『ハピネス』/嶽本野ばら ◎

・・・・泣きました。何回も。実を言うと、難病モノって、お涙頂戴で、好きじゃないのですが。あまりにも「彼女」と「僕」の健気さといじらしさに、涙してしまったのです。
心臓病の悪化で、あと1週間で死んでしまう「彼女」。「彼女」の願いは出来る限りなんでも叶えたいという「両親」。そして、「彼女」を心から愛しているが故に、「彼女」の死を受け入れるしかなかった「僕」。

嶽本野ばらは、『下妻物語』以来です。ヤンキーちゃんとロリータちゃんの深い友情を描いた、面白い作品でした。
さて、『ハピネス』にもロリータ少女が出て来ますが、今回は、そのロリータ少女の最期の1週間を、優しく、純粋に、切々と描いています。ひどく、泣けました。

「僕」も「彼女」も、普通の高校生とは思えないほど、心が深い。優しくて美しい。もし、私があと1週間しか生きられないと知ったら、「彼女」のように病にあがくことなく、最期の1週間を充実させるための行動が出来るだろうか?

実を言うと、水無月・Rの家族には、2人も「心室中隔欠損症」という、生まれつきの心臓病を持つものがいた。幸いにして、2人とも軽症で日常生活に問題はなかったし、成長にしたがって心臓の穴はふさがったのだが、医師の説明を初めて聞いたときには、気が遠くなった。穴の開いた場所や大きさによっては、大人になるまで生きられない事もあると、言われたから。1人は「三尖弁」の調子も少し悪かったし。(こちらも成長と共に正常化して、完全治癒したけれど)
『ハピネス』の「彼女」は「心房中隔欠損」で「三尖弁未発達」という心臓奇形で、でも通常生活は出来ていた。ある日突然、心臓の状態が悪化し、心筋梗塞を起こして倒れ、治療は不可能と医師に言われた。そして、もって10日の命だと。
とても、身につまされたのです。心室中隔欠損よりも心房中隔欠損のほうが治癒の確率が低いことも、三尖弁が未発達であることがどんなに危険であるかも、知っていたから。しかも、まだたった17歳で、この世界から去ってしまうなんて。

だから、残りの1週間を、心臓が暴れだすたびに薬を何種類も飲みながらも、恋人である「僕」と心残りなく過ごそうと頑張る「彼女」のいじらしさに、泣けてしまった。そんな「彼女」に温かく、優しく、寄り添う「僕」の健気さにも。今この感想を書きながらも、涙ぐんでいる。・・・水無月・Rの涙腺は、こんなにゆるかったかしらん。

『下妻物語』ではあまり気付かなかったけど、嶽本野ばらは美しい文章を書く。全編「僕」の独白なのだけれど、会話分を除くとほぼすべて「です・ます・でした・ました」調なのである。しかも、言葉遣いが美しい。
~~きっと本当に愛せる人に巡り合えず、終了する人生も沢山ある。愛したけれども愛されぬまま死んでいく人だっていっぱいいる。~~僕たちが出会い、愛し合えた奇跡を僕は運命と呼ばずにはいられない。~~愛し合ったまま引き裂かれる幸福が存在することに僕はようやく気が付きました。~~(本文中より引用)

文章も、「僕」の心意気も、美しい。ここまで純粋に恋人の死を語れるのは、17歳だからかもしれない。もう30台後半に入った中年主婦では、雑念が多すぎて、こんな感慨を持つことは出来ないと思う。

心洗われる思いがした、なんて陳腐な言葉では表せないほど、よかった。この物語を読めて、嬉しかった。嶽本野ばら、もっと読んでみようと思います。

(2007.3.27 読了)
ハピネス
楽天ブックス
著者:嶽本野ばら出版社:小学館サイズ:単行本ページ数:158p発行年月:2006年08月この著者の新


楽天市場 by ウェブリブログ



ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

この記事へのトラックバック