『龍使いのキアス』/浜たかや ○

サンケイ児童出版文化賞を受賞した作品だそうです。例によって、書評に魅かれて読んだ作品です。
とても、設定のシッカリしているファンタジーですね。読んでて非常に安心感がある。変なところでよろけたりしない、世界観がちゃんと固まっていて、しかも少女の成長物語として、恋愛を絡めてないのにきちんと描かれているのが、良いと思うのです。

・・・ですが、ちょっと物足りないのですよ。主人公・キアスの心情や、神皇帝・アグトシャルやその子孫についての描写が、さらっとしすぎてる。最後のほうで、やっと龍が一瞬出てくるけど、それに関しても、アッサリしすぎてて。タイトルが『龍使いのキアス』なのに、龍を使ってると言うよりは、ちょっと質問しただけってのが、なんか納得いかない。「龍使い」と来たらやっぱり、龍を使いこなすのに敢難辛苦を乗り越えて・・・というストーリーを期待してしまってたので。

捨て子で、モールの見習い巫女・キアスは他の巫女たちが聞けない「モールの木の音」を聞くことが出来るが、正式な巫女への昇格審査<呼び出し>に失敗し、巫女への道を閉ざされる。キアスは、300年前にアギオン帝国の神皇帝に協力した大巫女・マシアンがまだ生きていて、どこかに幽閉されていることを信じて、旅に出る。神皇帝・アグトシャルの第3子の血統の<内と外の見者>イリットや盗賊の小イリットと旅を続けながら、アギオン帝国の首都を目指すが、アギオン帝国神官のオゴスに毒の剣で切られ、夢うつつにマザナ族の集落にたどり着く。
マザナ族の集落で、キアスは盲いたイリットと再会する。イリットは、神皇帝アグトシャルが3人の子に埋め込んだ真実と偽りの歴史と、それを守るものたちの話をする。キアスはヒロの村で息を吹き返し、神官・ゴスと共に首都グオンドに行き、大神官である父・キーオと再会する。大神官の代理として宮中に出入りするうち、皇帝が夢を見ないというのろいにかけられていることを知り、またマシアンがその皇帝の夢に閉じ込められていることを知る。キーオに取り憑いていたオゴスを打ち倒し、神皇帝アグシャトルの強力な呪力による世界を打ち壊すことを心に決める。
帝国がマザナ族の住処オドラン山地を攻めることになり、キアス達は現皇帝の夢を取り戻し、その夢の中からマシアンを救出する。マシアンとともにキアス一行はオドラン山地に赴き、マザナ族を救出するために、龍を呼び出す。龍は、<世界に最初に現れた女の名「キアス」>をキアスに教え、その出現により、マザナ族を襲うガウ族を消し去る。そして、ガウ族に相対するマザナ族も、神皇帝の作った一族であるが故に、消え去った。
そして、神皇帝の作った呪縛から開放された、ロールの世界は新しく歩み始める。

う~~ん、物語として、最後が走りすぎかな・・・。前半、キアスが様々な人と出会っていろいろな考え方を知り、成長していくのに、皇帝の夢を取り戻すあたりから、何だか妙にすべてを超越してしまっているみたいな感じがして。マシアンに教えられるとか、竜を扱いきれずに暴走させてしまうとか、そういうドラマが欲しかったなぁ。神皇帝・アグトシャルが西方からの侵略者を撃退した後、権力への欲求から、子供たちへ真実と偽りの歴史を植えつけ、それを守らせた、そのいきさつも1つの物語として、描くことが出来たと思う。それがあったら、物語として完璧に近いんじゃないかなぁと。ただ、そうするともう1巻必要になってしまうと思うけど。(650ページを越える大作なので。)コレだけ世界観がシッカリしてて、アグトシャルの呪力も強いし、キアスの章・マシアンとアグトシャルの章とあったら、いいのにね。

神皇帝・アグトシャルの呪いから世界を解き放ったのは、キアスなのか、龍なのか、マシアンなのか。始源の女<キアス>の名を呼んでから呪歌を歌うことで、モールの巫女は力を得ていた。神皇帝により、消されていたその名前を取り戻したキアスと同じ名前、<キアス>。モールの大巫女・ナイアが捨て子にその名をつけたのが何故かはわかっていないという。それも、ちょっと物足りないなぁ。偶然にしては出来すぎているし、かといってマシアンもその名を忘却させられていたし、コレも案外アグトシャルの呪いの一部(自分の呪いがいつかとかれることを願っていた?)のかもしれないな、なんてね。コレは水無月・Rの勝手な推測ですが。

こういう世界観のシッカリしているファンタジーは、面白いです。好きですね。それだけに、物語の構成がちょっと、物足りないというか・・・・。残念、って事で◎ではなく、○です。

(2007.6.26 読了)


龍使いのキアス

ブログ気持玉

クリックして気持ちを伝えよう!

ログインしてクリックすれば、自分のブログへのリンクが付きます。

→ログインへ

なるほど(納得、参考になった、ヘー)
驚いた
面白い
ナイス
ガッツ(がんばれ!)
かわいい

気持玉数 : 0

この記事へのコメント

solaris
2008年07月13日 14:41
こんにちは。「龍使いのキアス」は児童文学の中で一番大好きな本です。ですが、私は今までそんなに深く考えていませんでした。ただキアスの世界の雰囲気がいいなぁとほのぼの思っていただけなので、このブログを読ませて頂いた時、なんだかすごく納得しました。
2008年07月13日 22:39
solarisさん、ありがとうございます。
私もキアスの世界観は、すごくいいな~と思います!
確かに、物足りないな…と思う部分はあるのですが、それを補って余りある、魅力的な世界と登場人物たち。
私は妄想好きなので(笑)、読了後は「こんな物語があったらいい」「このエピソードにはこんなウラが・・・!」「この人物から見た物語の側面とは!」など、色々妄想を走らせました(^_^;)。

この記事へのトラックバック