『大カナリヤ航路』/A・J・クローニン ◎

久しぶりに、古典的文学作品を読みました。 読書スピードの速い水無月・Rにしては、かなりスローペースでしたが。なんせ、1933年の小説です。滅多にこんな古い外国文学を読む機会がないのに、どうして読むことになったのか・・・。水無月・Rお得意の‘新聞の書評に惹かれちゃって~‘ というやつである。
しかも、どんなことが書いてあったかも覚えてないくらい昔の書評・・・たぶん「失意のどん底から第2の人生に旅立つ」というような内容紹介が、やや落ち込んでいたのであろう当時の心境にマッチしたのだろうと思う。
(あ、水無月・Rは、しょっちゅう気分が上下動してるので、大したことではありません。)

A・J・クローニンを、読んだことがなかった。どういう作家かも、作品傾向も。『大カナリヤ航路』、結構重いんだけど、深い物語があり、他の本よりはペースは遅いけど、着実に読み進めた。

 新治療法の実施に失敗し、世間からも後ろ指を指され、失意のどん底に陥った主人公の医師・ハーヴィーが、カナリヤ諸島へ向かう船の中で「運命の女性」と出会う。それは、自分の立ち位置をつかみかね、「白鳥の家」を夢に見る、貴族のうら若い夫人・メリー。
 2人は船を下りて別れる時でさえ、お互いの気持ちを押さえてしまう。当時カナリヤ諸島では「黄熱病」が流行しており、メリーはそれに罹り、熱に浮かされつつも「白鳥の家」が実在するとの話を聞き、そこを訪ねる。ハーヴィーは、ある事情から船に乗り遅れ、島に取り残される。そして黄熱病の発生したという「白鳥の家」を訪れる。2人は「白鳥の家の夢」さながらに再会するが、直後メリーが病に倒れ、ハーヴィーはその治療に当たる。ハーヴィーが「白鳥の家」にいると聞きつけ駆けつけた、同じ船客で宣教師の妹・スーザン(ハーヴィーに好意を抱いている)もメリーの看護に当たる。
 メリーは生死の境をさまよった後回復し、付き添い役達や夫により、「白鳥の家」から、連れ去られる。その後、2人はメリーの夫に引き合わされるが、上手くお互いの感情をあらわすことが出来ない。やっと「愛している」と伝え合うのだが、二人の愛のために戦う対象を見つけることが出来ず、ハーヴィーは逃げ出す。
 日常に戻り、新しい病院に医師として復帰する目途が付いたその晩、「フリージャの芳香」(メリーの「白鳥の家の夢」を象徴する香り)が、ハーヴィーを訪れ、物語は終結する。

うおっ、ストーリーを説明するだけでこんなに長くなってしまった。しかも、他の船客たちもストーリーに絡んでくるのだが、その群像劇も表そうとすると、水無月・Rの貧弱な文章力では長くなりすぎてしまうので、省略する。

最後に、ハーヴィーに訪れた「フリージャの芳香」は、何だったのか。「ハーヴィーが期待する医師としての第二の人生を象徴するもの」か「メリーの訪れ」か。判断は読者にゆだねられる。水無月・Rは「冷徹な医師から脱却し、研究をしよう」と心に誓う、ハーヴィーの決意であって、メリーの訪れだとは感じなかった。

ハーヴィーの細やかな心境の変化、メリーの「夢の世界」、持ち主である伯爵夫人の語る「白鳥の家」の悲恋とそれに微妙に絡む二人のプラトニックな恋愛、非常に丹念に描かれた物語に、引き込まれた。重厚で、良い作品だと思う。

(2007.2.9 読了)

クローニン全集〈第5巻〉大カナリヤ航路 (1965年)

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