼の姿を見、様子を伝える水守。水守からそれを聞き、清次郎の未練無念を推し量って、様々な解決策をとる富雄。
富雄の取る解決策は、水守にとってもつらいものであろうに、唯々諾々とそれを受け入れた水守は、それでは清次郎を送れないことに気付いていた。
鬼であっても一緒に居たかった水守、自らの故郷の水源を穢していることを悲しく思いながらも未練を絶てない清次郎、2人の間にある繋がりの強さがとても切なかったです。
清次郎に与えられた知識が光となったと伝え、「常世での再会」を約束し、清次郎を送った水守に、富雄が告げた「土木と灌漑を学び、故郷の水源を新しい方法で守る」という決意は、あの時代であればこその「在り方の転換」だなと、思いました。
それを実現するには、しきたりを失うことへの村の人間の反対や地勢の問題など様々な障害が生じるだろうけれど、富雄の真摯な思いはきっと叶う気がします。

富雄も水守に「どちらが先に常世に行っても待とう」と約束する。
3人の若者が、古くから伝わるしきたりを通して強いつながりを持ち、常世での再会を約束する。
最後の十数行はきっと、清次郎の心の内を描いたものだろうと思うと、その美しさに涙が出そうになりました。

(2017.12.17 読了)

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