『蚊トンボ白鬚の冒険』/藤原伊織 ◎

ある日突然、俺の頭の中に蚊トンボが寄生した。蚊トンボは「白鬚」という。俺の頭に勝手に入って来て「筋肉を瞬間的に強化できる」と言うのだ。
隣の住人・黒木のゴタゴタに巻き込まれ(いや、自主的に突っ込んで行き)、俺・倉沢達夫と蚊トンボ・白鬚のコンビはその能力を遺憾なく発揮し、大活躍。

多分、藤原伊織を読むのは『蚊トンボ白鬚の冒険』が初めてだと思う。藤原伊織って、ミステリー作家な印象だったんですが、この作品に関しては、「ファンタジー&ハードボイルド」と感じました。いや、だって人間の頭の中に緊急避難し、自我を持ち、しかもその宿り主の筋肉を自由に強化(瞬間的にだけど)したり、難しい話を理解したり、宿り主が過去にチラッとだけ眺めた新聞の内容を引き出して見せたりと、とんでもない蚊トンボじゃないですか。コレってファンタジーでしょう?
そして、やくざに追われ、天才的頭脳をもつコンピューターの専門家でオリンピック強化選手だったという肉体を持つパラノイア(?)男・カイバラと対決し、なんていう部分は、ハードボイルドで。

荒唐無稽で、非常に緻密で、スピード&スリルに満ちてて、一気に読んじゃいましたよ。白鬚が段々パワーアップ(筋肉強化能力→かなり高等な理解力→動体視力及び聴力の向上→宿り主・達夫の記憶の完全復元など)するのが、非常に痛快。だけど、達夫が相対する敵がどんどんすごくなっていくので、白鬚のパワーアップもギリギリ付いていくという感じ。しかも人質まで取られて、達夫側は形勢不利。それでも、突っ込んで行く。

そして、ラストシーンで、白鬚は歌いながら、消えていく。
~~いのち短し 恋せよ乙女 紅き唇 あせぬ間に~~
蚊トンボの寿命だった。たったの3日。その3日、白鬚は人間に入り込み、自我を持ち、宿り主・達夫と共にゴタゴタに突っ込んで行き(冒険?)、全力を尽くして、命を全うした。
白鬚は、後悔なんかしてないだろう。達夫も、もちろん。

だから、いいのだ。白鬚が消えていったことは、これで。
面白かった。すごかった。痛快だった。素直な感想がコレです。

・・・ただ、普通の人(そりゃちょっと強引なところはあるけど)である、お姉さん・真紀がパラノイア男・カイバラの人質になってしまった末に、耳を切り落とされちゃう、ってのは残酷かなぁ、って気がする。他の登場人物たちは、やくざだったり裏稼業だったり、パラノイアだったり、筋肉強化人間だったりするけど、真紀さんは一般人だから、これから先、耳がないとちょっとねぇ・・・。(←いや、そういう感想はちょっとチガウだろう、水無月・R。)
(2007.3.30 読了)

蚊トンボ白鬚の冒険

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