小川洋子『貴婦人Aの蘇生』 ◎

剥製猛獣館に私と共に暮らす伯母は、皇女アナスタシアを装う。
小川洋子『貴婦人Aの蘇生』は、未亡人となった伯母と共に、伯父の遺産である剥製のあふれる洋館で暮らす「私」が、伯母の亡くなるまでを描いた物語である。

ロシア人の伯母は、自分の名にはない「A」の模様を刺繍する。伯父の剥製を狙ったコレクターが来館するうち、伯母を「皇女アナスタシア(ロシア最後の皇帝の娘で記録では射殺されているが、逃げ出してヨーロッパで生きていたと主張する人が出たこともある)」だと言い出し、騒ぎは広まる。伯母はおおらかに微笑み、それを否定も肯定もしないため、TV番組で検証されたりまでする。そのため、「私」とその恋人と剥製コレクターが「アナスタシア問題集」を作ったり、尋ねてくる人を捌いたりと・・・・。

こう書くと、なんだかインチキ臭い感じがする。違うのだ。
もちろん、伯母は「アナスタシア」ではないのだが、それにまつわり、伯母と私と恋人が織りなす、暖かな交流や関係が、繊細に、とても美しく描かれていた。普段、殺伐とした生活であまり感動しないタイプの水無月・Rが、「心にしみる、暖かな」とメモしているほどである。

小川洋子と言えば『博士の愛した数式』の方が映画化されたこともあり、代表作なのだと思うが、水無月・Rとしては、こちらの方を推したい。

(2006.9.17 読了)
貴婦人Aの蘇生
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著者:小川洋子(1962ー)出版社:朝日新聞出版サイズ:単行本ページ数:230p発行年月:2002年


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この記事へのコメント

たかこ
2010年06月01日 19:38
この作品、かなり良かったと思います。
変な儀式をしないと家に入れない恋人や、これまたいっぷうかわった叔母などとの暮らしぶりが、なんとも言えず良かったです。

私も『博士の愛した数式』よりこちらを推しますね。
2010年06月01日 22:24
たかこさん、ありがとうございます(^^)。
小川さんの作品の中でも幻想性の高い作品が、私は好きです。
淋しい優しさや温かさが、とてもよかったです。
『海』や『猫を抱いて象と泳ぐ』『夜明けのフ縁をさ迷う人々』はお読みになりました?
この辺りの幻想性の高い物語、すっごくいいです、水無月・R的に♪
読んでみた頂けたら嬉しいです(^^)。

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  • 貴婦人Aの蘇生 / 小川洋子

    Excerpt: あ~、ピュアな気分じゃないこの頃。小川洋子さんの偏愛っぽいのならいけるかも、と手にとった本。 ===== amazonより 北極グマの剥製に顔をつっこんで絶命した伯父。法律書の生き埋めにな.. Weblog: たかこの記憶領域 racked: 2010-06-01 19:35